5 合宿の再開と監視と鍛錬
燃え盛る焚火の炎を眺めていた。
千差万別に姿を変える炎はいくら見つめていても飽きが来ない。
そして手元の薪をくべる。パチパチと爆ぜながらやがて炎に飲み込まれていく。
「なあ」
「あによ」
「いい加減テントで寝ろよ。今日はもう大丈夫だって」
「イ・ヤ そんなこと言って、あんた調査に行くでしょ」
どうしても俺の言う事が信じられないらしい。こいつの前でわざわざ打ち合わせをしたんだが、どうも逆に不信感を与えてしまったようだ。
「行かねえって、師匠と話した通り、交代番してるだけだ」
「信じない、まさか諜報部門でバイトとか、新入りがやる事じゃないでしょ」
「宿郷には術者少ないんだろ?世話になってるんだ、諜報位手伝うさ。バイト代も出るしな」
師匠からの直々依頼のバイト、バイトと言っても正直内容によっては云百万~千万の金額だ。当時受けてたバイトよりも安全簡単で破格。金は天下の回り物。今後は密教系も覚えていきたいので、何かと金がかかる。
「ふーん、あの金毛狐がそんなはした金で動くんだ?」
「シー!やめろ、それは内緒だと言っただろ」
そもそもその頃の金額の方がはした金だったわ!
「あーまさか憧れの金毛狐様がこんなひねくれ者の同い年なんて・・・」
「ほっとけ」
「なんであんたが金毛狐様なのよ」
「知らん、そもそもそんなダッサイ名前自分で名乗るか」
そういうと、当時俺に無理難題を依頼してきた民俗学の助教授の顔が思い浮かび、嫌な気分になった。
思えばあいつが俺との話を掲示板で報告しだしたのが発端だった。
当然釣りだと断じる奴らを交えて大炎上したが、結局奴は釣り宣言せず別の話をアップした。
そこで画像をアップした事が問題だった。加工品だとバッシングを受けたが、ネット民でプロを自称する者や、解析好きな奴がどう調べても加工の形跡を見つける事が出来なかった。それでもバッシングを続ける者も多かったが、大多数が奴の話は本物だと信じてしまい、それ以降の話は自分のブログでするのでよろしくとふざけたことを抜かし、荒稼ぎをしてやがった。俺が知ったのは、礼金だと稼いだ金を包んできたことでやっと知った。
その頃には、このダサい名前金毛狐が独り歩きをし、その界隈の人間も知る事となってしまった・・・
それ以降俺は奴との関係を断ち、丁度宿郷へ弟子入りする時期も近かった為、消息を絶つことに成功した。一度実家の神社に突撃してきたようだが、空手有段者の父によって不法侵入者として撃退されたらしい。何やってんだか。
あー嫌な物思いに耽ってしまった・・・
「だから勝手に調査なんて行かないから、いいかげん・・・」
「すーすー」
寝てた・・・はぁ、あれだけ見張るだなんだ騒いでて・・・でもまあ、初の実戦だ、一瞬の出来事ではあったにせよ疲れがあったのだろう。
しかし、初夏に近いとはいえTシャツ一枚で寝てしまうとは、寒くないのだろうか?
仕方なく来ていたパーカーを脱ぐとそっとかけてやった。
気配なく立ち上がった俺は数mだけ下がると、打ち合わせ中に貰った木刀を構えた。剣術の修行を始めてもいいとの事だった。
素振りの方法は道場で見て記憶している。すっと息を吸うと素振りを始めた。
思ったより軽かったが、師匠が言うに真剣並の重量で作られているらしい。
まあ、初めて素振りをする、感覚的に軽いとは思っても、数十回も振ればその重さは身体をズシンといじめ始めるだろう。
無心に木刀を振っている時、不意に今日の鈴鹿の剣筋が閃いた。
自分で再現するべく、腰を落として脇構え、イメージの猩々を追い抜刀して天を指し、返す刀で地に落とした。
ドスっと鈍い音が地面から鳴る。当然だが速さ、高さ、返し、寸止め、何一つ近づくものがなかった。
無様すぎる自分に思わず笑えた。
「あたりまえだよな、何年もの研鑽を積んできた鈴鹿と、今さっき素振りを始めた俺じゃあ比べるべくもない」
ただ、心はワクワクしていた。なんとか追いつきたいと。
正直術の修行中にはなかった高揚感が俺の中に生まれていることに気づき、不思議に思った。
まさか、こんな気持ちになるなんてな。
夜空を見上げて、月を見る。
「ううーん」
寒さを感じたのだろうか、寝言を言いながら鈴鹿はパーカーをギュっと抱え込んでいた。
俺は慌てて焚火に数本薪をくべると、また素振りを開始した。
満天の星空からは時たま星が流れ、焚火からは心地よい、火爆ぜ音がパチパチと聞こえていた。
こんにちは、なかなか筆が進まず久々に更新しました。
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今回出てきた蒼太の金毛狐物語は、短編でちょこちょこ書いていきたいなと思っております。
楽しみしていただけたら幸いです。




