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月光の誓約 陽光の宿怨  作者: あるちー
第二章 闇の胎動
15/21

4 合宿とキャンプと黒い影 ④ ~宿郷鈴鹿 視点~

「見事」


あたしが百鹿を鞘に納刀すると、蒼太がそう呟いた。

こいつに素直に褒められると調子狂うわね。


「ふ、ふん、あの位なら余裕よ」

「そうだな。素晴らしい剣筋だった」


いつもの様に憎まれ口調で返したのに、蒼太は素直にそれを受け、褒めてくる。

ちょっと、なんで今日はそんなに素直なのよ、もうなんか顔が熱くなってきた。


「うむ、流石は宿郷時期頭領だ見事見事」

「父さん・・・・」

「師匠、他に気配は感じられませんが、まだ気を抜けませんね」

「ああ、しかしここらに猩々がいるとは、宿郷の庭先とまでは言わんが、何の情報もなかったな・・・」

「そういえば、ここの麓ってG市のすぐそばよね?」

「ああ、最近G市で行方不明者が増えてるってニュースやSNSでやってたな」

「そして今回の件・・まったくの無関係とは思えないなぁ」

「師匠、ちょっと探ってきましょうか?」

「ちょ、ちょーい」

「なんだよ鈴鹿」

「なんだよじゃないわよ、探るってあんた一人で?」

「まあ探るだけだしな。自分一人なら相手が龍神や鵺でも逃げ切ってみせるぞ」

「そういう事じゃないでしょ!ちょっと父さん何黙ってるのよ、ちゃんと叱らないと」

「あ、ん、まあ・・・」


歯切れわるっなーんか怪しいわね・・・!


「あ!父さん!まさかこれまでも蒼太に調査させたりしてたの?」

「あははは・・・バレたか・・・」

「師匠・・・内緒では・・・」

「どういう事?素人を巻き込むなんて。蒼太はまだ宿郷式習いだしたばかりなのよ?何かあったら」

「まあ落ち着け鈴鹿、秘密にしてたのは悪かった。だが、蒼太が素人ならうちの人間ほとんど素人になっちまうぞ」

「はあ?なに誤魔化そうとしてるのよ!」

「お前も聞いたことあるだろ?金毛狐って同業者」

「知ってるわよ、関東を中心に活動してるソロの同業でしょ?あたしの推しがなん・・だって・・・」

「そう、蒼太はその金毛狐本人なんだよ」

「あのー俺のプライバシーは・・・・それとその通り名勝手に付けられたんで嫌いなんでやめてもらえます?」

「あーそうだったな、すまん・・・」

「うっそ、蒼太が金毛狐?え?え?だってあんたあたしと同い年じゃない!」

「呪術の良いところは、身体能力とか膂力とか関係ないんだよな。まあそれで家神社だから、その手の相談も多くて。それでまあ俺が動く必要な時もあってな」

「そ、そんな・・・・」


あたしはがっくり膝を落として頭を抱えた。

金毛狐って憧れたのにぃぃぃぃ

若いっていう噂は聞いてたから20歳位だろうと勝手に想像して推してたのにいぃぃぃ

はっ、そういえば最近金毛狐の噂聞かなくて心配してたけど、本人がここにいればそりゃ関東で活動なんてしてないじゃない!

ああああああああ知りたくなかったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!


「おーい、蒼太ぁ鈴鹿ぁ!」

「たっくん待ってよぅ」

「巧、玲」

「な、なあさっきのでっかい狐はなんだ?二人とも乗っていっちまって」

「お前らは初めてだったな、あれは俺の式神だ」

「し、式神?ってそうか蒼太って元は陰陽師だっけか!でもすげえな!式神も使役できるなんて、安倍晴明みたいじゃん!」

「ほぇーあれが式神かーあ、あ、それよりなんか出たんでしょ?大丈夫なの?」

「ああ、猩々が二体襲ってきていたが、師匠と鈴鹿でもう斬り祓ってる」

「ななな!鈴鹿、実践したんか??ずりいずりいぞ!」

「うっさいわね、早い者勝ちよ」

「すっごーい、でもでも鈴鹿ちゃん怪我とかしてない?平気?」

「平気平気、ちゃちゃっと片付けてやったわ」


実際は無我夢中で全然余裕じゃなかったけどね・・・


「で?どうします、師匠?」


む、蒼太の奴白狐で調査に行く気ね。それとなく近づいてまた後ろに飛び乗ってやるわ。


「いや、今日はこのままここで休もう。群れてるにしてもここにはもういないだろう。いたらそれぞれ四方から襲ってきてただろう。猩々はそのくらいの頭はある物の怪だからな」

「分かりました」


ちぇ、今日はおしまいか。でも明日は行く可能性があるわよね。くくく、あたしから逃げられると思わない事ね。


「鈴鹿ちゃんなんか悪い顔してるね?」

「なっ失礼な!」

「わきゃー蒼君へルプー襲われるー」

「じゃれてないで行くぞ」


あーでもまさかこいつが金毛狐様だったなんて・・・あ、でもわりとあたしの妄想に近いわ、く、この無駄にイケメン顔がっいやいや、違う違うそうじゃない。


「ん? なんだ俺の顔になんかついてるか?」

「は?はあぁぁぁぁ? あんたの顔なんて見てないしっ自意識過剰ね!」

「いやいや、鈴鹿じーーーっと蒼太の顔睨んでたぞ」

「だまらっしゃい」

「いってぇえぇぇ」

「あれあれ? もしかして鈴鹿ちゃん・・・」

「黙りなさい玲」

「おい、寝てるやつもいるだろうからもう少し静かにだな」


こうしてとりあえずの脅威は退けられた。

だけどあたしは分かっていなかった。これが、この事件がまだ始まりにしか過ぎない事を。

だから、腰に差した百鹿が少し重く感じたことも気のせいだと思っていた。






読んでいただき感謝です。

気に入っていただけたらブックマーク等宜しくお願い致します。


このお話の為にとうとう憧れの日本刀に手を出してしまいました・・・せっかくなので日本刀のカッコよさ、美しさを表現できたらと思いますので、応援の程宜しくお願いします。

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