2 合宿とキャンプと黒い影 ②
テント付近まで戻ると玲が不安そうに走り寄ってきた。
「二人は?」
「うん、もう大丈夫。しばらく休んで水で清めたらお腹が減ったみたいで、肉以外の食べ物が欲しいっておにぎり食べてるよ」
ふむ、食欲があるなら大丈夫だな。
「気分はどうだ?」
「最悪、あんたよく戻さなかったわね」
「まあ、何度か経験済だからな」
「マジかよ」
「で、動けそうなら手伝ってほしいんだが、どうだ?」
「どういう事?」
「アレな、宿郷案件だ」
「え?うそ?」
「え?え?そうなの?」
「??しゅ・・くごう・あんけん??」
「馬鹿ね巧、宿郷案件はうちの隠語でしょうが、つまり悪霊や物の怪関連って事でしょ!」
「あっ・・あー?」
流石だな巧、強さに貪欲であるが、何のために強くなるのかが一貫して強くなりたいからという幼児の様に純粋でまっすぐな目標。どこかのゲームの主人公の様に俺より強い奴に会いに行くとかいって突然失踪しそうだ。
「巧、そもそもお前は何で幼い頃から宿郷式を修練しているんだ?」
「そんなんオレが宿郷だからに決まってるだろ?」
「・・・いや、じゃあなんで強くなりたいって言ってんのよ」
「強くなりたいから」
「「「・・・・」」」
「え?あれ?たっくん真面目に言ってる? 宿郷式を修めた者は裏世界で暗躍する魔の者を滅するべしって初代様が生み出した武術で、基本戦える力を備えた宿郷の人間は宿郷株式会社に入社するんだよ?本家筋なんだからもっと詳しくしってるよね」
「・・・あ、ああ。モチロンダ」
こいつマジで大丈夫なのだろうか・・・こんな育ち方をしている時点で鈴鹿も玲もまともに巧を育てる気はないだろう・・・はぁ、だから友達とか面倒なんだ・・・とはいえなってしまったものは仕方ない。合宿が終わったら巧改造計画を立てるか。
「だいぶ話がそれてしまったが、正直ここは危険なんだ。ただ、警察の事情聴取やら現場保全やら考えると帰るのは難しいと考える。師匠と本職の人が6名いるので何とかなるとは思うが、他の約40名は訓練生で、鈴鹿や巧にしても実践の経験はない。しかし6人でそんな人数守って戦うのも無理な話なので、これからキャンプ場一帯に守護の陣を敷く。悪いが手伝ってもらえるか」
「へぇそんなん出来るんだ? 分かったちゃっちゃと取り掛かりましょ」
「まかせとけ!」
「私にできるかわかんないけどなんでもするね」
流石は宿郷の人間だ。切り替えも早く度胸もある。まあ別に危険なことをさせるわけではないが。
俺は自分のリュックから寝袋とシートを取り出すと、リュックの口を閉めて巧に渡した。
「持ってきてくれ」
「おう!って重っ」
「鈴鹿と玲は塩と日本酒をもらってきてくれ」
「わかった」
「りょーかーい」
まだ日は高いが、日没まで2,3時間位しかないだろう。財布に着けている革チェーンの先にジャラジャラついている小道具の中から、方位磁石を取り出す。
まずは北からだな。
「蒼太方位磁石なんてつけてたのか」
「ああ、こういう儀式の時方位は重要だからな」
「ふーん」
「蒼太、塩と日本酒持ってきたわよ」
「ありがとう、じゃあこっちへ」
そのまま北を目指し、辺りを見回しながら立ち止まる。
テントがある場所からも3,40メートルは離れている。
目の前には結構な樹齢を重ねた大きな木がそびえたっていた。
「巧、リュックからロープ出して木の幹に三重で巻き付けてくれ。ちなみに同じようにあと3か所やるからロープを無駄遣いしないでくれ」
「あいよ、鈴鹿こっち持ってて」
「あ、うん」
「蒼君塩とお酒は?」
「ロープに酒を染み込ませてくれ。塩は俺がやる」
指示を出すと革のウエストバックから和紙と筆ペンを取り出した。
深呼吸をし、瞑想状態に入る。するとペン先は金色に輝きだした。そこで一息に符を書き始める。
「天円地方 律令九章 吾今下筆 万鬼伏蔵 北護玄武 急急如律令」
書き上げた符をロープと木の間に差し込み手をかざす。
「え?その符って糊かなんかつけてるの?」
「いや、呪力で貼り付けて保護した。酒も染みてないだろ?」
「うわ、ほんとだ!すげえな蒼太!!」
「ねえねえ蒼君、筆先が光ってたのはどうして?」
「ん?玲お前光ってるように見えたのか?」
「うん、黄金色で奇麗だった」
「黄金色?あたしにはただ光ってるようにしか見えなかったけど」
「? ? ? なにいってんのお前ら?」
「色まで・・・いや、今はやめよう、塩をくれ」
塩を受け取ると木の北側に和紙を置き、盛り塩をする。
「これで北方は守護した、この要領で東、南、西とキャンプ場の一部を結界化する。要領は覚えたか?」
「おっけ、だけど木の大きさによってはロープが足りるかね」
「本来はしめ縄でやるからそもそもが代用品だ。不足したらしたで別の代用品を探す」
「なるほどね、じゃあさっさと次行きましょ」
「ああ」
あの死体からはそれほど大きな瘴気は感じられなかった。侵入を防ぐくらいは問題ないだろう。
少々自己流も入っているため、どのくらいの効果があるのかはぶっつけ本番になるが、いざとなれば陰陽術での撃退も考えておく。
4か所すべての作業が終わるころには空は茜色に染まり、夜闇の訪れを示唆していた。
さて、師匠と打ち合わせをしてくるか。と歩き始めると3人も続いて付いてきた。
「父さんの処行くんでしょ?あたしも行く」
「私も鈴鹿ちゃんについてくー」
「ふーとうとう実戦かー楽しみだぜ」
「・・・・好きにしろ」
どうせ俺が何を言ってもついてくるだろうし、少なくとも鈴鹿は戦力に数えているかもしれない。
相手が何なのか不明な今、とれる対策はないのだ。
あとは師匠の見解と作戦を確認し、指示に従う以外ないだろう。
俺一人なら、なんとでもするんだがな・・・
ため息交じりに空を見上げると一番星が煌々と輝いているのが見えた。
宵の明星か・・・輝く星を一睨みして、師匠が集まっているテントを目指した。
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