11 平穏と騒々しさと郷愁と
かつて自分にも無邪気に学校の友人たちと過ごした事があった。
無邪気で、無知で、もう取り戻せない過去。
だから、自分がまたここにいる事に戸惑いと非現実しか感じられなかった。
だけど、そんな俺を現実が襲ってくる。鈴鹿と玲と巧の三人が。
「おい、蒼太、お前マジか?学年トップじゃねえか、ってか満点トップってなんだよ」
「うわーん、私も1位狙ってたのに、10点も差をつけられてるう」
「あんた、もしかして高校までの勉強終わってるってホントだったの?」
「あのなあ、鈴鹿、お前まさか俺が唯の登校拒否児で口から出まかせを言ったとでも思ってたのか?」
「か、勝手に名前呼びしないでよ!それに勉強も高卒まで終わってるなんて普通信じないでしょ。」
「まず名前の件だが断る。皆宿郷さんじゃねーか、それと信じなかったのも鈴鹿の勝手。文句を言われることじゃあない」
鈴鹿は何かというと突っかかってくる。まあ出会いから良いものでもなかったし、俺のせいではないが、タオル一枚姿を見られてることもいまだに根に持ってるからな。だいたい、自分の不注意だろうになかというと持ち出しては人を変態呼ばわりする。まったくもって不愉快だ。
「正論過ぎて蒼太君の勝ちだね」
「カカッ玲の言う通りだぞ鈴鹿」
「黙りなさいこの赤点小僧!」
「な、なぜそれを!!」
「あらら、赤点なんて、たっくんおじさんにおこられるよー?」
「!あsmふぃおn」
「なんて?」
「親父の事言っただろ!すげー厳しいんだって、赤点なんて見せたら・・・」
よほど父親が怖いのだろう。冷や汗をだらだら流している。道場の先輩や師匠との立ち稽古でもこんな姿見せないのにな。
「巧、あんたは叔父さんの事より、まず補講から焦るべきね」
「ほ、補講?なんだそれ」
「書いてあるじゃない、なお、赤点者は各科目曜日毎に放課後行うので絶対参加の事って」
「なんじゃそりゃあああああ」
「ご愁傷様、たっくん」
達観したような表情で巧に向かって手を合わせる玲。こいつら本当に幼馴染で従妹なんだろうか?
少しだけ巧を哀れに思ってしまった。
「す、鈴鹿?お前も勉強苦手だろ?一科目くらいあったんだろ?な?な?」
「失礼ね!あんたほど馬鹿じゃないわよ!」
「うがぁぁぁ」
頭を抱えてうなり声をあげると、廊下を走り去って行った。あ、学年主任にとっ捕まった。廊下を走るんじゃないとかなんか怒られている。辛すぎる・・・
「あー行っちゃった」
「もうすぐGW合宿なのに、たっくん大丈夫かな」
「まあ、学校も休み迄返上補講なんてする事はないでしょ?」
「合宿・・・」
「蒼太君は初だねぇ、まあ合宿って言っても練習は午前と午後一時間だけで、あとはBBQキャンプが主なんだけどね♪」
「なん・・だと?・・・よし、合宿参加はやめて家で自主練といこう」
「は?何言っての?却下よ却下」
「そうだよぅ蒼太君。これは道場の交流会、コミュニケーションが主目的なんだから」
「馬鹿馬鹿しい、おれは・・なんだ煩いな」
タイミング悪くスマホが着信を告げてくる。この面倒くさい時に誰だ。
『にいちゃんGWそっち行きたーい。夏休みまで待てなーい からいいよね?』
『あに様GWはそちらで過ごそうかと忍ちゃんと話してます。よいでしょうか?』
ああ、そうさ、ここにいる宿郷組を除けば俺の連絡先知ってるのなんて家族しかいないじゃないか。
なるほど、夏休みを前倒してきたか・・・妹達に会えるのは素直に嬉しいが、宿郷家の面々がいなくなっては四六時中妹を相手にする羽目になって自主練どころじゃなくなるだろう・・・なら自由時間で自主練できる合宿のほうがましではないか。
「都合が出来たので合宿に参加することにする」
「?普通は逆なのでは?」
「気にするな」
「はっは~ん?あんた忍ちゃんと恋ちゃんから凸くらったんでしょ?」
「うるさい」
「鈴鹿ちゃんそれだあれ?」
「こいつの双子の妹。めっちゃめちゃ可愛いんだけど、超の付くブラコンでそれが玉に瑕ってやつね。しかも蒼太は超シスコンなんだよ」
「えー蒼太君妹いたんだ?しかも双子ちゃんなんだ?」
「うるさいうるさい、とっとと帰って稽古する」
「えーたっくん置いて帰っちゃうのぅ?」
「あいつは今から補講だろうが」
「ほんとだ、今日からって書いてあるわ」
「あららーたっくんご愁傷様ぁ」
夏休みなんてすぐだ。妹達はそこで思いっきりかまってあげよう。
そう考え、おそらく不満の返信をしてくるであろう妹達を思い浮かべて、合宿の件を返信した。
一応日常編でざっくりと登場人物紹介をしたつもりです。合宿編からバトル要素を含んでいきます!




