表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/88

ダンジョン編-56

     @


 背後に残したフィッタのこともオナシスのこともデルトナの脳裏から消えていた。魔人となったデルトナにとって、二人は格からして構うほどの相手ではなかった。

 魔人デルトナは障害を排しながらただ一人、ダンジョンを迷い無く進んでいく。

 進みながらふと疑問を覚える。

 何で自分はダンジョンを進んでいるのかがわからなかったからだ。迷い無く「ダンジョンを奥まで行かねば」と思っていたが、何で迷わなかったのかがわからなかった。魔人になれたから結果としては良かったが、こんな危険な場所まで同行する意味など無い。少なくとも魔人になる前のデルトナにとって、ミッション遂行以外の目的など無かったはずだ。

 すると心の中の声が答えた。

 --メインコアにたどり着けばダンジョンを我が物にすることが出来るかも知れません。

 ああ、そうか。そうだった、と思った。

 確かそれが目的だったはずだ。

 それにそもそも危険など無いのだから。ジェネラルガーディアンも魔人となったデルトナの敵では無かった。

 一方、『虚空』に関しては、やはり心の声が「気をつけた方がいいでしょう」と囁いていたので、気に掛けていた。確かに『虚空』に関してはほとんど情報がなく、飲み込まれるようにこの世界から消え去ったヤジットたちを目の前で見て、避けた方がいいのは間違いないだろう。

 そして、幸運にもと言うべきか、『虚空』と遭遇することなく、魔人デルトナは無数のガーディアンの屍を越えて、最下層にたどり着く。

 そこはうって変わって広大な空間だった。

 ダンジョンの中とは思えないほどの高さがあり、不思議なことに空気の流れもあった。

 おそらく天井の高さは百メートル以上あり、広さに至っては1キロ四方はあるだろう。

 そこにはガーディアンの姿は全くなく、ただ所々に植物が点在していた。

 そのがらんとした広大な空間の中央にメインコアがあった。

 一見、怪しげな模様が彫られた真っ黒の石の柱、である。高さは成人男性の身長ほど、太さも成人男性の胴くらいあり、蔦に似た植物が表面を這っていた。

 その石の柱から異常なほどのプレッシャーを魔人デルトナは感じ取った。

 ダンジョンとは『閉じられた世界』という神秘を得た秘石によって生成されるという。

 つまり、その秘石こそがメインコア。目の前にある石の柱であると思われた。


(……さて)


 とデルトナはメインコアを目に前に立ち止まり首をかしげた。

 たどり着いたもののどうすればいいのかわからなかった。

 メインコアを支配下に置けば、このダンジョンは自分のものになる、ということは理解している。

 だが、その方法がわからなかった。

 このことについて、心の声は何も言ってこない。


(……とりあえずたたき壊してみますか)


 デルトナの悪意に気づいたのか、メインコアが突然動き始めた。

 表面を覆う複雑な模様に沿って赤い光が走り、明滅する。

 次の瞬間、凄まじい圧力がデルトナを襲った。

 威圧感ではなく、物理的な圧力だった。

 おそらくスキルだろう。

 デルトナはその圧力に平然と耐えながら、内心では生物ではないはずのメインコアがスキルを使ったことに少しだけ感心した。

 圧力がなくなると同時にデルトナは一歩踏み出した。

 メインコアの明滅が早まる。

 まるで震えているようだった。

 デルトナが手で手刀を形作り、それを振り上げた。

 再び瞬間的な圧力がデルトナを横殴りに襲う。

 だがデルトナは微動だにしなかった。

 人間ならば粉々になるほどの強烈な力であったが、デルトナは既に人間ではなかった。

 魔人だった。

 メインコアを一刀両断しようとした瞬間、メインコアから何かが飛びついてきた。

 驚いてそれを引きはがすと植物の蔓だった。

 メインコアに巻き付いていた蔓が何かの弾みに跳んできたのだろう。

 それを払いのけ、デルトナはもう一度手刀を振り上げる。

 突然、目眩を感じた。

 何が起こったわからぬまま、立っていられずに片膝を突く。にもかかわらず、デルトナは自分が片膝を突いた自覚がなかった。


(……な!?)


 くそっ、なんだこれは?

 ーー侵入型、ですか。とんだ罠があったものです。しかもこれはメインコアのトラップではない……? ふむ。斥候を使った意味がありました。

 罠? なんだ? 何を言っている?? 斥候とは誰のことだ?

 頭は回るのに身体が動かない。

 そのまま横倒れになった。

 顔に冷たい床が当たる。

 なんだ? 俺はどうなっている? なぜ世界が横になっている?

 心の声は答えなかった。

 そのままデルトナの意識はゆっくりと遠のいていった。



 五分ほど経ち、デルトナが身体をゆっくりと起こす。

 周囲をゆっくりと見回し、


「イドウカノウなサブパーツを入手。マズ、ワタシのボディをカイシュウするヒツヨウがあるでしょう」


 『デルトナ』が動き出す。

 そして、動き出した身体とは逆に完全に停止しているはずのその心の片隅で、いるはずのない何かが呟いた。


 ーー驚きました……世界の種の回収を望んでいたのですが、こんな罠が待っていたとは……ともあれこの分け身は回収不能と認定します。冒険者のミッションランクでも危険度S……勇者とやらの実力を拝見しましょう。


読んでいただいてありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ