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ダンジョン編-49

   @


 エレナ王女は戸惑っていた。

 イライラするのは淑女としてどうかと思うのだ。

 だが、ヤジットとフィオレがどうしてもイチャイチャしているように見えるのだ。そうすると自動的にイライラしてしまうのだ。

 そもそも、結界魔術をフィオレに施すのにあたり、二人きりには出来ない理由は基本的にはなかった。だから「何となく男女を二人きりにするのは危険」という雰囲気を出して反対したのだ。そして、エレナ王女のその主張に対して、ヤジットが傷ついた顔をしていたことにエレナ王女は気づいていた。正直言って申し訳なかった。そしてそんなことをした自分がヤジットに嫌われるかもしれないと恐怖を覚えた。

 全てのマイナスの感情が嫉妬から来ているとエレナ王女は自覚している。フィオレとヤジットの関係性に不安を覚えているという認識がある。フィオレはどうやらヤジットと面識があるらしいのだ。確かに勇者パーティの訓練中に何回かヤジットが数日留守にしていたことがあった。気になったが、追いかけることはしなかった。まだ魔王退治の前であり、それよりも優先することがあったためである。

 それが間違いだった、とエレナ王女は今は悔やんでいる。そのわずか数日の間に、このような出会いが仕組まれていたとは。

 エレナ王女とて万能ではない。運命の全てを見通せるわけではない。

 今後は気をつけよう、と心に決めた。二度とこのようなことは起こさせない。

 そうしないと自分がどうにかなってしまう。

 自分で自分の感情がコントロールできなくなってしまう。

 だから同じことは起こさない、そう心に決めて、ヤジットの行動を見守る。

 ヤジットのすぐ目の前に目をつぶったフィオレがいて心にチクリと痛みが走ったが、それを必死に押さえ込み、冷静に観察する。

 ヤジットは空間に向かって不思議な動きをしている。結界魔術でステイタス画面への干渉を行っているのだろう。エレナ王女にステイタス画面は見えなかったが、そもそも神殿に赴き鑑定魔術の使い手によって召喚された天使バササエルもステイタス画面を表示させるわけではなく、天使語と呼ばれる特殊な言語で召喚者の質問に答えるだけだ。だからそこにステイタス画面と呼ばれる一覧は存在しない。またやはり神殿の高位神官が契約を結ぶ天使シェムハザによってのみ可能だとされているランクアップにもステイタス画面は出てこない。

 つまり結界魔術以外にステイタス画面なるものは出てこないのである。全てはヤジットの言葉の中にしかない。

 そして、ヤジットが見ているというステイタス画面は、そこに干渉するだけで、称号の調整もランクアップも可能なのだ、という。

 改めて言葉にすればとんでもないことだった。

 つまり、ステイタス画面は、天使バササエル、天使シェムハザの上位互換ということを意味するのだから。

 天使より上位の立場。それは何を意味するのだろう。

 ステイタス画面とはそもそもなんなのか。

 それをもたらした初代勇者とは一体全体何者なのか。

 そんなことを思い悩んでいると、突然ヤジットがエレナ王女の方を向いて、


「えーっと、エレナさん、『魔人』ってわかります?」


 いきなり現実に引き戻され、少し慌てた。慌てながらも必死に記憶を探り、


「ま、『魔人』というと確かそのような言葉が異端の書に……」

「今、魔人とおっしゃいました!?」


 エレナの言葉を遮るように食い気味で飛びついたのはフィオレだった。エレナ王女は少し驚いてフィオレの方を向いたが、フィオレは真剣な表情でヤジットを見つめており、エレナ王女の視線に気づいた様子もなかった。


「え、あ、そうです。知ってるんですか、フィオレさん……?」


 一瞬の躊躇のあと、フィオレは答えた。


「……魔人は……冒険者と呼ばれるバイゴーン信仰者の最終目的の一つです」


 冒険者!? 不吉な言葉が出てきた。さらにバイゴーン信仰とは……。

 エレナ王女の記憶によるとバイゴーンとは邪神と呼ばれる神の一柱である。その教義は、世界の破壊と再構築。バイゴーン信者は冒険者と呼ばれ、独自のミッションを繰り返し、異様な成長を遂げる危険な集団であり、ベレスティナ王国でも討伐対象に指定されている。

 そんな危険な言葉が出てきたにもかかわらず、ヤジットはまるで緊張感がない感じで、


「へぇ」


 と言った。

 フィオレは重ねて、


「あの!」

「ん?」

「あ……か、可能ならなぜ今『魔人』という隠された存在について言及されたか教えていただけると嬉しいです……もし、秘密なら、が、我慢しますけど……」

「全然秘密じゃないし。単にフィオレさんの進化先として、それがあっただけだよ。えーっと、『仙人』と『魔人』とあとまだ進化系統が解放されてない『???』かね。『???』はまだ先があるっぽいなぁ」


 エレナは衝撃を受けた。『魔人』? フィオレが魔人に進化する?

 愕然として振り返ると、フィオレもまた衝撃を受けた表情をしていた。


読んでいただいてありがとうございます。次の更新は22日(火)の予定です。

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