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ダンジョン編-48

     @


 レベルが上がるのは久しぶりで思わず、


「ふぇ?」


 と声を上げると、


「ふぇ?」


 とフィオレさんも子供みたいな声を出した。反射的なものだったようでフィオレさんは慌てて口を押さえてそれから伺うように俺を見たその視線に、俺はなんだか申し訳ない気持ちになって、


「ゴメンゴメン。違うんだ。えーっと、たった今レベルアップしたもので少し驚いちゃって……」

「え? ……そ、そうなんですか? 師匠がレベルアップ……おめでとうございます、というべきなのでしょうか。あ……そうか。結界魔術をずっと使っているから……」

「そうなんだよ。それ。まさにそれ……ちょっと待ってて」


 エレナ王女も、首をかしげながら


「レベルアップですか?」

「そうなんですよ」


 俺は改めて自分のステイタス画面を確認した。何となく自分のステイタス画面の種族の欄が目に入ったが、それはいつも通り空欄になっていた。うーむ。確かにオナシスさんもシュッとしているし、変なヒゲを生やしているし……やっぱり俺は人間じゃないかもしれない。

 いや、哀しいがとりあえず今は俺のことはどうでもいい。そんなことはあとにしよう。世界を救うのが先だ。

 レベルアップで思い出したことがあった。

 ランクポイントがそろそろたまるはずだった。

 もしかしたら今回のレベルアップで俺は結界魔術のスキルランクを上げることが出来るようになるかも知れなかった。

 俺は急ぎ自分のスキルランクを確認する。

 あった。俺は思わず喜色を浮かべながら、


「……やっぱり。これで行けるかも知れないぞ。スキルランクを上げれば……」


 俺の独り言にエレナ王女が驚愕した。


「まさか……こ、ここでスキルランクを上げようとしているのですか!?」

「え? そ、そうだけど……?」


 仰天したエレナ王女の口調にこちらの方が驚く。

 

「そ、そんなことが可能なのですか……?」

「う、うん……普通に出来るけど……」

「そ、そんな……結界魔術とは一体……」


 ブツブツ呟きながらエレナ王女が何やら考え込みはじめたので、


「とりあえずその話はあとでいいかな?」

「あ……そうでした。おっしゃるとおりです。今の優先はスタンピードを止めることです。失礼しました」


 エレナ王女の了解を取り、俺は躊躇無く結界魔術のスキルランクを3に上げた。

 スキルランクを上げた瞬間、一瞬独特の酩酊感があった。それは自分が別の自分に入れ替わったような不思議な感覚で、思わず手を見てみたがもちろん変化があるわけはなくいつも通りの自分の手だった。

 それでも俺のステイタスの中でスキルランクが上がり、出来ることが増えたはずである。スキルランクは上げにくいのは間違いないが重要な項目であり、レベルアップの最大の恩恵も実際のところここにある。スキルランクが上がると、全ての魔術の消費MPが減り、使用できる魔術項が増えるからだ。そして結界魔術もそれは同じである。

 俺は改めてフィオレさんのステイタス画面を見た。

 青い項目がかなり増えていた。つまり変更できる項目が増えた、ということだ。

 そして、その増えた青い項目の中に、間違いなく『種族』も入っていた。

 三度確認し、それから俺は心の底からホッとした。少なくとも第一段階をクリアできたのだ。

 そのまま種族を選択しようとすると、磁石の反発のような抵抗があり、『種族』を選択できなかった。

 焦るには早い。理由はわかっていた。これは対象に意識があるためだ。あるいは意識があっても完全な支配下にいないため、無意識に魂の表層の知性が防壁を張っているのだ。この防壁を解除してもらわなければならない。それには相手に対する絶対的な信頼が必要なのだが……。

 俺は顔を上げ、フィオレさんをまっすぐ見た。


「フィオレさん」


 赤い顔で目をつぶっていたフィオレさんが慌てて顔を上げた。


「な、なんでしょう?」

「えーっと、何というか……その……お、俺を信じて欲しいんだ」


 俺がなんと言っていいかわからず、結局我ながら詐欺師でも言わないようなひどいお願いをしたところ、フィオレさんは少し目を潤ませながら、


「……信じます。いいえ、信じてますわ」

「……あ、ありがとう」

「そんな……礼を言わないでください。お礼を言うのはこちらなのですから」

「あ、うん。どうも……じゃ、じゃあ少し力を抜いて」

「……は、はい」

「とにかく俺を信じて。絶対悪いようにしないから」

「はい……信じてますわ。心から」


 フィオレさんが穏やかな笑みを浮かべてそう言った。その瞬間、抵抗が弱まった。

 俺はその瞬間を逃さず少々強引に『種族』の項目を選択した。

 フィオレさんが辛いのかかすかに眉をしかめる。

 だが構う余裕はなかった。

 フィオレさんは顔に細かな汗を浮かべながらそれでも笑顔を作り、


「大丈夫です……大丈夫ですから、そのままお願いします……」


 俺は申し訳ない気持ちになりながら、それでも強引に事を進めた。

 パキンと何かが外れ、項目が選択された。

 同時に種族の進化ツリーが展開された。

 人間からは仙人と魔人と???の三系統である。仙人と魔人は通常進化、???は条件で進化できる特殊なもののようだ。

 さて、どうすべきか。

 俺はフィオレさんを見た。フィオレさんは相当きつかったのか、今もぐったりして荒く息を吐いている。なんか俺のせいだと思うと申し訳ない気持ちになった。一方、本人の意志も重要だが、そもそも仙人と魔人の差が分からなかった。フィオレさんも知らないだろう。

 俺は困ったときの常として、エレナ王女を見た。


読んでいただいてありがとうございます。次回更新は17日(木)の予定です。

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