ダンジョン編-43
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フィッタの介添えでエレナ王女が部屋に入ってきたとき、シュタフの驚きようはとてつもないもので、冷静なキャラクターに似合わず、慌てて傅き強制労働ダンジョンに関する報告を始め、「場を弁えなさい」とフィッタにたしなめられたほどだった。
挙動不審のシュタフがなんとか冷静さを取り戻す間に、殿になっていたフィオレがオナシスに連れられて戻ってきて、一行は大急ぎでドアを閉めた。
だが、既にガーディアンは反応していたようで、閉める直前、迫り来る無数のガーディアンが閉じた扉の向こうに見えた。
閉じた狭い空間の中、緊張が満ちた。
オーバンはまだ怯えたまま、サッチャンから可能な限り距離を取った対角線上の壁際にいた。
扉に何かがぶち当たる衝撃が続いている。
ガーディアンが攻撃を続けているのだ。
この部屋に入ってくるために。
サッチャンの言葉によると、狙いはサッチャンらしいが、それ以外のものに攻撃してこないわけがなかった。そもそも、ガーディアンはあらゆる人間を襲う存在なのだ。
一体いつまで扉が保つのか。
顔色のわからないサッチャン以外、全員の顔が緊張と不安に満ちていた。
「最初に確認させてください」
エレナ王女の言葉に、全員がエレナ王女の方を向いた。
「ヤジット様はどちらに?」
「こちらです」
即座にシュタフが動いた。エレナ王女に言われたらヤジットの首を落とすのもためらわないほどの忠誠心である。自分の首を落とすのもためらわないかも知れない。
ヤジットという言葉に、部屋の中の三人が反応した。フィオレ、オナシス、そしてデルトナである。
エレナ王女は立ち上がり、褒めてもらうのを待っている犬のようなシュタフににっこり微笑みかけ、それから崩れたあと再度構築されたと思われる木組みの上に寝かされているヤジットを覗き込んだ。
中年親父が何となくいぎたない感じで寝ていた。
何か夢を見ているのか、口の中でもにょもにょ何かを言っているようだ。
エレナ王女は安堵したように微笑み、それから「かわいらしい顔をなさって……」とつぶやいたあと、表情を消して振り返り、説明を求める。
「これは……ヤジット様はどうされたのでしょう?」
エレナ王女の言葉に、顔を見合わせた人々の中から僧衣を纏った男が出てきて、
「あ、あの……私は神聖教団のベレスティナ王国教区の司教補のザンエと申します。エレナ王女におかれましては拝謁の栄を賜りまことにーー」
「今は火急の時です。礼は不要です」
「は、はい。こちらはMP回復の休息かと思われます」
「……なるほど。いつ起きるかはわかりますか?」
「MP的には既に意識を取り戻すのは充分だと思いますが、こればかりはタイミングですので」
ザンエ司教補の説明にエレナ王女は考え込む。
その横でフィオレがオナシスと目配せを交わした。それからヤザットにそっと近づき、その顔を覗き込んだ瞬間にフィオレは驚愕にのけぞった。
「ふぁ!?」
読んでいただいてありがとうございます。次回更新は20日(木)の予定です。




