ダンジョン編-35
呆然としているマクダフ王子の背後から筋肉質の身体に頬に大きな傷がある、どう見ても悪人で極めて柄の悪い男が近寄ってきて、エレナ王女に向かって、乱暴な口調で訊いた。
「おい、俺たちは何をすればいいんだ?」
するとエレナ王女は兄に向けるのとはまるで違う優しい表情で、
「ケイモさんたちも休んでいてください。怪我をされた人はいませんか?」
「まあ、ちらほら、な」
「ユーインさん、ユーインさんはいませんか? ああ、いました。こちらの皆さんの治療をお任せしていいですか?」
「わかった」
ケイモと呼ばれた男が去ったあと、思わず声を潜めて、
「お、おい……あれはいったい何者だ?」
「強制労働ダンジョンの囚人の皆様ですよ」
「な、なんだと!?」
「大丈夫。彼らは人類です。強制労働ダンジョンの味方ではありません。それに彼らは対ガーディアン戦のベテランです。倒すには至りませんでしたが、ガーディアンの気の引き方は銀の巨人も共通していました。おかげで足止めがずいぶん楽になりました……問題は銀の巨人にダメージを通せるのは大地の精霊の魔術を使える者のみで、その契約者がひどく少ないことですが……」
ブツブツつぶやき始めた妹を放っておいて改めて周囲を見回す。
よく見れば囚人達だけではない。傭兵団と思われる者までいる。
余りに混沌とした状況で、マクダフ王子は不安になった。
「これであの化け物と戦うのか……」
どうしてもこの玉石混淆の軍で銀の巨人と戦えるイメージが湧かない。だが、そこで颯爽と銀の巨人を倒した存在のことを思い出した。
「あ、そうか、勇者がいたな! うむ。なるほど。そういえばスタンピードを停めたのは初代勇者オーイガ卿だったな。今回も勇者さえいればーー」
そこでマクダフ王子の背中を叩く者がいて、振り返ると怖い顔をした妹だった。顔は笑顔だが明らかに怒っていた。
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