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ダンジョン編-27

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「これは事件ですわね……」


 茂みの中から、ノドン子爵の兵士に守られた強制労働ダンジョンを観察しながらもっともらしい口調でつぶやいた相手に、


「一国の王女がこのような場所にこのような姿でいることの方が事件だと存じます」


 とため息をつきながらフィッタは答えた。

 フィッタの容赦ない指摘に、エレナ王女は自分の姿を鑑み、首をかしげて、


「似合っていませんか?」

「どうでしょうか。そのような小さな騎士鎧があることがむしろ驚きですが」

「歴史ある我が国には、女ながら戦乙女として活躍したご先祖様もいらっしゃるのですよ。それよりグランフェディックさんはどう思いますか? 似合っていると思うのですが……」


 問われたグランフェディックは真剣な顔で、


「エレナ様はいつでもお美しくあらせられます」

「聞きましたか? やはりフィッタは私に厳しすぎるのです」


 フィッタが再びこれ見よがしにため息をついた。それから、


「……このあとどうなさるおつもりですか? 私はいったん王都に戻り、強制労働ダンジョンに異変があった旨、陛下に報告し裁断を待つことをお薦めしますが」

「それは出来ません」

「……なぜでしょう?」

「今まで特に異変がなかった強制労働ダンジョンに、あの方が入所した途端に起こった異変。あの方に関係ないわけがないのです。だとするとあの方に協力するのがあの方に救っていただいた我が国……いいえ、人類の責務ではないでしょうか?」

「……大きく出ましたね。でも人類の責務ならば当然姫様以外にもーー」

「その通りです!」


 グランフェディックが大きく頷いた。


「ヤジットさんになにかあったらそれは我々の恥。人類の恥です」

「……グランフェディック様もそっち側でしたか」


 フィッタの冷たい視線にグランフェディックは少し慌てて、


「違いますよ? ヤジットさんに恩があるのは事実ですが、それだけではありません。万が一のことがあれば、今は大人しくしている魔王がどう出るか……ヤジットさんは人類の命運を担っていらっしゃるのです」


 グランフェディックの言い訳に、エレナ王女は満面の笑顔で、


「さすが勇者さんはよく分かっていらっしゃいますね。あの方の価値は人類そのものと等価なのです」

「それは言いすぎでしょう」


 側近の指摘にもエレナ王女は引かなかった。むしろ痛ましいものを見る目で、


「愛は全ての価値を一変させるものなのですよ? フィッタもいつかわかる……と思いますが……」


 放っておくと終わらない、と思ったのかグランフェディックが咳払いをして、


「……大丈夫です。姫様は私が責任をもって警護いたします。侵入しましょう」


 グランフェディックは、常人には超えられない十メートルはあろうかと思われる高い壁を見ながらそう言った。


「そうしましょう。フィッタはどうしますか? ここで待ちますか?」

「いえ……運命だと思って諦めます。ですので、もちろん着いていきます。本当にダメなとき止めるのは私しかいなさそうなので」



次回更新は24日(土)の予定です。

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