ダンジョン編-20
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カルアロイ所長の要請を受け、ノドン子爵領の王都の屋敷に常駐している部隊が強制労働ダンジョンに急行した。
総勢二〇〇名。ノドン子爵が王都付近においているほぼすべての戦力である。
強制労働ダンジョンは王都の南二十キロに位置する。通常の行軍なら半日の行程だが、それでは間に合わないと考えた騎士シトガルは部隊を厳しく叱咤し、馬と馬車を駆使して二十キロの距離をわずか二時間で駆け抜けた。
ノドン子爵領において、強制労働ダンジョンはそれほど危険かつ重要なもの、だという認識なのである。そのため強制労働ダンジョンに問題が発生した際の動きはマニュアル化され、共有されている。何しろ武器を持った犯罪者たち(囚人)が目が届かない場所(ダンジョン内)で自治権を持っているも同じ状態なのだ。いつ暴発しても不思議ではないため危険視して当然と言えば当然だった。
騎士シトガルの部隊は強制労働ダンジョンに到着するや、そのまま強制労働ダンジョンの出入り口を固め、シトガル自身は強制労働ダンジョンの周辺を捜索した。
強行軍が功を奏したのか、ダンジョンの外の森の入り口に隠れていたノドン子爵の次男であるカルアロイ所長の身柄を確保することができた。
カルアロイ所長に怪我はなく、これで最低限の目的は達成できたとシトガルは胸をなで下ろした。あとはこのまま交代しながら出入り口を固めて囚人たちが外に出ない状態を維持し、突入はノドン子爵の名で要請した傭兵団ーー神々の黄昏団が到着したら彼らに任せるつもりである。神々の黄昏団は強力な傭兵団で、三十人しかいないが全員がレベル25を越えているという。王国の騎士団に匹敵する軍だ。とりわけ団長のフィオレのレベルは軍事機密扱いされており一説には40を越えているとも言われる怪物だ。
領主直下の部隊である自分たちは、最低限の仕事をし、危険はそれにふさわしい報酬を得る人間がやればいい、というのがシトガルの考えだった。
おそらく半日もすれば神々の黄昏団が到着するだろう。そうすれば後は彼らに任せてーーシトガルがそんなことを考えていると、
「事件が起こっているようですね?」
突然声をかけられた。
全く気配に気づかなかったので焦りながらシトガルが振り返ると、大貴族の付き人を思わす若い男が立っていた。身なりはいいがどこか表情に暗いところがある。近くの村の人間だろうか。
ともあれ、警戒中であるにもかかわらず、誰何されないまま自分のところまで来てしまったのは部下の失態だな、と苦々しい思いでいると、
「……なるほど。ノドン子爵の手のものですか。確かここの所長はノドン子爵の次男でしたね。ということはこのままではノドン子爵の責任問題になりかねない事態が起こっている、ということですね。ふむ。ちょうど良いと言うべきか……」
全てを見透かしたような発言にシトガルは大声で、
「集合!」
シトガルの声に気づいて近くにいた部下達が駆け寄ってくる。
すぐに部下達に向かって、
「不審者だ! 直ちに拘束せよ!! 腕の一本くらい折っても構わん!」
集まった六人の部下達がいっせいに武器を構え、男の方を向いた。
次回更新は13日(火)予定です。誤字脱字があれば教えていただけると助かります。評価やブックマークをいただけると喜びます。




