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ダンジョン編-4

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 ベレスティナ王国唯一のダンジョンである強制労働ダンジョンは、現在休眠期であるといわれている。

 休眠期のダンジョンでは防衛のためのガーディアンが増え、職人であるクラフターの活動は減る。したがってクラフターが作成するレリックはその期間基本的に回収できない。

 レリックには人間では作成できない高ランクの武器・防具・魔導具などが含まれ、そのレリックが回収できないことは魅力半減だが、ガーディアンの身体を構成する金属にアダマンタイトやオリハルコン、ミスリルなどが混じっているため、鉱床が存在しない国家にとって、ダンジョンを攻略する意味が大きいのも事実である。

 そのためベレスティナ王国におけるダンジョン攻略は休眠期であっても継続的に行われ、そして基本的に死刑囚によるものになっていた。

 死刑囚を使う理由は、大量発生したガーディアンと戦うのが、戦闘訓練を受けた騎士であっても危険だからだ。

 おかげでここ10年ほどは現実の豊かな鉱床にはほど遠いものの、それなりに安定した特殊金属供給元となることが出来ていた。

 現在の強制労働ダンジョンの所長はカルアロイという名前の貴族だった。地方領主であるノドン子爵の次男である。旨味の大きなこの肩書きを彼が手にするために、父親であるノドン子爵は関係各所にかなりの贈賄を行った。その分を回収する必要があり、強制労働ダンジョンの所長にとってその方法とは、搬出された金属のちょろまかしと、供給品の質の調整だ。要は囚人達にする武器や衣服、食料を安く済ませることで、その差額を懐に入れる、という寸法だった。もっとも質を下げすぎると、当然搬出される金属も減るため、そのバランスが所長としての腕の見せ所なのである。

 カルアロイ所長は今ここ一ヶ月の間に搬出された金属類の重量リストを見てうなっていた。

 どう見てもおかしい。

 半月ほど急激に搬出量が減り、そして一週間前から先月と同レベル、あるいはそれ以上まで回復している。

 以前は、囚人達によるボイコットもあったが、搬出量にあわせて供給物資をレート交換するようになってからそのような姑息な手段を取らなくなった。

 では、いったい何が起こったのか。

 難しい顔で考えていると、


「どうかされましたか?」


 背後から秘書の声がかかった。

 振り向くと、美しい秘書のマルガリータがこちらを見ていた。

 カルアロイが雇い入れた秘書兼愛人である。元々は父親の領地の農民の娘だったが、雛にはまれな美貌と淫猥な体つきに目をつけたカルアロイが半ば強引に連れてきたのだ。

 外観だけで選んだマルガリータだったが、なかなか頭も良く、愛人としてだけでなく秘書の仕事も充分こなしてくれる。

 カルアロイ所長はリストを手渡し、


「これを見てみなさい」

「拝見します」


 マルガリータはリストに目を通し、


「半月前のこの急激な減少は……何が原因でしょう? 過去、事故等による搬出量の減少はありましたが、ここまでではなかったと思います」


 マルガリータの振り向いたときに揺れた乳房を見ながら彼女の分析にカルアロイは我が意を得たとばかりに満足げに頷きを返す。


「うむ、その通りだ……看守たちから特別な報告は上がってきていない。修人どもが意図的に何かしている、ということもないだろう。理由が全くわからんのだ。半月前と言えば……何かあったか?」


 マルガリータはしばらく黙ったあと、


「……そういえば夜中に地震があったと記憶しております。小さなものであまり気にしていませんでしたが、珍しいと言えば珍しいかと。地中にあるダンジョンならば影響が多いのかも知れません」


 カルアロイはきょとんとして、


「地震、だと? 俺は知らんぞ」


 マルガリータは少し赤くなり、


「カルアロイ様は、あの……その……事が終わったあとはかなり眠りが深くいらっしゃるので」

「ああ、そうか。そういうことか。なるほど、そんなこともあったのか。なら納得ができるというものか。つまりガーディアンは地震に驚いて引っ込んだ、ということだな。そういうことならあり得なくはない」


 カルアロイはマルガリータとの情事を思い出し、鼻孔を膨らませた。それから、


「ならば、この減少分を取り戻すように囚人どもに伝えろ。供給物資を減らされなくなければ、死ぬ気で働け、と」

「了解いたしました。あと別件ですが神聖教団より巡察の申請が来ています」

「なに? なんで神聖教団がそんなことを言ってくる!? ここにはあいつらが欲しがるような利権などないぞ」

「それはそうですが、正式な書類のため、拒否は難しいかと」

「くそっ。余計な仕事を増やしよって! まぁいい。そういえば新入りがいたな。あいつにやらせておけ」

「分かりました。シュタフさんに対応を伝えておきます」

「うむ。それから……」

「何でしょう?」

「今夜寝室に来い。二日ぶりだがいいな?」


 マルガリータは一瞬驚いた顔をした後、顔を赤らめて頷いた。


「……承りました」


 カルアロイは満足そうにうなずき、そして、神聖教団のことは忘れた。

 謎の搬出金属の減少も忘れた。

 ただ一つ、マルガリータの揺れる胸のことだけを考えていた。


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