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 ゲートから呼ばれて出てきたガイオはすぐに、


「ひどいんですよ、聞いてくださいよヤジット様。村の皆さんは私を水路の修理が終わってから半年間ほったらかしなんですよ! だから毎日暇で暇で……一人寂しく自分の身体に油を差しているなんてもういやです。早く帰ってきてくださいよ……」


 俺は慌てて、


「おい。泣き言言う前に周囲を見たほうがいいぞ」


 言われてガイオは周囲を見回し、


「あ……」


 軽すぎる性格のガイオは素を見せないように初代勇者にきつく言われていたという。


「ごほん」


 ガイオは咳払いをすると、


「バオガイオーニナニヨウカ? ワレハ世界ヲ救ウ剣ニシテ盾」


 俺は肩を落とし、


「おせーよ」

「大丈夫。まだいけます! こういうのは継続ですよ。ずっといい感じで話していたら、そのうちみんな『そういえばずっとこういう感じだったよな』とか思うようになるんですって」

「そういうものか? あ、そういえば用があって呼んだんだ」

「なんです? ヤジット様の頼みならなんでも!」


 俺は黒い魔甲を指さし、


「あれ、知ってる?」

「ん? あー」


 ガイオの視線を受けて、心なしか黒い魔甲が後ずさったように見えた。


「懐かしー。トシさんが三番目に作った魔甲です、確か。どこ行っていたかと思ったけど、こんなところにいたのかぁ。ん? 誰かと契約してんの?」


 黒い魔甲がコクンと頷いた。


「そっかぁ。いいなぁ。うらやましい。働くってのは大切なことだよ、うん。ですから私にも仕事が欲しいんです! なんかありませんか? そしてヤジット様と契約させてください。絶対役に立ちますって! 森の開拓とかやれます! 運河も掘ってみたいです! そういえば魔王がまだ生きているみたいじゃないですか。私なら殺れます! 殺ってみせます!! そのあとは竜とか神とかヤジット様のために何でも殺して見せますよ!」

「殺しちゃダメだよ。一応、不可侵条約とか結んでいるんだから。とにかくその話はあとで。相手のこともわかったし、いったん帰っていいよ?」

「え? 契約してくれないんですか……? そのために呼び出してくれたんじゃないんですか? また私のあのぼんやり立っているだけの毎日に戻しちゃうんですか?」

「あー、うん。いや、そうだな。契約は前向きに考えるよ。そんなに暇こいているとは知らなくてさ。そういえばガイオに農作業を手伝ってもらっていたの、俺だけだったな。悪いことしたな。だけどなぁ、少し大きすぎるんだよな、お前」

「え? そ、そんなことを思っていたんですか? トシさんはまだ小さい。巨大ロボットは三十メートルを超えてからだ、って言っていたんですけど……」

「ご先祖様の言いたいことはよく分からん。牛を運ぶときとかはいいけど、それ以外だと農具も持てないしなぁ」

「なんとかします! いい方法を思いついているんです!!」


 ガイオが目をキラキラさせてそう言った。

 それからうつむき、


「それに……そんな風に言ってくださるのはヤジット様だけなんです……だから私はヤジット様のためにがんばります!」

「何言ってんだよ。お互い様だろ? 俺だってガイオがいて助かってるんだから」

「ほんとですか! ありがとうございます!」

「く、くそ! 訳が分からない」


 蚊帳の外に置かれてしまったデルトナが怒った。

 黒い魔甲に命じる。


「お前が本物のバオガイオーだと見せてやれ!」


 だが、黒い魔甲はブルブル震えるだけで動かない。ガイオを前に完全に萎縮してしまっているようだ。


「ならそいつだ! その人間を狙え!」


 ガイオ相手は動けないが、俺相手は大丈夫らしい。今度は命令通り、黒い魔甲が剣を抜き、俺に叩きつけてくる。

 俺の頭を叩き潰す直前のそれを、ガイオがあっさりと片手で払った。

 すさまじい音で剣がはじける。

 剣が飛んで壁に激突し、その衝撃に石造りの壁が崩れた。

 耳を塞ぎたくなるような轟音だったが、それどころではないのかデルトナは愕然とした顔でこちらを見ている。

 デルトナのことを無視して、ガイオはぐいっと黒い魔甲の顔に自分の顔を近づけ、


「おいプロトタイプ。いい加減にしないと軽くぶっ壊すぞ。このお方は私に仕事を与えてくれる大切なお方だ。なんかあったら許さない。ってかぶっ壊す。わかってんのか? トシさんがいないから直してくれる人もいないぞ?」


 まるで視線に圧力があるように黒い魔甲はじりじりと下がりそのまま腰砕けになる。


「どうした! 立て! 動け!!」


 デルトナが必死に呼びかけるが、うずくまったまま黒い魔甲は動かなかった。


「じゃあ、私はこの辺で。契約、待ってますから!」


 そう言って、ガイオは去った。

 どこかイヤな空気だけが残った。


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