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1-14

 王族付きの付き人はいざというときの護衛の意味もある。自分が主人のエレナ王女を危険にさらすわけにはいかないと考えたフィッタは短い通路の途中でなんとかエレナ王女を追い抜かし前に出た。

 祝賀会場からさらに中庭に出た瞬間、目に飛び込んできたものは、


「これは……」


 思わず背後のエレナ王女もつぶやきを漏らすほど、意外なものだった。

 広い中庭の中央にはほとんど人が居らず、代わりに壁際にまるで遠心力で押しつけられたように集まっている。最外周にいるのは国家の中枢にいる高い身分を持つ貴族達で、その内側が貴族達の護衛や付き人だ。そしてその全員が祝賀会場の中央に視線を向けていた。護衛達は緊張を混ぜた目で、貴族達は恐怖が滲んだ目で中央を刺すように見つめている。だが、視線の主成分は緊張や恐怖ではなく当惑だ。

 その視線の先、中央にいるのは巨大な黒い固まりだった。

 圧倒的な巨大さ。

 ややずんぐりとした人型である。一見、黒く分厚い金属の装甲で覆われた巨人用の全身鎧に見える。

 だが、それがただの防具ではないと誰もが知っていた。

 兵器である。当然のことながら攻撃にも使える。何しろ大きさと重量が半端なく、さらに専用の大剣も背中に装備されていた。

 これが魔甲と呼ばれる存在だった。

 召喚で呼び出された魔甲は術者の魔力が続く限り自動で戦う兵士である。大きさはさまざまで、人間と同じくらいの物もあれば、それこそ神代には山より大きな魔甲が存在し、川をせき止め谷を穿ったという伝説もある。また魔甲の中で特に優れたものは、術者が中に乗り込んで身体と同調させることで、完全な防御と人間と変わらぬ滑らかな動きを実現することができると言われる。

 今視線の先にある魔甲はかなり高レベルなもののように見えた。大きさは八メートルほど。ランクで言えばほぼ間違いなく伝説級。つまり神話級、伝説級、英雄級、上等級、汎用と五段階の上から二番目だ。これほどの魔甲となると、そもそも発見されることさえほとんどない。歴史ある王国が秘蔵しているか、あるいはごくまれに地中深くから発掘されるか、だ。魔甲はそれぞれ独自の意志を持つため、手に入れただけでは使い物にならず、魔甲術士のスキルを上げて、魔甲と契約を結び、それで初めて使用できるようになる。ちなみに伝説級の魔甲であれば、一軍に匹敵する、と言われている。神話級の魔甲であれば、一国に匹敵する、と言われている。

 その魔甲が、中庭の中央でなぜかうずくまっていた。

 なんだか落ち込んでいるような体勢で少し滑稽な姿である。

 その前で驚いた顔でいるのは、勇者グランフェディックとユーイン。勇者グランフェディックはユーインを護るように立っている。そして、そのさらに前、黒い魔甲の目の前に立っていたのは、感心した顔のエレナ王女の想い人と推測されている中年男性ーーヤジットだった。


「……何が起きているの?」


 フィッタの口から周囲の人間の感情に伝染したように当惑の言葉が漏れた。

 訳がわからなかった。

 もちろん、知性に於いて比類ないエレナ王女も答えを持っていなかった。

 その答えを知るために、話は少し遡る。


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