第5話 瀬戸一の歴史
「たっだいまぁー!」と元気よく帰ってきた碧月に、母、瀬戸博美は「おあえりー!もう晩ごはんできてるよー!」と返す。碧月が帰ってくるのは大体午後八時前後。そのころには、博美はとっくに料理を作り終えていることが多い。
碧月が「今日の晩ごはんなにー?」と着替えながらたずねる。
「今日は唐揚...」といったとたん、「やったぁ!」と喜ぶ碧月。碧月は唐揚げが大好きなのだ。他にも、ハンバーグやコロッケなど、油っこいものが好きで、なおかつよく食べるが、それでも碧月のスタイルは崩れない。というか、少し痩せ形なのを博美は心配している。
そして食事も終わり、風呂に入ろうとする碧月を博美が止めた。
「碧月...。お風呂上がってきたら、大事な話があるから。」
母があまりにも真剣な表情で言ったので、碧月も何かがあると悟った。「わかった...。」とだけ返し、風呂に向かう。
そのあいだ、博美は奥にある書庫へ行き、あるひとつの本を手に取って眺めていた。
瀬戸家は大きな出来事があると記録に残すという伝統があり、それは今でも続いている。博美が眺めていたのは、碧月の父、瀬戸一の記録だった。
「...いずれ言わなければいけない時が来るのね...。今なら言っても大丈夫かしら...」
そこには、一の半生が書かれているのだが、あまりに衝撃的で信じ難いことが多いので、博美はまだ碧月には言っていなかった。
もう碧月は高校生、今なら充分理解してくれるだろう...そういう考えもあったのかもしれない。
さて、風呂から上がってきた碧月に、博美は切り出す。
「碧月...。3年前にお父さんがなくなったのは覚えてる?」
「うん...。確か病気でしょ?」
「そーなんだけど...」言葉をつまらせる博美。
碧月は不思議がる。視線を博美の顔から外して泳がせる。
すると、博美が持っていた本に視線がとまる。
ただ、碧月はその本のことを聞かなかった。聞いてはいけない..そんな気がしたのだ。
それを察したのか、博美がおもむろに本を開ける。
「ここには、お父さんの半生が書かれてるの。気になるようだったら読んでいいわよ。」
そんなことを言われては、碧月も見ないわけにはいかない。本を開いてしまう。
そこに書かれていたのは...
「...へえ。にわかには信じられないけど、お父さん占い師だったのね...。まさかこの島に人狼がいるとはね...」
碧月がこぼすと、博美が、
「碧月、あなた...人狼を知ってるの!?」と驚きながら聞いた。
碧月は、人狼ゲームの話をして説明した。すると博美は、
「...今やこんなゲームもあるんだね...。お母さんびっくりしたわ。でも、ひとつ覚えておいて欲しいことがあるの。」と言った。
「さっきの本の最後から2ページ目を見て。そこに書いてるんだけどね、言い伝え通りなら今年人狼が襲ってくる年でね...」
博美があまりにも平然と言ったので、碧月は最初なんのことか分からなかった。ところが、理解したと同時に、
「え、こっ、今年!?え、じゃあ、ど、どうしたらいいの!?」とパニックになった。
「今までは島のみんなが色々な職業に就いててね、それを駆使して撃退したんだけど...」博美が言っても碧月は全く聞いていない。むしろ、パニックが悪化しているようだ。
「誰!?何!?何の職業!?」そこへ博美が、
「お父さん、占い師だったでしょ?だから、あなたにも占い師の血が流れてるはずなのよ...」と言ったが、逆効果であることは確かであった。
「え、ちょっと訳わかんない!?何がどーなってるのよ!?じ、人狼が現実に!?私が占い師!?え、えええ!?」と、いつまでたってもおさまりそうになかったので博美はしばらく碧月を一人にしておくのだった。
そして、寝室でひとりぼーっとしていた碧月だが、やはりあのことが忘れられない。
「わ、私が占い師...。確かにお父さんは占い師って書いてあったけど、私そんなに鋭いほうじゃないし...
第一人狼が現実にいるなんて...」いろいろ考えるうちに、眠くなってしまい、碧月はベッドに倒れ込むのだった。




