第11話 遡る記憶
「ただいまー...って言っても誰もいないか。」
家に帰った桐崎を迎えるものは誰もいない。それも、両親は既に他界、祖父の家が遠方にあるだけという厳しい家庭環境を持つ桐崎にとっては、当たり前のようなことだ。
桐崎の両親は、例の人狼の襲撃によって死んでしまった。その時桐崎はまだ祖父の家に預けられたままで、そのことを知ったのは後々祖父が桐崎に伝えたからであった。
ちなみに旗神北高校はサッカーがとても強く、全国大会にも出場しているほど。そこに桐崎は、部活動推薦、しかもサッカー部の推薦で入ったのだった。
その推薦が決まった日、桐崎は祖父から両親のことを聞き、お前が行く旗神北高校はこんなところなんだ、それでもいいかと聞かれた。両親の二の舞にはなるなとも言われたが、それでも桐崎はサッカーのため、旗神島にひとりで来たのだった。
その桐崎は、風呂に入って過去の記憶を回想する。
(やっぱり、両親が死んだ人狼の騒動と人狼ゲームは酷似している...今やゲームにもなっているのか...ん!確かおじいちゃん、瀬戸がどーのこーのって言ってたな...)
祖父は人狼の騒動について全て語っていた。というか、この事件はほかの地域にも大きく報道され、祖父がすべて知っているのも無理なかった。
もちろん、父の能力や瀬戸一のことも...
(瀬戸...いや、まさかな。)
そう思いながら、桐崎は湯船に身を委ねるのであった。
次の日、桐崎は学校に行くと、碧月の靴箱に1通の手紙を放り込んだ。そして、そのまま部活に向かう。
少し遅れて、碧月が学校に来て、何気なく靴箱を開ける。1通の手紙がひらひらと落ちていった。
「なに...これ...??蓮くんから...??」
中を見てみると、今日の放課後に生徒会室に来て欲しいという内容だった。
「んー...今日は何も無いから早く帰れると思ったんだけどなぁ...まあいっか。それにしても何の要件...」
「ひょっとして...碧月のこと好きなんじゃない??」
碧月はびっくりして顔を上げると、そこには高村がいた。
碧月の独り言を全て聞いていたのである。
「さ、早姫ちゃん...!!ちがっ、これは...」
「またまたぁー??しらばっくれちゃってー。碧月だって桐崎くんのこと好きなんでしょー??」
「そそ、そんなことない!!」顔を赤くする碧月に対し、高村は
「あら、そうなんだ。じゃあ私が桐崎くん奪っちゃおっかな(笑)」と碧月をいじる。ここまでくるとさすがの碧月も、「もういい!!早姫ちゃんなんて知らない!!」と、せっせと階段を上がっていくのであった。
他方高村は、「あちゃー...ちょっといいすぎたかな...??」と、少しだけ反省するのであった。
授業が終わり、3階へと急ぐ碧月。生徒会室に早くついて、気持ちを落ち着かせる算段だった....。
だが、碧月がついた頃には既に桐崎は生徒会室で調べ物をしていた。碧月が来たことに気づき、「瀬戸さん、こんにちは。」と、挨拶をした。
「私を呼ぶなんて...何、そんなに大事なこと??」
「はい。瀬戸さんじゃないといけないんです...。」
そう言われて、碧月は少し照れを見せる。
「な、何言ってるのよ...ほら、言いたいことあったら言って。」
「は、はい。実は...」桐崎は言葉を濁した。少し深呼吸し、勢いをつけて言う。
「瀬戸さんって...人狼騒動の時に活躍してた人の娘さんなのですか??」
想像していた言葉とどこもかすりもしなかった瀬戸は、その場でしばらく硬直してしまう。
しばらくたって、碧月は震え声で、「な...なんでそのことを蓮くんが知ってるのよ...」と警戒しながら話す。
「実は...」桐崎は家族の素性をすべて明かした。
瀬戸はそれを聞きながら、桐崎は同志だと感じた。そして、桐崎にある情報を伝える。
「実は...言い伝え通りなら今年に人狼が現れるはずなの...」
「な、なんで...また同じ悲劇を..」桐崎がショックを受けているところに碧月が切り込む。
「ね、蓮くんのお父さんやお母さんって何か能力持ってなかったの??」
「えっと、確か霊媒師だったと...」
「そっか。ありがとう。言いたいことがそれだけ?」
「うん..。」
「そっか...。じゃあ、部屋の鍵は私が閉めるね。」
と、碧月は生徒会室を閉め、職員室に向かうのだった。




