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「一番最初に会いにいくなら……そうね、夢の、がいいわ」
「わかったよ。ありがとう姉さん」
「いいの、彼はもうすぐ……だから、悔いのないようにね」
リュカは真剣な顔になる。彼女の言う「もうすぐ」とは距離のことではなかった。
「もうすぐって何がだ?」
「君は知らなくてもいいよ」
竜守りが死ぬ時、それは己が命を手放してもいいと思った時だ。彼に何があったかはわからない。けれど、彼が「そう」だと言うことを女は知っていた。
塔の上から、若い2人の背中を見送る。その背中が切なく感じて、彼女は何日、何年か振りに塔の外に出た。
2人は談笑しながら、どんどん遠くなっていく。会話の内容が聞こえなくても、楽しそうなことくらいはわかる。
「ホゥ」どこかから、竜の鳴き声が聞こえる。きっと、愛の竜が鳴いているのだ。
自分はそんなに心を乱していたか、と女は驚いた。彼らから何を感じ取り、何を懐かしんだのだろうか。女の両目からは涙が溢れる。
「……」
一番口にしたい言葉は出てこない。今では、大切だったあの人も、あの人を表す言葉も、わからなくなってしまったのだ。
「……あい、して、いる」
「あい、してい、た」
途切れ途切れに女は呟く。
女は「愛」がわからなかった。愛の竜守りであるのに、なんと皮肉なことであろうか。だから彼女は何億冊もの本を読んだ。1人で過ごす数万年間、ずっとこうして過ごしてきた。
「ホゥ」と鳴く竜も、声も上げずに泣く彼女自身のことも、慰め方がわからなかった。
ただ、彼女は天海を見つめる。
「彼らの旅に、幸多からんことを……」




