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色とりどりの、ステンドグラスから差し込む光。その光に照らされた彼女は誰よりも妖艶だった。しかし、また誰よりもつまらなそうでもあった。
ペラリ、と本のページを捲る。捲ってからまた捲る。内容を知っているのか、ページを捲る手は休まることがない。
「愛の姉さん?」
階の下から高い男の声が聞こえる。
「ここよ」
本を床に置き女が声をかけると、男は螺旋階段を登り塔の上まで来た。
二十代前半にしか見えない、若いその容姿。けれど実際に、彼はもう何千年もの時を生きている。その理由は、彼が時の竜守りだからである。
今日は珍しく、連れと一緒らしい。連れは10代後半くらいで彼よりほんの少し小さい。明らかにこの場所に戸惑っており、ずっと周囲を見渡している。
「俺、アズって言います。今日はよろしくお願いします!」
戸惑っていたのではない。彼は興味津々だったのだ。この場と、この美しい女に。
「最近、僕が拾った少年だ。今日は姉さんの知恵を借りたくてきた」
時の竜守り――リュカは簡潔にそう説明する。
「いいわよ。なんでも言って」
「じゃあ……」
言いにくそうに、リュカは頭を掻いた。
「じゃあ、空の色を知る方法を教えてくれないか?」
「……」
女は押し黙る。知らないのではなく、リュカがこんな質問をすることが不思議だったからだ。
「そうね、まずは空を星で照らしてみることじゃない?」
リュカとアズは目を大きく見開く。
「……星ってほんとにあるの?」
リュカはあまり信じていない様子だ。アズは楽しそうにリュカの言葉に頷く。
「そうね……」
女は目線を下に動かす。
「あったわよ。私はそれを知っている」
女の声は力強かった。
「わかった」
リュカはそれで納得したみたいだ。
「ちょっと待って、どうやって空に星を浮かべるんだ?」
アズの疑問はもっともである。女でさえ、自分の言葉だけで彼らが納得するとは思っていなかった。
「星を空に浮かべるにはね――」
女は自分の手を見つめ、ぎゅっと強く握った。
「竜守りが自分の竜を手懐ける必要があるの」
「お兄さん、早くあなたの竜と仲良くなろう!!」
アズは嬉しそうにリュカの肩を掴む。しかし、この場で動いているのはアズだけで、リュカは白い顔をして固まっていた。
「お兄さん?どうしたの?」
――竜を手懐ける
このことは、竜守りならいかに無理なことかわかるだろう。それはつまり……
「竜を手懐けるってことは、自分の欲望に打ち勝つってことよ」
女は冷たい声でそう告げる。アズはあまりピンときていないみたいで首を傾げた。
「君にもあるだろう?『こうすればよかった』みたいなことが。それを全て無くすってことだよ」
「俺は記憶がないから、そんなものはない」
「じゃあ、今からいっぱい作っていこうな」
アズは胸を張り、リュカは意地悪そうにそれをいじる。2人は良い仲かと思うほど、仲良さげだった。
「時の、私からの警告よ」
リュカはサッとこちらに向き直した。女は遠くを見つめながら息を吐く。
「『時は運命を愛してはいけない。運命は時と一緒になれない』」




