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「そんなに竜守りって、大変なのか?」
「そうだよ」
リュカはスーッと息を吐いた。
「竜守りは、人を愛してはいけないんだ」
「……」
アズは珍しく黙りこくった。よっぽど、リュカの言葉が衝撃だったのだろうか。
「君は、みんなから愛されそうだもんな。愛されたのに愛せないことは辛いだろう」
リュカは誤魔化すみたいに捲し立てる。アズの落ち込んだような様子を確認しながらも、口を閉じることはできなかった。
「違うよ……」
アズは感情のこもっていない目でリュカを見つめる。
「違う。本当に愛されるのは、あなただ」
リュカの心臓はどきりと跳ねた。アズが何を言っているのかがわからない。
「そんなことはないよ……」
「いいや、そうなんだ。俺は……」
アズは頭を抱え、息を切らしながらうずくまる。何か思い出したのかもしれない。
「大丈夫だから。僕は君を害さないよ」アズの背中をさすりながら、つぶやくと彼の呼吸も安定してきた。
「ごめん……変なとこ見せた」
「いいよ。長く生きてるんだ。もっと変なことも見てきた」
「もっと変なこともした」とは口に出さない。彼のプライドが許さないからだ。
「ありがとう、お兄さん」
「リュカだ」
「ありがとう、お兄さん」
ニヤニヤしながらアズは言う。最後は語尾にハートが見えたのは気のせいだろうか。とにかく、もうすっかり元の調子に戻っているみたいで安心する。
「お兄さん、俺と一緒に旅に出ないか?」
「なんで?」
「俺は、空の色を知りたい」
金色の目をキラキラと輝かせながらそんなことを言う。そんな、荒唐無稽でバカみたいなことを。
「空なんて、ここからでも見れるだろう?」
「いいや。あれは本当の色じゃないんだ。昔、空には『星』って言うものがあったんだよ!」
「……それは神話の話だ」
「でも」とアズは話を続ける。だんだんとリュカもその気になってきて、この1人の人間を諦めさせるための旅に出るのも面白いかもしれないと考え始めた。いわゆる、暇つぶしである。
「いいよ。じゃあ、まずは愛の姉さんのところに行こうか」
「愛の姉さん?」
「愛の竜守りだよ。彼女はなんでも知ってるんだ」
「ふーん」
リュカは旅に出るために荷物をまとめる。長い時間を生きる中で、彼にできたほんの少しの大切なものだけをかき集めていた。アズはその様子を見つめる。
「こんなに少なくていいのか?」
「大体のことは魔法でできるからいいよ」
「すごいな!」と言う声が飛んでくることを期待したが、実際はそうじゃなかった。
「俺も、ちょっとなら魔法を使える」
ドヤ、という音がよく似合う顔だった。
「それは随分心強い」
扉を開けて、2人は一歩を踏み出した。バラバラだけど、目的は同じ2人の一歩。彼らの旅は、何を照らすのだろうか?




