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「僕は別に、料理を食べなくてもいいんだよ?」
「大丈夫だって、俺、料理うまいから」
忙しない動きで食材たちを火にかけるアズの隣で、リュカは彼と食材を見守る。
(変なもん拾っちゃったな……)
後悔先に立たずとはこのことではあるが、リュカはワクワクもしていた。彼にとってこれは、長い空白の中に起こったほんの少しの「出来事」であったのだ。
「できた!」
ドンと皿をテーブルに叩きつけてアズが見せたのは、皿の上に乗った緑色のなんとも禍々しい物体である。
「食べて食べて」
アズは期待した顔でこちらを見つめる。リュカも好意を無下には出来ず、おずおずとスプーンでその物体を掬い、口に入れた。
口に広がるのは甘みと塩味と、ほんの少しの辛味と苦味。それらの配分は見事なもので、見た目からは信じられないほどに美味しかった。
「……なんだ、これは?」
「な?俺、料理得意なんだよ!!」
恍惚とした表情を浮かべるリュカが羨ましくなって、アズは彼からスプーンを奪い取り彼自身も料理を口に入れる。
「うーん。うまい!」
「なんで急に料理を……?」
「だってさ、食べなくても平気って言っても食べれるんだろ?できることはやった方がいいし、やることは楽しんだ方がいい」
アズはバクバクと料理を口に入れる。また、このまま全てを1人で平らげてしまいそうな勢いだ。
「……僕が竜守りだって知って、怖くないのか?」
「なんだそれ?」
「……」
(知らないのか)と突っ込みたいところだったが、彼はおそらく記憶がないのだろう。
「竜守りは、人の欲望である竜を守る役目を持った人間のことだ。大いなる力によって選ばれ、力を得る代わりに代償を被る」
「たとえば?」
「僕は時間の竜守りだ。歳を取らない代わりに、過去に囚われる」
「ふーん」と、アズは鼻の下を指でさする。
「アンチエイジングの申し子ってことか」
「……」
やっぱり、彼はよくわかっていなかった。けれど、リュカにはそれがありがたかった。共感されても、竜守りのことなんて当人同士でしか分かり合えないのだから。
「俺は竜守り?になれないの?」
「……最近、運命の竜守りの兄さんが亡くなったから、新たに指名されたものはいるだろうな。でも……」
リュカが言葉を選んでいることに気づいて、アズは首を傾げた。
「君は、自分の未来が見えるのか?」
(運命の竜守りは自分の未来を見ることが出来る――)
リュカは怖い顔をしていた。まるで彼自身が何かを恐れているみたいだ。
「いいや。全然」
アズはあっけらかんと答える。その回答に、リュカは体の力が抜け、床に座り込む。
「そうか、ならいいんだ」




