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拾い、集め  作者: 日々桜香
第1章
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 夜でも白い空の下、リュカは彼と出会った。いつもなら、見捨てることもできたのにそうできなかったのは、彼の呟いた言葉のせいだ。

「……たい……空の色が、知りたい」

 身なりの悪い少年。明らかに捨てられたのだろう。


「空の色は白だろ」

 リュカは吐き捨てるようにいう。すると、少年は閉じていた目をカッと開いて黄金の瞳を露わにした。

「星があったんだ。その時は今と空の色は違ったらしい」

「……それは神話の話だよ」


 少年は目に涙を浮かべ、駄々をこねた。

「嫌だ、俺はもういくところがないんだ」

「ホゥ」とどこからか竜の鳴き声が聞こえる。竜がなくのは、竜守りが動揺している証拠だ。「まずい」と思い、リュカは少年の頭を撫でる。


「いくところがないなら僕のところに来なさい」

「うん!」

 少年は急に泣き止んだ。まるで、その言葉が発せられるのを知っていたみたいだ。


「俺、ミートパイが食べたいなー」

「図々しいな」

 リュカは笑った。こんなふうに冗談を交わすのは、いつ以来だろう。数千年の時を生きた彼でも、思い出せないことはあった。


「君の名前は?」

「うーん。忘れちゃった」

 少年は考えあぐねているようで、嘘はついていなさそうだ。

「じゃあ、自分で決めればいいよ」

 少年は嬉しそうな顔をした。その後空を見つめて、ふと口に出す。

「わかった。今日から俺は、アズだ」

「いい名前だね」


 (まるでそれは、『運命』を予感させるような――)


 2人は森の中にある、リュカの小屋まで来た。

「意外と狭いねー」

「黙りなさい」

 アズは堂々と床に眠り出した。リュカはそれを気にせず、料理をする。野菜と肉を細かく刻み、火で炒め、パイ生地で包んでオーブンで焼く。


「うわ、本当にミートパイ作ってくれたの?」

 アズは、料理が出来上がった途端に起き出した。都合のいいやつである。


「熱いから、ゆっくり食べなさい」

 リュカの忠告は無視し、吸い込むような勢いでアズは完食した。

「あ、ごめん。美味しくってつい」

 申し訳なさそうに空っぽのお皿を眺める。


「いいよ。僕は何も食べなくても平気だ」

「なんで?」

 アズは不思議そうに聞く。よっぽど、ご飯を食べないということが理解できないらしい。


「俺は、竜守りだ。この身は魔力でできている」

 リュカの話を聞いて、アズは目を大きく開いた。

 (やっぱりそうだよな――)


 リュカは諦めたようにアズから目線を外す。「出て行きたいなら、出て行ってもいいよ」そう口を開く前にアズは、ガタンと音を立てて立ち上がった。

 リュカは孤独に慣れている。だから、心が波立つこともない。

 (いいんだ。欲望に塗れた竜守りなんて、軽蔑していい)


 ガチャリと音が聞こえた。アズの手には包丁が握られている。

「ま、待てアズ、それはダメだ――」

 アズはゴンと音を立てて、包丁を振り下ろした。


「あれ?」

 アズは首を傾げる。

「……」

 リュカは何も言わない。彼の周りには、包丁の刃と、野菜が散らばっていた。


「料理って、どうやってするんだ?」

 アズは、野菜を切ろうとしていたのだ。

「包丁は、振り下ろしてはいけないよ」

 リュカはバクバクと早鐘を鳴らす心臓を撫で下ろす。


 (心を荒立てるなんて、竜守りとして在らぬべき失敗だ……)

 

 

 

 

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