第11話:ライバル(仲間)たちの泥臭き初陣
「……ねえ、本当にいいの?」
月明かりすら届かない、ビルとビルの狭間の暗がり。
私の問いかけに、少女たちは泥と血で汚れた地雷系の服を乱しながらも、力強く頷いた。
親からは「もう娘じゃない」と勘当され、学校からも退学処分。
私から教わった歪んだ「力」で大人たちを跳ね除けた代償は、彼女たちの日常を跡形もなく破壊した。しかし、彼女たちの瞳に絶望の色はない。そこに宿るのは、体中穴だらけで冷徹に生きる私――ルナへの、狂信的なまでの熱情だけだ。
「ルナちゃんと同じ世界にいたいの」
「私たちには、ルナちゃんみたいに銃弾を耐える身体も、超人的な動きもできない……。だけど、束になれば……全員で力を合わせれば、ルナちゃんのライバルになれるでしょ?」
あはっ、と思わず甘い溜息が漏れた。
彼女たちには、私のような神様からの『酷使耐性』もなければ、常人離れした身体能力もない。
ただの普通の、華奢で傷つきやすい女の子たちだ。そんな彼女たちが、私の背中を追いかけてプロの殺し屋の領域に足を踏み入れる。それがどれほど無謀で、過酷な道か。
けれど、私を「ライバル」と呼び、同じ地獄へ飛び込んできた彼女たちの覚悟が、私の歪んだ性癖と胸を激しく揺さぶった。
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「「「死ねぇぇぇっ!!」」」
数日後、裏社会の闇仕事。
ターゲットである武装集団に対し、少女たちは「集団戦術」で襲いかかった。
私なら一人で最小限の動きで片付ける相手。しかし、特別な力を持たない彼女たちは、三人、四人で一人の男に群がり、銃を撃ち、刃物を突き刺し、泥臭く泥沼の殴り合いを繰り広げる。
「痛い……っ、熱いよぉ……っ!」
「ひかないで! ルナちゃんが見てる……っ!」
一人が撃たれ、一人が刃物で肩を裂かれる。
私の指導による「骨を断たせて肉を切らせる」狂気の立ち回り。酷使耐性のない彼女たちにとって、その激痛は文字通り精神を狂わせる拷問だ。悲鳴と涙、溢れる朱。
けれど、彼女たちは倒れない。
痛みに震える体をお互いに支え合い、一人が抑え込み、一人が急所を突き、泥と血に塗れながら、執念だけで標的を仕留めてみせた。
「はぁ……はぁ……っ! 勝った……ルナちゃん、私たち、勝ったよ……!」
傷だらけで息を乱す少女たち。
その姿は、前世の私が何よりも愛した「ズタボロになりながら泥臭く戦う最高の女の子たち」そのものだった。
(ダメ……嬉しすぎて……頭がおかしくなりそう……!)
私は太ももの貫通傷の激痛に耐えながら、うっとりと彼女たちの戦いを見つめていた。私という一つの存在から始まった狂気が、今や彼女たちという集団へと感染し、最高の美しさとなって花開いている。
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戦いが終わり、私たちはいつもの路上へと戻ってきた。
殺し屋としての報酬は得たものの、彼女たちは家に戻ることもなく、私と共にアスファルトの上で生きることを選んでいた。
「あだだ……っ、消毒液しみるぅ……」
「我慢しなよ、ルナちゃんなんて腕に穴空いたまま平気な顔してるんだから……」
ビニールシートの上で、お互いの傷に包帯を巻き合う少女たち。
普通なら絶望的なホームレス生活。けれど、そこには妙に明るく、温かい絆が漂っていた。
「はい、ルナちゃん。ライバルからの差し入れ!」
「ふふ、ありがとう」
差し出された冷えた缶コーヒーを受け取り、私は彼女たちの輪の中に腰を下ろす。
脚の傷口にじんわりと重みが伝わり、脳を焼くような刺激が走る。
「ルナちゃん、次は絶対、ルナちゃんより先にターゲット倒すからね」
「いいわよ。でも……私を越えるのは、並大抵のことじゃないわ」
「絶対追いついて見せるもん!」
「ルナちゃんのライバルだからね!」
口々に意気込みながら、傷の痛みに耐えかねた少女たちが、私の身体にぴたりと寄り添ってくる。
酷使耐性のない彼女たちの体は恐怖と痛みで微かに震えていて、私に触れるたびに、私の傷口にも激痛が走る。
前世では孤独だった私が、転生して理想の姿となり、自分を追って泥を啜る「ライバル」兼「仲間」を得た。
体中穴だらけで、過酷で、傷だらけの日常。
冷たい夜風の中、お互いの体温と痛みを分かち合いながら、私は愛しい彼女たちを抱きしめ、どこまでも満足そうに微笑んだ。




