21.積み重なる問題
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国王の話は長かった。
主な内容はクローディアの誕生日パーティーの件。
「分かっているのか? キーランとは戦争を行う。そうなればシャルロットは幽閉するのだぞ」
「国王、そもそもその戦争は必要なのでしょうか?」
「なっ、お前も我が国に現状は知っているだろう。起伏の多い土地ゆえ充分な食糧が賄えず輸入に頼っている。キーランの豊かな土壌は我が国の発展に必要だ」
「そうでしょうか。この国は貿易で潤っています。他国の土地を奪わなければいけないほど飢えてはおりません」
俺の意見に国王の眉がピクリと動く。しかし、それぐらいのことはもう気にならない。以前の俺は自分の意見を押し通す強さを持てなかった。いつまでも認めて貰えず自信がもてなかった。
でも今は違う。このまま前回と同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。
国王との謁見を終え、執務室に戻り疲れた身体をソファに投げ出した。途中からセオドアまで加わりさらに話は長引いた。二人は色香に迷わされたのか、国の利益はどうするのだと異口同音に俺を非難した。
しかし、シャルロットを盾に取り戦争を仕掛けるのは何があっても防ぐ。おそらく俺が舞い戻ってきたのはそのためだろう。
ソファの前にあるローテーブルには手紙が一通置かれていた。送り主をみて頭が痛む。
クローディアからの手紙には、誕生日プレゼントの礼とお茶の誘いが書いてあった。あそこまではっきり言ったのに、この手紙を送ってくるメンタルの強さにだけは賞賛に値する。おそらくセオドアの後ろ盾あっての強気だろうが、本当、やめて欲しい。
昨晩のパーティ。
「可愛すぎだろう」
思わず言葉にしてしまった。
夜空を思わせるドレス。いつも以上に扇情的な姿はそのまま部屋に閉じ込め、誰の目にも触れさせたくなかった。近づけば甘いバラの香りが鼻孔をくすぐる。今からシャルロットを連れてパーティーに行く。それは嬉しいような、悔しいような複雑な気持ちだった。
それにしても、いつの間にカインと親しくなったのだろう。二人でベンチに腰かけている姿を見た時は嫉妬で気が狂いそうになった。シャルロットにはもっと自分が魅力的だという自覚をもってもらいたい。
そしてシャルロットの優れたところは容姿だけではない。前回は気づけなかったけれど、彼女はとても聡明だ。
密輸に内通者がいたら――
なぜ、その考えに今まで至らなかったのか……もし、そうだとしたら、犯人は金の存在を知っていることになる。
その人物は限られている。金山で働く者は、半年はその山から出られないとあらかじめ説明した上で募っている。今のところ抜け出した者も密書の類も見つかった事はない。運ぶ者については荷の中身すら伝えてはいない。
(役人、高官……ある程度の地位と身分のある者)
彼らが絡んでいるとなると、慎重に事を起こさなくてはいけない。迂闊に動けば、自分だけでなくシャルロットにも危険が及んでしまう。
さて、どうしようかと何気に執務机に目をやれば、部屋を出る時になかった書類がある。部屋を出る時には必ず鍵をかけるようにしているし、先程も鍵を開けて部屋に入った。合鍵を持っている人物はいない。必要な時にザイルに貸すことはあるが今は俺の手元にある。
周りに潜んでいる者がいないか、剣に手をかけながら執務机まで進みその書類を手に取る。紙は数十枚にも及んでいた。その一枚に目を通し思わず息を飲んだ。
それは金の採掘量についての二重帳簿だった。つまり、この帳簿をつけた者が金の密輸に関わっており、おそらく首謀者となる。そして、この帳簿を作れる人間は俺の知る限り二人しかいない。
国王か宰相。あの二人のうちどちらか、もしくは両方が首謀者となる。
とはいえ、国王が密輸をするとは考えられない。なにせ独裁的な王だ。するなら隠す必要もなく大っぴらに輸出をすればよい。文句をいう人間は誰もいないのだから。
そう考えると宰相であるセオドアが首謀者と考えるのが妥当だろう。
念のため、今更ではあるけれど扉を開けて廊下を見るが、もちろんそこには誰もいない。
いったい誰がこの書類を部屋に持ち込んだのか。とりあえず気を落ち着かせ椅子に腰掛けた。
時間をかけて全てに目を通すと、最後の一枚にメモが書かれていた。
女とも男とも取れる癖のない文字で書かれていたのは
「隣国、ブグドアの動きに注視しよ」
ブグドア……頭に何かが引っかかった。
思い出さなければいけないのに、それは手の指をすり抜けるように形にならず散っていく。執務机に肘を突き頭をかかえ、すり抜けた破片を集めようとしていると、扉を叩く音がした。返事をすると、ザイルが入ってくる。手にはお茶を持っている。
素早く書類を引き出しにいれ、鍵をかけるとソファの前のローテーブルにお茶を置くように指示をした。
「お疲れのご様子ですね」
ザイルも金山について知っている。大方俺を説得する様に言われてきたのだろう。
「お前もシャルロットを妻とすることに反対か?」
「私はアルフレッド様の側近、味方ですよ」
優男はいつものように笑う。座るように勧めると、ではと言って俺の前のソファに腰掛けた。
「では何を言いにきたのだ?」
「アルフレッド様は国王に会われた時に何か気づきませんでしたか?」
「そう言えば顔色が悪かったな」
国王は来月初めから体調を崩し寝込みがちになる。そのことは思い出していたので、てっきりその前触れだと思ったのだが
「先程目眩がすると寝室にいかれました」
「! 主治医は呼んだのか?」
「はい。過労とのことです」
記憶では次第に身体が弱まっていき、一月、いや二月後には起き上がれない程になる。クローディアが毎日のようにやってきて、回復魔法を使って治療を試みたのだけれど、容態が回復することはなく、むしろ悪化していった。
シャルロットなら治せるかも知れない
淡い期待が脳裏をよぎった。
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次話ぐらいから話は少しづつですが、真相に近づいて行きます。
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