表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平穏無事な生活がしたい  作者: misuto
第1章ダンジョン編
9/33

1-8(16-18階層)

16階層へ降りる階段の途中2人には階段で「ここで待ってくれ」と伝えて俺一人16階層へ降りた。

16階層は地図にするとLの形をしている。

現在俺はLの上の部分。下へ行くと突き当りが17階層へ行くための階段が設置されている。そこを左に入ったところにこの階層にたった1匹いる魔物。階層主が隠れている。

白い照明に照らされた通路。通路には等間隔に大人が数人は入れる空間が作られている。

最初にある空間に身を隠し、<爆炎槍>を取り出してその時を待った。

地面を揺らす振動がだんだん近づいてくるのがわかる。

そしてその時が来た。目の前を光沢のある肌をしたワームが見えた直後。まじかで新幹線が通過したような轟音と風が襲い掛かる。

通路に隙間がなくなるほどの大きさのワームは15階層へと続く階段の入口まで進み、大きな音をたてながら衝突したことで動きを止めた。


(この時を待っていた)


俺は握っていた<爆炎槍>で動きを止めたワームを突き刺し、能力を発動する。

<爆炎槍>の刃先から生み出された爆炎がワームを内部から蹂躙する。

今度は普通なら消し炭になるような炎にさらされるが神龍甲冑が炎からのダメージを防いでくれる。ワームの断末魔が16階層に響き渡り、黒焦げになったワームは息絶えた。


「なんとかうまくいったな」


爆炎槍を下ろしてからガスマスクを取り出し、肺にしっかりと空気を取り込む。

神龍甲冑は炎を防ぐことはできても空気までは生み出せるわけではない。

ワームが焼死するまでの間呼吸を止めていた信は空気を吸いながら生きていることを実感した。

アイテムボックスの画面にはワームを倒すことで得られるアイテムは追加されている皇貨300枚。

聞いたこともない硬貨だ

1枚取り出してみるが材質がまるでわからない

水晶のように透明な硬貨には両面に金色の異なる紋章が彫られている。


(ダンジョンでお金を使うことがあるのかわからないがとりあえず入れて置こう)


念のためワームが潜んでいた通路へ行くと最奥に<神鉱石>という石が山のように積まれていた。

<神鉱石>:製錬すれば神鋼を取り出すことが出来る。


「聞いたこともないが、貰っておくか」


何か利用価値があるかもしれないとアイテムボックスへ入れた。

その頃にはガスマスクをつけなくてもよいぐらいには階層に酸素が戻ってきたので階段で待たせていた2人を呼んで先へと進んだ。



「信、唯の1匹も生かすなよ」

「そうよ。相手はしぶといから容赦してはダメよ」

「わかっている。終わったら戻ってくる」


2人から声援?を送られながら俺は17階層へ降りる。

17階層は暗かった。全てが黒一色に覆われていた。

その黒は“カサカサ”と音を立てて動いている。

見たくはないが俺にはその存在が良く見える。

長い触角と黒い光沢を持ち走るのが速い昆虫。

最後の段差から足を踏み出すと床に着く前にその昆虫を踏み潰し、“バキバキ”と階層全体に昆虫が潰れる音が響いた。

その瞬間。“カサッ”階層にいる昆虫が一斉にこちらを向いたように思えた。


(ここからが勝負だ)


これから俺と昆虫との戦いが始まった。

<ゴキブリ殺し>から団子を取り出す。団子の臭いが辺りに広がる。

17階層にいる魔物ゴキブリが一斉に視線を団子に集中したところで投げる。

放物線を描きながら空中を飛ぶ団子に合わせてゴキブリの視線も動く。

そして、団子が放物線の終着点に辿り着いた時、別の戦争が起きた。

ゴキブリとゴキブリの団子を巡る戦い。仲間であるはずのゴキブリ同士で相手を妨害し、自らが団子を食べようと争う。

俺は団子を投げ続けることで階層の各地でゴキブリ同士の戦いを起こさせた。

団子を食べたゴキブリは腹を見せた状態で死ぬ。

だが、死んだゴキブリの内側からも団子の匂いがするので死骸を別のゴキブリが食べる

そして、死ぬ。繰り返される死の連鎖。

次々と数を減らしていくゴキブリたち。

ゴキブリの数が減るにしたがって階層の白壁が露わになる。

ゴキブリの雄から金貨。雌から白金貨を手に入れた。

17階層にゴキブリの生き残りがいないことを2度チェックしてから2人を呼んだ。



18階層は大地の割れ目の中のような階層だった。頭上には青い空が見えることがよりそういった印象を持たせているのかもしれない。

ごつごつとした大きな岩が転がる道の先から3匹の軍隊アリがこちらへ気づいて近づいてくる。数センチほどであればよかったのだが体長は約2mともなると非常に迫力がある。


「ここは任せて」


咲良が前に出て<必中の毒弓>から猛毒の矢を射る。

矢は正確に軍隊アリの目に刺さり、体内に取り込まれた毒が全身に周ることで一瞬身体が硬直した軍隊アリはその場に崩れ落ちた。続けざまに射られた2本の矢も残る2匹の軍隊アリの目に刺さり最初の1匹同様に崩れ落ちた。軍隊アリがダンジョンに取り込まれて残ったアイテムは個人携帯用のロケットランチャー。


「これは信が使って。私には信がくれたこの弓があるから」


咲良から差し出された3本のロケットランチャー。


「ありがとう」


必中の毒弓を渡したお礼ということか。差し出されたロケットランチャーを受け取り、少し照れた表情の咲良が可愛かったので、感謝の言葉と共に頭を撫でるとはにかんだ笑顔を向けてくれた。


「次は私が倒そう」


階層を進んでいると再び軍隊アリと遭遇した。

薫が天光剣を抜きながら前に出ると光の剣によって一太刀で3匹の軍隊アリを倒した。




「私も信から刀と剣をもらったからな。これは信が使ってくれ」

「ありがとう」


差し出されたロケットランチャーを受け取り、感謝の言葉を述べると薫が何かを待ち望んでいるように感じたので先ほどの咲良同様頭を撫でるとはにかんだ笑顔を向けてくれた。

どうやらあっていたようだ。

それから俺はこの階層に来てから未だに武器を振るっていない

なぜかというと咲良と薫が交互に魔物を倒してくれるからだ。

だが、その度に感謝の言葉を述べて、頭を撫でる必要があるので少し疲れていた。


「ここか」


ようやく階層主がいる場所へ到着した。

階層の中央に位置するこの場所は円形にくり抜いたような広場となっている。

広場には全長10mの巨大な女王蟻が壁に背を預けながら卵を産んでいる。

生まれたばかりの白い卵は周囲にいる蟻達が口にくわえて女王蟻の横へ並べられる。

すでに無数の卵が並べられて、卵の一部から1m程の蟻が顔を出している。


「まだ気づかれていない。作戦通り薫と咲良は団子に反応して移動した蟻達の足止め、その間に俺が女王蟻を仕留める」

「わかった。信が手間取っているようなら蟻達を倒した私と咲良が応援に行く。だから無茶はするなよ」

「そうよ。神龍甲冑を着ているからって不死身ではないのだから」

「わかっている。無茶はしないよ。2人こそ油断するなよ。何かあったらすぐに俺を呼べ、死んでいても助ける」


本気で言ったのだが2人には笑われてしまった。

俺は<ゴキブリ殺し>の団子を女王から最も離れた場所に向って投げた。

団子の強烈な臭いを察知した蟻達は臭いの発生源を確認するため動き始めた。


「作戦開始だ」


俺達は広場へ通じる通路の1つから出て2手に別れた。

女王蟻の周辺には若干蟻が残っていたが刀で首を切り落とし、女王蟻の腹に飛び乗った。

女王蟻と視線が合うが俺は迷わず<爆炎槍>を取り出し女王蟻の腹に突き刺し、内部を炎で焼く。

悶え苦しむ女王蟻の鳴き声が広場に響き渡る。

腹が大きすぎるため腹の向きを変えることも足で信を振り落とすこともできずに全身を何もできずに焼かれ続けた女王蟻は死んだ。

手に入れたアイテムは<軍団の首飾り>。

<軍団の首飾り>:魔力1を消費することにより、自身の半分の力を持つ兵士を1人作ることが出来る。

人手を増やす意味合いで兵士を作ろうとしたが軍団の首飾りは何の反応も示さない。


(俺には魔力がないのか?)


現在使っている魔法はダンジョンの魔力により発動するため誰でも使うことが出来ると手に入れた情報にはあった。

だが、全くないのだろうか?それとも魔力が使えるようになっていないのか?

わからない。情報が足りない。

使えない軍団の首飾りをアイテムボックスへ入れてから、2人の援軍に向おう振り返ったが…すでに広場にいた蟻達は全滅していた。

2人に怪我は…無いようなので、女王蟻の両側に並べられた卵を<爆炎槍>の炎で焼いていく。生まれたばかりの蟻も全て。

卵と生まれたばかりの蟻からはロケットランチャーの弾が手に入った。

焼き終えた頃には薫と咲良もロケットランチャーの回収を終わらせていた。

2人から回収したロケットランチャーを受け取ってから「2人ともお疲れ様」と労いの言葉をかけた後、頭を撫でる。


「さて、ちょっと2人にしてもらいたいことがある」


周囲に魔物がいないため、軍団の首飾りを取り出して2人は使えるか試してもらう。


「使えないわね」

「使えないな」


2人にも使えないようだ。俺だけではなく薫と咲良も使えないとなると、もしかしたらダンジョンにいる間は使えないのか?


「使えないならしょうがない。とりあえずこのアイテムの事は忘れよう」


現状使えないアイテムの事を考えても仕方がない。

先へ進むとしよう。




お読みいただきありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ