↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他愛ないぼくら  作者: 木彫ダイナマイト


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
46/57

 世界で一番大きな集合体はきっと国であろう。土地、海、今となっては空までそれに属しているのだから。人の手の届かないところまで管理しようというのだから、なんと愚かしいことだ。この茜色に染まる空の意志すらわからない者に、どうして自分のものだと主張できようか。

 豪雨や干魃、地震や津波、豪雪、自分たちの管理下においているはずなのに事前に対処できない。その心がわからないから宥めることもできまい。きっと国はこう思っているのであろう、これはテロだと。国が自然を管理しようなどと大それた行為をしようとしていると考えた上でのテロだと。そして自然はこう思っているのだろう、これはテロール(恐怖政治)だと。人が欠伸をする、その程度のことでまるで災いのように扱う。その程度のことすら許されないのか、と。実に滑稽だ。

 このような国に属していないと生きていけないぼくも惨めなものだ。そう思うと、ぼくはこの世界からの逸脱する術を考える。目の前にいる彼女が一縷の希望であろうことを頼りに。

「栄生さん、国を興そう」

「よしきた」

 来ていないよ、止めてよ。ぼくの希望は止めてもらうことなんだよ。国を興す方向で考えないといけないのは面倒なんだよ。止めないにしてもせめて理由を聞いてよ。なんで即答で承諾してるんだよ。たぶんぼくの話聞いてないよ。助けを求めて伸ばした手を、しっかりと握って一緒に飛び降りるとは思わないよ。こうなったら栄生さんが無事に着地する方法を知っているという希望に縋りつく。

「じゃあぼくが希望するのは領土、領空、領海のない国なんだけれど」

「土地があることが国の定義なんだけど」

「それはわかっているんだ。それを承知で相談したんだよ」

「それは無理なんじゃないかな」

「意気揚々とした、よしきた、という返事を頂いたのですが」

「どうせ空想なんだからそっちの方が楽しいんだもの。でもどうして国を興すなんて、雨崎くんにしては行動的なことを言い出したのかな」

「簡単に言えば、領土などの言葉に管理の意味もあるけれど自然災害にはほぼ無力なわけだ。出来もしないことをと思うと、人間の傲慢さを感じたわけだよ。そうしてそれに属している自分もそうなんだなと思って」

「捻くったうえで自然と国を切り離すという、また極端なことをいうんだね。こんなことに希望を見出すより、まず規模を考えようよ」

「もう断られる前提で話を振ってみたんだよ、ぼくは。だから細部まで話さずに国を興すと言ったのに、不用意に栄生さんがイエスというから。こうなったからにはとことん突き詰めていいくしかないんだ」

 もう後戻りはできない。栄生さんも着地を考えてはいなかったのだから。こんな答えがわかりきった問答をする覚悟を決める。

「じゃあいくよ、栄生さん。ぼくの理想は遊牧民みたいなものだ。人と移動できる宿舎を国と定義することだ」

「それは無理があるよ。土地に入ると侵略と捉えられることもあるだろうし。それになによりも法の問題があると思うの」

「確かに。治外法権になるのか。しかし問題を起こさなければ」

「駄目だよ。まずその国の土地に居座るというだけで問題になり得るんだから。ホームレスと同じような状況になっちゃうからね。さらにその国の人じゃないわけでしょう。注意されてもされなくても問題。常にホテルを借りる生活じゃないといけないと思うの」

「そうか。それに今思えば、国が移動しているのだからパスポートなどもいらないのかもしれない。色々合法な法律をつくれば輸入輸出し放題じゃあないか」

「どうして問題を大きくしたがるかな。ただでさえ問題だらけなのに。そんなんじゃ国なんて興せないよ」

「その件は最初から諦めているんだよ。理想はあれど、どう足掻いても行き詰まることばかりだから」

 そう、土地に入る入らないだけではない。外交に於ける優位点もなし。収支なんてあったものではない。他国で労働するには就労ビザは必要ですか。なんにせよ終始問題だらけだ。というかただの国籍不明、無職なだけだ。

「雨崎くん、こうなったら国連に掛け合ってなんとかしてもらうしかないよ」

「見事な丸投げだね、栄生さん。栄生さんでも難しい問題もあるんだと知ったよ」

「こんなことに無理に決まっているじゃない。国連との交渉は雨崎くんに委ねるよ」

「さすが栄生さん、ぼくにも見事な丸投げだね。ぼくにも正攻法での交渉は無理だから、もう脅迫染みた交渉しか考えられないよ」

「もう新興国の国民を盾に・・・って国民はどれだけいるのかな」

「ぼくと栄生さんの二人だけだね」

「あらぁ雨崎くん、二人だけの国って結構ロマン感じることを言ってくれるんだね」

「ぼくは栄生さんのテロールに戦々恐々としているだろうけどね」

「そんな雨崎くんは国連に対するテロリストだよね」

「こんな状況にロマンを感じるかな」

「全然」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。