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マットなぼくとPPな彼女  作者: kats(仮)


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出会いと出逢い side IKU

地味な男の子とキラキラした女の子。

普段の生活からテリトリーの異なる二人が、気がつけばお互い気になるように。


※ 保険の為R15設定にしてあります。

 今日からまた新しい一週間がはじまる。

 貴重な朝の時間を無駄にしないよう日々ブラッシュアップしていった、必要最小限のルーティンをこなし、学校へ向かう。

 秋も終わりに近づいて、柔らかくなった朝日がぽかぽかと気持ちが良い。

 学校へと続く道には、まだ誰もいない。


 だってだって!

 先週末の土曜日、東雲(しののめ)くんと、かかか間接ききききき……っす、しちゃったんだもの!

 興奮しすぎたのか変な夢を見て、いつもより1時間も早く目が覚めちゃったのだ!

 そのままいつも通りに準備をしたら、当然いつもより早く家を出ることになったのだ!!


 それにしても……久しぶりにあの夢を見ちゃった。

 はじめて東雲くんと会った時の夢。




 私と東雲くんが出会ったのは、この学校の入学式の日。

 参加者が体育館に集まって整列をしている時、列のちょっと後ろで東雲くんが不良っぽい子と喧嘩をはじめたのよね。

 相手の子は体も大きくていかにもな感じだったけど、どう見ても東雲くんは揉め事を起こしそうな感じはしなかった。

 でも周りで見てた子たちが言うには、東雲くんの方が相手の子を呼び止めたって言うのよね。

 なのにどうしても東雲くんが絡まれてるようにしか見えなくて……。


 その時すぐ近くに、割れたメガネを持って蹲っている女子生徒がいたのに気がついたの。

 髪を2本の三つ編みにまとめて、とっても真面目そうな子。

 近くに先生たちもいなかったし、とにかく暴力沙汰になる前に喧嘩を止めようと、慌てて割って入ったんだっけ。


 話を聞いてみたら、まず不良っぽい子と女子生徒が人混みに押されてぶつかっちゃって、その勢いで女子生徒がかけていたメガネを落とした。

 その落としたメガネを不良っぽい子が踏んで壊しちゃったのに、ちゃんと謝らずに行っちゃおうとしたのを東雲くんが止めた。

 つまり東雲くんはその女子生徒のために、不良っぽい子と揉めてたのよね。


 うーーーー〜〜〜〜……今思い出してもかっこいい!


 その後ちょっとだけ情けないところもあったけど。

 ちょっとだけね!

 でも見ず知らずの女の子のために、めっちゃ怖そうな見た目の子を止めて謝らせようとするなんて、そんな人めったにいないよね。


 なぜか騒動が収まった時には、わたしの方が周囲のみんなから褒められたんだけど。

 でもわたしだけは東雲くんの良いところに気がついた。

 あの時からなんとなく気になるようになって、気がつくと目で追ってたりしたんだよね。


 この想いが《好き》って気持ちなんだって……気がつくのに時間かかったなーもーー。

 思い出し照れでくねくねしながら歩いてたら教室に着いちゃった。


「んんっ……!」


 くねくねになった気持ちを引き締めてから教室のドアを開けると、なんと、すでに東雲くんが席に座っていた。


「「あ……」」


 お互いに同時に口を開き。


「おはよう、東雲くん」

「おはよー、九重(ここのえ)さん」


 同時に挨拶をする。


 先週末の土曜日、ファミレスの帰り道、結局一言も話せないまま分かれたから、引きずっちゃわないか心配だったのよね。

 よかったー! 

 普通に挨拶してもらえた!

 くねくねしたまま入ってきたら危なかったね!

 と、とにかくまずは、土曜日のことを謝らなきゃ!


「あの……東雲くん。土曜日はごめんね。帰り道黙り込んじゃって。ちょっとあの……交際や結婚って聞いてはずかしくなっちゃって」

「あぁ、うん。ぼくの方こそ変に意識しちゃってごめん」

「東雲くんも意識してたんだ……?」

「あ……うん」

「「………」」


 きゃーーーー! ねぇ! 聞いた奥さん!?

 東雲くんも意識してたんだって!!

 って『も』って言っちゃってるじゃん、わたし!!

 気がついちゃった!?

 気がついちゃってるの!?

 どっちなの!?

 やーー!!


 でも少なくとも嫌われたり引かれたりしてなくてよかった!!

 せっかくだから今朝見た夢の話をしてみようかなーなんて思ってたら、廊下からがやがやと話し声が近づいてきた。

 他の生徒たちが登校してきたみたい。

 えーーもうそんな時間!?

 残念だけど、東雲くんと2人きりの幸せな時間はおしまい。

 問題なく普通に話せて、安心はできたけど……もっと話したかったな。




 その後は今日もいつも通り。

 授業を受けて、休み時間は委員の仕事をしたり、クラスメートの相談に乗ったり。

 やることが多すぎて、結局全然東雲くんとお話ができなかった。

 でもそうか……これがいつもの2人の距離感だったのよね。

 先週末は特別だったのかな。

 先週末だけで終わっちゃうのかな。


 そんなのやだやだ!!

 絶対一度きりでなんて終わらせないんだから!


 そんなふうに決意を新たにしていると……。


「おーい! 九重! 東雲! まだ残ってるか?」


 6時限目の授業が終わり、クラスメートもぼちぼちと帰りはじめたところで、開かれた教室のドアから担任の二階堂(にかいどう)先生が入ってきた。

 東雲くんの方を見ると、彼と目が合っちゃった!


 やーん!

 以心伝心!!

 これはもう好き合ってると言っても過言ではない!


「どうしたんですか?」

「いや、土曜日の事でな……2人を置いていくことになってしまって、本当にすまなかった」


 わたしの心がオーバーヒート寸前まで上がってメーターを振り切っているのに、東雲くんったらクールに先生を問いただしはじめた。

 ぷん!

 二階堂先生は土曜日先に帰ったことを気にしてたみたい。


 むしろベストムーヴ!

 完璧なアシストでした!

 ビバ! 先生!!


「全然気にしてません!!」

「またごはんをおごってもらえるなら、いつでも手伝いますよ」


 東雲くんはごはんがメインなの!?

 照れ隠しであれ!!


「お。じゃあ早速頼りにさせてもらうか」

「今から明日配布するプリントを、学年・クラスごとに分別しないといけないんだ。2人とも頼めるか?」

「いいですけど昨日の今日じゃ高いですよ?」

「じゃあ、わたしも!」

「おまえら……今日はもう昼飯は食っただろ。茶菓子で手を打ってくれ」


 またもや東雲くんとの時間を作ってくれるなんて、もう先生を超えちゃった!

 恩師!!

 二階堂恩師!!


「でも安心しろ! 今日は2人だけじゃないぞ! もう1人声をかけてある!」


 なにゆえーーーーーーーーっっ!?




 必要ない時に限って有能な二階堂先生に案内されたのは、教務室隣の進路相談室。

 委員会の雑務でよく使用する場所のひとつ。

 扉を開けると先に作業を進めている女子生徒がいた。

 女子……だと!?

 東雲くんに色目を使われたらどうするの!


「遅いです! 先生!」


 平均より小柄で元気そうな女の子。

 わたしたちが来るのが遅かったのかな?

 ちょっとご立腹みたい。

 怒っている姿が子犬みたいで可愛い。


 ちょっ……隣で東雲くんが食い入るように見つめてるじゃない!?

 小柄な子が好みだった!?

 わたしも平均よりはちょっとだけだけどちいさいよ?

 わたしにしとこ?


「……むぅ」


 全然こっちを向いてくれないじゃない。

 ぷんぷん。


「お。先に進めてくれてたのか、すまんな御厨(みくりや)。助っ人を追加したから勘弁してくれ」

「お菓子も忘れないでくださいね!」

「ちゃぁんと準備してある。安心しろ。卒業生からのお中元の残りが……」

「それ賞味期限大丈夫なんですか!?」


 わかるー。

 美味しいものには釣られちゃうよね。

 ちょっと親近感。

 でも賞味期限はちゃんと調べねばだね。


「じゃあ2人とも、端から順に1枚づつプリントを取って、左上をホチキスで止めていってくれ。あとは御厨が把握してるから」

「はーい」

「わかりました」


 簡単な指示だけ出して、二階堂先生は隣の教務室に繋がるドアから出て行った。

 全部わたしたちに押し付けたな。

 東雲くんさえいればいいけど。

 東雲くんだけで良かったけど。


「こんにちは、御厨さん? わたしは九重。彼は東雲くんよ。よろしくね」

「東雲です」

「御厨です」

「はじめまして、御厨さん」


 それはそれとして、もちろんちゃんと挨拶はする。

 お友達が増えるのはうれしいもんね。

 しかも可愛い女の子。


「……()()()()()()?」


 ん?

 東雲くんの挨拶何かおかしかった?

 御厨さんが不穏な感じでつぶやくのが聞こえた。

 そしてなぜか、作業を始めるために机に向かおうとした東雲くんの前に立ち塞がる。

 そのまま東雲くんの顔を見上げるように、顔を近づけ…ちょっと近すぎない!?

 東雲くんの顔を見ると、彼も戸惑っているのがわかった。


「あ、あの……何か?」

「はぁ……」


 東雲くんが声をかけると、大きなため息をつく彼女。

 東雲くんに声をかけられてため息をつくなんて……!

 平伏して足の甲にキスをすべきところでしょ!


「…………」


 なのにそのまま無言で東雲くんを見つめ続けている。

 だから近いってば!


「あの……御厨さん? 東雲くんがどうかした?」


 さすがに空気が重くなっている気がしたので、ちょっと間に入ってみる。

 でも彼女はこちらには見向きもせず、眉間にシワを寄せて東雲くんの目をじっと凝視し続けている。

 なんかこれってわたし邪魔者……?


 東雲くんも固まったまま、どうしていいかわからないみたい。


「……やっぱり思い出さないか」


 彼女の言い方だと、どうやら2人は知り合い…なのかな。

 怒っているわけではなさそう。

 どちらかというと気がついてもらえなくて残念そうに見える。


 御厨さんは東雲くんから離れ、窓際の椅子の上に置いてあったカバンを手に取ると、ごそごそと何かを探し始める。

 黒いシンプルなゴムを取り出すと手慣れた感じで髪を三つ編みにし、目からコンタクトをはずした。

 代わりにミクブルーのメガネケースから、ずいぶん度の強い、分厚いレンズのメガネを取り出した。

 でもレンズが片方割れてるみたい。


「こ、これならわかり……ますか?」

「以前……は、お化粧もしていませんし……スカート……も、校則で決められた長さ……でした」


 校則で決められた女子の服装の見本みたいな姿になると、再び東雲くんの目の前まで歩いていく。

 話し方もさっきまでと違って、気が弱そうな雰囲気に変わっている。


「……地味」


 って、こら東雲くん!!

 女の子に対してなんちゅーことを!!

 さすがにだめ、ぜったい!!


「うっさいわね! わかってるわよ!」

「だから変わったの!」


 ほら怒られた。

 話し方も元に戻ったわね。

 ……変わった?


「あ! そのメガネと三つ編み、入学式の時の……!!」


 御厨さんが誰だかわかった瞬間だった。

 彼女はいきなり東雲くんに抱きついて……!!!


「「なーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!??」」


 放課後の進路相談室に、わたしと東雲くんの驚く声が響いた。

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