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消せない  作者: ココ
14/15

悪女寝かしつけられる


・・・数学準備室。

結衣子はソファに座りテーブルを挟み向かい側に神崎が座っていた。


「・・・なんですかこれ。」

結衣子は目の前に置かれた湯気を出しているコップを見つめ言った。


「ホットミルク。」

神崎は長い脚を組み、書類に目を通しながら言った。


「・・・。」

それはわかっている。と言いたげな目で神崎を見つめる。


「いいから飲めって。」


「・・・用件はなんですか。」

ホットミルクには手を付けず、用件をうながした。


「ん?これ。」

神崎はホットミルクを指さした。


「・・・帰ります。」

結衣子はスッと立ち上がり出て行こうとした。


「おーい、待て待て。」

神崎は横を通りすぎようとする結衣子の前に足を出し道をふさいだ。


「わざわざ呼び出した用件がホットミルクでは帰りたくもなります。」

結衣子は眉を潜め言った。


「おいおい、ホットミルクを馬鹿にすんな。夜眠る前に飲むとよく眠れるんだぞー。」


「・・・気づいてたんですか。」

結衣子は神崎が自分を呼び出した理由がわかった。寝不足だと気付かれていたのだ。


「そりゃあな。そんな顔色してたらわかるっつーの。」

ため息をつき結衣子を見上げ言った。そして結衣子にソファに戻るよう言った。


「化粧でごませると思ったんですが。」

結衣子は素直にソファに戻り座った。


「ごまかせてねぇよ。まあ、大半のやつはわかんねぇだろうけど。」

書類をテーブルに置き、結衣子を見た。確かに綺麗に隠している。だがよく見ればすぐにわかる。


「・・・そうですか。」

結衣子は自分の顔を触りながら言った。


「・・・とにかく飲め。冷める。」

納得いってなさそうな結衣子を見ながら再度ホットミルクをすすめた。


「・・・いただきます。」

せっかく作ってくれたのだから、と思い結衣子は今度は素直に飲んだ。


「それ飲み終わったらそのソファで寝ろよ。」


「はい?」

結衣子はなにをいうんだ、と神崎を見つめ返す。


「わかったか?」

確認するように神崎は繰り返した。


「結構です。大体授業が・・・」


「先生達には俺がもう伝えておいたから。」

にやっと笑いながら言った。


「用意周到ですね。」

少し不機嫌そうに結衣子は言った。


「こうでもしなきゃ休まねぇだろ。」

ふんっと、鼻で笑いながら言った。


「・・・。」


「飲み終わったか?んじゃ寝ろ。そこの毛布使っていいから。」


「結構です。帰ってから寝ますから。」


「それを信じると思ってんのか。いいから今寝ろ。今。寝るまでここからださねぇからな。」


「・・・はあ。」

ため息をつき結衣子は仕方なく横になった。すると神崎が毛布をかけてくれた。


「さあ寝ろー。」

言うことを聞いた結衣子に気を良くし、笑顔で言った。


「もしかして先生も眠れない夜はホットミルク飲むんですか。意外です。想像すると笑えますね。」

結衣子は得意げな神崎に少しイラッとしたのでそう言いからかった。


「うるせぇ。俺じゃなくて妹だよ。妹が寝れないときよく作ってやってんだ。」

再び書類を手に取りながらそう言った。


「・・・大事にされてるんですね。」


「あ?当たり前だろ。妹なんだから。」


「・・・。」

当然のように言った神崎に結衣子は黙った。


「どうした?」

突然静かになった結衣子に神崎は不思議に思った。


「・・・もし神崎先生の妹さんが誰かに傷つけられたとしたら、どうなさいますか?」

結衣子は静かに口を開き神崎に問いかけた。


「・・・。」

急な質問に神崎は驚き書類から結衣子へと視線を移した。


「・・・。」

結衣子は黙って神崎の答えを待っている。


「・・・想像したくもないな。ただ、もしそんなことがあったら妹を傷つけたやつをぶっ殺してやりてぇと思うな。」


「・・・そうですか。」

結衣子は静かに言った。


「なんでそんなこと聞くんだ?」


「いえ、ただ少し気になっただけです。」


「ふーん。お前は兄弟といないの?」


「いません。」


「そうなのか。」


「はい。」


「ま、とりあえず寝ろ。」

話が途切れたところで神崎は結衣子の頭をぽん、とたたきそう言った。


「いたっ。・・・先生って変ですね。」

たたかれた頭をさすりつつ結衣子は神崎に言った。


「あ?」


「変です。私の知ってる先生はそんなふうに私の頭たたいたり、失礼なこと言ったりわざわざホットミルク作ったりしませんでした。」


「まあ、そうだろうな。」


「でも、結構良いものですね。」


「は?」

何言ってんだ?と結衣子の方を見る。


「なんか、お兄様が出来たみたい・・・。」

嬉しそうに笑う結衣子。


「・・・。」

その笑顔に思わず見惚れてしまう神崎。


「・・・・。」

結衣子は限界だったのかそのまま寝てしまった。


「・・・なにこいつ、可愛いんだけど・・・。」

思わず顔を赤くしてしまう神崎だった。


コンコン

誰か来たようだ。

「はい。」

神崎は赤くなった顔をあおぎ返事をした。


「失礼します。」

ガラッ

入ってきたのは一条洸だった。手にはたくさんのノートを持っている。そういえば日直に放課後クラス分のノートを持って来いと言ったんだ、と思いだした。


「ああ。一条が日直だったのか。ここのテーブルに置いてくれ。」


「はい。」

一条は教室へと入りテーブルの上にノートを置いた。


「ごくろうさん。」


「・・・。」

一条が黙って何かを見つめている。神崎は結衣子のことを思い出し慌てて結衣子へと視線を向ける。しかし、幸いなことに寝返りをうったのか顔は見えない。

この二人の仲の悪さを知っているため、神崎はホッと息をついた。


「ああ。この子少し寝不足でな、保健室に空きがなかったからここで寝かせてるんだ。」

神崎は一条に向かってそう言った。


「そうだったんですか。」

神崎はさほど気にした様子もなくそう言った。


「・・・あ。」


「神崎先生?」


「・・・やっべー。忘れてた。」

神崎は他の先生に頼まれていたことを思い出した。さほど時間はかからないものの今からやりにいかなければならない。しかし、このままここに結衣子を一人置いていくのも気が引ける。


「どうかしましたか?」

一条がそう聞くと・・・。


「・・・悪い。一条。このあと用事あるか?」


「いえ、特には。」


「・・・いや、でもやっぱりこの二人はまずいか・・・。」


「先生?」

ぶつぶつと言っている神崎に一条は怪訝な顔をする。


「いや、仕方ないよな。寝てるし、俺もすぐ戻るし・・・うん、大丈夫だろ。・・・一条!!」

顔をふかせ考え込んでいた神崎だが、ガバッと顔をあげガシィッと一条の肩を掴んだ。


「な、なんですか。」

すごい勢いの神崎に困惑しながらも一条は聞いた。


「悪いがここにいてくれないか。俺が戻るまででいいんだ。そんなに長い間じゃあ無い。一応寝ている生徒を一人にするのは気が引けてな・・・。頼まれてくれないか?」


「ここに、いるだけでいいんですよね?」


「ああ。それだけだ。」


「わかりました。大丈夫です。」

一条は頷いた。


「ありがとな!急いで戻ってくるから。」

そう言い、神崎は教室を出て行った。


・・・数学準備室に残されたのは一条と寝ている女性とだけだった。

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