悪女の忠告
部屋に戻ってきた二人だったが、なんとも気まずい雰囲気が流れており沈黙がただよっていた。
楓はせわしなくうろうろしたり時折結衣子をちらちらと見ていた。
結衣子は黙々と整理を再開していたが、しばらくしてようやく口を開いた。
「・・・軽蔑したかしら?」
「え?あ、だ、大丈夫だよ!きっと!結城くんも橘くんも結衣子ちゃんのこと・・・」
やっとしゃべった結衣子に楓は慌てて返した。
「二人じゃなくて、楓よ。」
「へ?」
「楓は私を軽蔑した?」
楓の目を見て真面目な顔で聞いた。
「結衣子ちゃん・・・。」
「変なこと聞いてごめんなさい。軽蔑されて当然よね。明日部屋を変えてもらうわ。」
結衣子は楓から視線をそらした。
「ゆ、結衣子ちゃん!」
慌てて楓は結衣子をとめた。
「大丈夫。朝一に変えてもらうわ。今晩は同じ部屋で過ごさなければいけないけれど我慢してね?」
「結衣子ちゃん待って!聞いて!」
全く目を合わしてくれない結衣子の腕をつかみ楓は言った。
「・・・なあに?」
それでも結衣子は楓を見ない。
「私、軽蔑なんかしてない。驚きはしたけど軽蔑なんかしてないよ。」
結衣子にきちんと伝わるように楓は言った。
「・・・楓。」
その言葉を聞き、ようやく結衣子は楓を見た。
「私ね、結衣子ちゃんと今日会ったばっかりだけど結衣子ちゃんのこと大好きになったの。今日聞いた話は良いことだとは思わない。私には理解できないし、あの話に関しては好意は持てない。でも、私にもわかんないけど、たぶん今日結衣子ちゃんを好きになった分をさっき聞いた悪い話が超えてないんだと思う。だから、私軽蔑してないし結衣子ちゃんから離れたいとも思わない・・・んだと思う。」
「・・・。」
「ごめん。私にもよくわかんない。でも結衣子ちゃんのこと軽蔑してないのは本当だよ?」
「・・・でももしその私を好きな分っていうのを悪いことが超えたら、楓は私を嫌いになるのね?」
「たぶん、そう。」
「じゃあ、すぐ嫌いになると思うわ。」
結衣子は楓からまた顔をそむけた。
「わかんないよ。そんなの。」
楓は首をふった。
「わかるわ。」
「わかんない。だってまた明日結衣子ちゃんを好きになる分はきっとたくさん増えるもん。」
「・・・わからないじゃない、そんなの。」
「わかるよ。」
「・・・。」
自信満々に言う楓に結衣子はなにも返せなかった。
「はい!もうこの話おしまい!ほら!もう寝よー!そんで明日からもよろしくね!」
ずっとつかんでいた結衣子の腕を離し楓は笑顔でそう言うとベットに入った。
「・・・後悔しても知らないわよ。」
結衣子はベットに入った楓に向かってそう言った。
「・・・おやすみー!」
楓は聞こえないふりをして布団をかぶった。
「・・・忠告はしたわよ。」
ぼそりと言った結衣子の言葉は楓には届かなかった。




