王直属護国騎士団《金暁騎士団》
この歳月の中で、ゴルダンにはひとつの“顔”ができていた。
それが、騎士たちだ。
石畳を進むたび、街の空気が変わる。
店先で談笑していた者たちが姿勢を正し、荷を運ぶ者たちは道を空け、子どもたちは目を輝かせる。
中には、胸へ手を当てて祈る者すらいた。
憧れ。
畏れ。
尊敬。
嫉妬。
そして、自分もいつかああなりたいと願う眼差し。
ゴルダンの街を通るたび、人々はその騎士たちを見上げた。
神々しく。
勇ましく。
誇り高く。
彼らは、ただの守衛ではない。
リオの国直属の騎士団。
そして同時に、アーゼル・エルディア王直属の王騎士団でもある。
王が絶大な信頼を置く者たち。
リオの国よりも先に王国の危機へ駆けつけ、最初に剣を抜き、最初に壁となる者たち。
その名は――
王直属護国騎士団《金暁騎士団》
総勢三十を超える編成。
その頂に立つのは、たった五人。
《五暁》
さらにその下に四段階の列を持ち、街を守り、外を見張り、戦時には一瞬で戦列へ変わる。
だが、そんな金暁騎士団の者たちが、
街の誰もが讃えるその騎士たちが、
ただ一つだけ、迷いなく膝をつく相手がいる。
リオ。
そして、オルビス・ノヴァの面々。
さらに幹部たちと、第一部隊。
この2年の中で、第一部隊にも自然と名が定まっていた。
誰かが最初に呼び始めたのか。
それとも、戦いの中でそう呼ばれるようになったのか。
今となっては、もう誰も覚えていない。
ただ、誰もがそう呼ぶ。
第一部隊《黎牙》
若く。
荒く。
それでも確かに、国の最前列で牙を剥く者たち。
そして、その黎牙の長へ君臨するのは――
魔創ヴァイス
魔創グローダ
そう。
ヴァイスもまた、この2年の間に覚醒を果たしていた。
かつての魔神は、もはや魔神のままでは終わらない。
リオの国の広がりと共に、彼女もまた位階を変えたのだ。
街の中央通りで、《金暁騎士団》が整列する。
五暁を先頭に、暁刃、金盾、星槍、新翼。
整いすぎたその隊列は、まるで街そのものがひとつの剣になったかのようだった。
その前へ、リオたちが現れる。
一拍の静寂。
そして次の瞬間。
ざっ――
金暁騎士団が、一斉に膝をつく。
街の人々が、息を呑む。
憧れの騎士たち。
神々しく、勇ましく、王すら信頼を寄せるその騎士たちが、
いま目の前で、ただ一人の王と、その仲間たちへひれ伏している。
その光景は、ゴルダンの民にとって何より雄弁だった。
誰がこの国の中心なのか。
誰がこの国の未来なのか。
言葉より早く、景色がそれを教えていた。
タオーが、小さく呟く。
「……やっべえ」
グラーも、今日は茶化さない。
「ええ」
「これは、ちょっと……やばいわね」
レインは、少しだけ目を細める。
2年。
たった2年。
されど、濃すぎる2年。
あのグレイランだった場所に、
いまこれほどの騎士団と、秩序と、憧れが生まれている。
そしてその先で、第四地区はすでにほぼ形になっていた。
余っている土地もある。
なら、次に必要なものも、もう見えている。
レインの視線が、街の外、そのさらに先を向く。
闘技場。
魔術、剣術、異能、スキルを学べる大型の練習場。
第一部隊《黎牙》の連携と強さを、さらに底上げする場所。
次に作るべきものが、もうはっきりしていた。




