表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
外れスキルの【停止時能力向上】実は世界最強でした〜夢記録に刻まれた800年の真実〜  作者: 滝本りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

172/267

王の2度目の来訪。

久しぶりに小さな城へ戻った一行は、ようやくひと息ついていた。


第二地区の外。

王都での交渉。

ゴルダンの帰属。

国名の決定。

ここ数日、あまりにも多くのことが一気に動きすぎていた。


小さな城の広間には、いつもの空気が戻っている。


ヴァルは酒を片手に機嫌がいい。

ザルクスは椅子へだらしなくもたれかかっている。

リュメリアは呆れた顔をしながらも、どこか少しだけ肩の力を抜いていた。

ノアは静かに控え、アヴニールは窓際で外を眺めている。

レイン、ミア、タオー、グラー、ヴァイスたちも、それぞれようやく落ち着いた顔をしていた。


「……なんか」

タオーがぐったりした声で言う。

「濃すぎなかった?」

「何が」

と、グラー。


「全部」

「第二地区の外も、王都も、ゴルダンも、国の名前も」

「ちょっと数日でやる量じゃないって!」


「それはそう」

と、レイン。


リオは小さく笑った。


「でも、やっと少し落ち着いたな」


その時だった。


こん、こん。


扉を叩く音がする。


広間の空気が、わずかに変わる。


タオーが首を傾げる。


「誰だ?」

「この時間に?」


ノアが静かに立ち上がる。

だが、その前にザルクスが「俺が出る」と手を振りかけたところで、リオが先に扉の方へ目を向けた。


「……開けてみよう」


がちゃ。


扉が開く。


そこに立っていたのは――王だった。


しかも、一人ではない。

側近と護衛を複数従えている。

だが、その顔ぶれは“威圧のため”ではなく、“正式な来訪”のためと分かるものだった。


「なっ……」

タオーが飛び上がる。

「王!?」


グラーがすぐに背筋を正す。

ミアも、ヴァイスも、一気に立ち上がる。


リオも、さすがに少しだけ慌てた。


「へ、陛下……?」

「どうしてここに……」


王は、そんな一同を静かに見渡したあと、小さく笑った。


「突然すまない」

「だが、今日は使いを出すより、私自身が来るべきだと思った」


その一言だけで、空気がぴんと張る。


王は広間の中央まで進み出る。

護衛たちもそれ以上は前へ出ない。


そして、まず最初に言ったのは――謝罪だった。


「ゴルダンの件だ」


リオの表情が変わる。


王は、そのまま続ける。


「最初から承知していたことでもある」

「だが、王都の場では周囲の者たちが、失礼な態度を取った」

「まずはそれを詫びたい」


そのまま、王は本当にわずかに頭を下げた。


広間の全員が息を呑む。


タオーが、ほとんど声にならない声で呟く。


「……王が、頭下げた……」


リュメリアの目も、少しだけ細くなる。

ノアは静かに目を伏せた。

ラルラゴでさえ、その一瞬だけ王をまっすぐ見ている。


王は顔を上げた。


「むしろ私は、あの提案を受ける前から」

「いずれ自らここへ赴くつもりではあった」

「遅くなったことも含め、すまない」


リオは、少しだけ息を整えてから言う。


「……頭を上げてください」

「俺たちは、もう受け取ってます」


王は静かに頷いた。


「ありがとう」

「では、その上で話したい」


広間に椅子が整えられる。

だが王は、座る前に言葉を続けた。


「ゴルダンの件」

「一旦、あの時の提案は保留にしたい」


タオーが目を丸くする。


「え?」

「保留?」


リオも、王をまっすぐ見返す。


「……理由を伺っても?」


「当然だ」

王は頷く。

「簡単だよ」

「今のゴルダンを、ただ“お前の領地”とするだけでは足りなくなった」


場が静まる。


王の声音は落ち着いている。

だが、その中身は重かった。


「ゴルダンは今や、人も物も、金も、思惑も集まる場所だ」

「そしてこれからは、王国を支える盾にも、槍にもなりうる」


一拍。


「だから、頼みたい」


王の視線が、リオへ真っ直ぐ向く。


「ゴルダンに武力を与え、強化し」

「王国を守る手助けをしてほしい」


その言葉に、騎士団たちの目も変わる。


リオが、ゆっくり問う。


「……武力を?」

「そうだ」

王は頷く。

「リオ殿が決めた者たち」

「その者たちは、リオ殿直属の団とする」

「そして、王が認める直属の王騎士団としての地位も与える」


「……王騎士団?」

と、グラー。


「うわ」

と、タオー。

「急にすごい話になってきた」


サイラスが、低く息を吐く。


「王が、そこまで出すか」


王は続ける。


「その代わり、たった一つだ」


静かだった。

だが、その静けさの方がずっと重い。


「この国を守ってくれ」


その一言で、広間の空気が変わった。


もうこれは利権の話でも、領地の話でもない。

国そのものの話だ。


王が、王として頼んでいる。


ノアが、静かにリオを見た。

ラルラゴも、アヴニールも、ザルクスも、ヴァルも、誰も先に口を挟まない。

決めるのはリオだと分かっているからだ。


王は、さらに続ける。


「今後のゴルダン発展も、リオ殿の国に任せる」

「この小さな城も、引き続き好きに使ってよい」

「必要なら、さらに支援も出そう」


レインが少しだけ目を細める。


「……本気だな」


「本気だ」

と、王。


そして王は、最後にもう一段深い話を置いた。


「近く、協定を結んだ隣国の王と対談がある」

「その時に正式に、国の王として」

「リオ殿と、その者たちを招待したい」


部屋の空気が、また一度張る。


「国交と協定を結ぶのだ」

「アストラ・エクリプス王国として」


その言葉に、ミアが小さく息を呑む。

ヴァイスの目も静かに揺れる。

グローダは表情を変えないが、気配だけが少し深くなる。


王は、リオを見て言う。


「リオよ」

「私は君たちを、全力で応援する」

「支援する」


一拍。


「だからどうか」

「この国を、共に守ってほしい」


沈黙。


広間にいる全員が、リオの言葉を待っていた。


リオは、しばらく何も言わなかった。


ゴルダン。

第二地区。

第一地区と第三地区の拠点。

第五地区の城。

第一部隊。

幹部。

王騎士団。

そして、アストラ・エクリプス王国。


全部が、今この瞬間ひとつの線へ繋がろうとしている。


やがてリオは、ゆっくり立ち上がった。


「……受けます」


その声は、静かだった。

でも揺れていない。


「ゴルダンの発展も」

「この小さな城も」

「王騎士団の地位も」

「全部、受ける」


王が、深く頷く。


リオはそのまま続ける。


「その代わり」

「俺たちは、俺たちのやり方で守る」

「作る」

「育てる」


「それでよい」

王は即答した。


「むしろ、それを望んでいる」


その瞬間、広間の空気が、ようやく動いた。


タオーが小さく「うわあ……」と漏らし、グラーに肘で黙らされる。

ヴァルは静かに笑い、ザルクスは「いい顔になってきたな」と小さく呟く。

ノアは目を伏せ、アヴニールはゆっくりと微笑んだ。


王は最後に言った。


「では、近いうちに正式な使いを出そう」

「その時は、国の王として来てくれ」


リオは、深く頷いた。


「わかりました」


小さな城。

その仮初めの広間で。


王は、自らの国の未来を、もう一つの国へ託した。

そしてリオたちは、ついに“守る側”として正式に立つことになったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ