鉄道連絡島嶼航路 中
キエシャ辺境伯領の航路視察は、実に有意義なものだった。
と言うのも、我がヤマシタ公爵領は内陸領なので、食べられる魚は近くの川で採れた川魚が基本。地球から持ち込んだ本を使って、それらを美味しくいただけるのは良いとしても、やはり海のものも食べたくなる。
ちなみに、地球から持ち込んだ本に書かれた調理法で、この世界では食用でなかったウナギとかが食用魚に昇格するという、異世界作品アルアルを見られた。
ついでに、この世界でも生魚(刺身)を食べる習慣は全く無かったけど、うちの妻のアイリが魔法で殺菌剤を作ってくれたおかげで、我が家限定だが食べられるようになったのも、日本人の自分にとっては僥倖だった。
で、それはそれとして、キエシャ伯爵領沖合のトーオ諸島にも赴いたが、これが実に有望な島々だった。
と言うのも、今まで本土側とは不安定な交流しか出来ず、島の産業と言えば小規模な漁業と畑作くらい、すなわち大した産業がなかった。当然、人口が増えるはずもなく、島々にあるのは零細な漁村だけ。
しかし、蒸気船の投入で本土との交流が活発した結果、島の人たちの生活は大いに豊かになっているという。これまで島の中でしか消費するしかなかった産品を、本土に輸出できるようになり、逆に本土の製品を買いやすくもなった。それどころか、本土側から行商人が逆に上陸し始めたとのこと。
それに伴い、島に今までなかった宿を始める者や、商店を始める者が出てきたらしい。
そうした新しい経済活動は、まだ始まったばかりで、そこまで大規模ではない。実際俺たちが泊まった宿も、島に初めて出来た10人以上の集団が泊まれる旅館と言うべきものだった。
それでも、傾斜面を使った柑橘類の栽培に、波が穏やかな内湾を利用した養殖など、次々と新しい事業が興っている。
で、そうした農水業も有望なんだけど、俺としては島に手つかずで残る自然や風景が気に入った。
当然だ、これまで貧乏故に開発が行われず、自然がほぼそのまま残されているんだから。特に、海の透明度は溜息が出るくらいだ。
本土側では生活排水の流れ込みで不可能なマリン・レジャーも、ここなら出来る。
もちろん、入り込みの人数や開発に枷をしないと、無残にも壊れてしまう。
そこで、トーオ諸島の中でも特に人口が少なく、開発の影響が少ない島を探してみると、あった。
諸島で一番東、すなわち本土から離れたアオフ島だ。面積が一番大きく、波の静かな内湾を有する島なのだが、本土や他の島からの距離があるゆえに、さらに内湾に入るための海域に潮の流れが速いところがあり、入植されなかったそうだ。当然無人島。
早速馬力のある蒸気船を仕立てて内湾から上陸すると、リゾート地とするのにピッタリな島だった。
その後の調査でも、危険な動物もなく開発可能という結論が出た。
俺は早速キエシャ辺境伯に、島の開発権の購入を申し出ると、あっさりと受理された。
伯としても持て余していた島なので、むしろ金が入ってラッキー程度の考えらしい。
こうして、アオフ全島を我がヤマシタ鉄道が観光地として開発することとなったのである。
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