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鉄道連絡島嶼航路 上

 ヤマシタ鉄道南部線。キエシャ辺境伯領の領都バトに乗り入れたこの路線は、開業以来貨客共に右肩上がりの成績で、それに伴い各種設備と運行本数が、ダイヤ改正の度に繰り返されている。


 そんな南部線の、路線延伸が行われたのは開業から5年が経った頃。バトの中央駅から、バト港駅までの区間が開通したことによる。


 この路線の建設に至った理由は、2つある。1つは路線開業時に吹き出した、バトを発着する航路への梃子入れと、そしてもう一つは俺自身の親馬鹿によるが、まずは前者の状況から説明しよう。


 バトを発着する沿岸航路は、かつて王都など他都市と結ぶ最短の移動手段だった。それゆえに、貨客共に独占的な利益を享受していた。


 しかし、輸送力は劣るものの速達性に定時制、快適性等で優れるうちの鉄道が開通したことで、ヒトモノが一気にうちの鉄道に流れ込んでしまった。


 さすがに貨車に乗らない大型物品などは未だに船便だが、それ以外のシェアは「圧倒的じゃないか、我が鉄道は!!」状態だ。


 結果零細の船会社は次々と潰れるか大手に吸収され、残る会社も鉄道では運べない大型貨物や、海外航路、それからバトから少し離れた海域に散る島嶼への連絡便だけとなっている。


「さすがに、何とかしてくださらない?」


 疲れ切ったキエシャ辺境伯に呼ばれたのは、鉄道開通1周年を祝う社内祝賀会参加のために、バトを訪れた時だった。


 どうやら鉄道敷設許可を出したことで、商船組合から突き上げを食らっているとのことだった。


 さすがに申し訳ないので、とりあえず潰れかけの会社をいくつか買収・統合して経営再建開始。


 王都の工部省や経済省、さらには海軍省と協議して、商船の体質改善を始めた。これまでの木造船を鉄船とし、さらに帆装から蒸気機関に。


 新造船を既に建造経験のある造船所に発注する。しかも、建造速度を上げるため、大中小、貨物、貨客、旅客で規格型にして、とにかく1日でも早く、1隻でも早く揃えられるようにする。


 乗組員も手始めに中古船2隻を導入して、まずはこれで人員訓練。半年後、竣工を始めた新造船に乗せて経験を積ませ、習熟したところでさらに新人を入れて教育と・・・このサイクルでどんどん新造船を増やしていく。


 さすがに1年や2年で全部とは行かなかったが、公爵(勇者)特権で海軍や商船学校から人を出してもらって教育を急がせた結果、バトの港は蒸気船の煙突と煙が目立つまでになった。


 そしてこの蒸気船の恩恵にあずかったのが、バトから少し離れた沖合の島々だった。


 これらの島々は、これまでは基本的に帆装の船で結ばれているだけなので、本土側のバトを始めとする街々との連絡は不便極まりなかった。当然、発展からも取り残されていた。海賊対策に辺境伯領から幾ばくかの援助はあったが、零細漁村がいくらかあるだけだった。


 ところが、蒸気船の導入で速度と定時制が拡大に上がった結果、ヒトモノカネの流れが活発になった。


 それらの島々で採れた魚介類、珊瑚、農作物が本土側で売れるようになり、人と物の往来は活発になる。必然的にバトの港も活気づく。


 この状況を確認するため、俺はバトの港と沖合の島嶼、トーオ群島を視察することにした。時に、南部線開通から3年後のことだ。

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