鉄道模型を広げよう 下
「おお!いいじゃん、いいじゃん!!」
俺は職人たちが持ってきた、鉄道模型の試作品を見て、目を輝かせた。
今回完成したのは、動力を仕込んだ蒸気機関車に、トレーラーとなる客車や貨車、そして走らせるための運転機器と、レール一式だ。
車両の車体は木製で、小さいけどよく作りこまれていて、これなら売り物になると太鼓判が置ける出来だ。
とは言え、外見だけはどうにもでなる。走らないと意味がない。
早速、運転機器とレールを繋ぎ、車両をレールの上に置く。なお、動力は電気で、現代日本ではお馴染みのレールから集電する方式だ。
だから鉄道模型趣味を広げるのと並行して、各地で発電所や送電網の売り込みも図っている。今は初歩的な火力や水力発電だけど、これもそのうち規模を拡大する必要があるな。
と、思考が逸れた。
「うん、悪くない。これなら、充分売り物にできるな」
「ありがとうございます」
代表してトセ鉄道模型製造の、オウオ社長が頭を下げる。元々は鉄道部門の経理、とくに駅舎内に出店する売店やレストランの監督をしていたのと、さらに以前は商会で働いていた経験もあったので、今回抜擢した人物だ。
もちろん、事前面談で金勘定だけでなく、鉄道への興味があるかないかもポイントに選んでいる。なお、彼の場合は絵画鉄(鉄道の絵を描くのが好き)だ。
「値段はいくらくらいになりそうだ?」
「はい、こちらに」
オウオが見積もり表を差し出してきたので、ざっと眺める。
わかっていたが、やはり高い。とても庶民に売れる代物ではないが、そもそもが富裕層をターゲットにしている商品なので、これは許容範囲だ。
「うん、値段はこんなもんだろう。量産はどの程度を見込める?」
「今の人数でしたら、車両、レール、運転機器のトータルセットを、1週間に1セットというところでしょうか。手慣れれば、5日に1セットにできるかと」
「わかった。とりあえず、これで量産に入ってくれ。営業は基本的にそっちでやってもらうが、こっちもできる限り協力する」
「お願いいたします。王族や貴族への売り込みとなれば、我々の手には余りますので」
「そうだね。もっとターゲットを広げようとすれば、この半分の値段でないと無理だろうな」
「それでも、充分高価ですが」
「まあね」
現状では、購入できるのは王族や貴族、商人の中でも突出して金持ちだけだ。これを現代日本のような、庶民の趣味としてまで広げるならば、さすがに大量生産可能な工業機械や、石油由来の原材料が必要になる。さすがにそれは、あと100年は掛かるだろう。
今は、とりあえず鉄道模型という趣味ジャンルを開拓するところからだな。
あ、あとそれから。
「トセ中央駅の待合室への設置もよろしく頼むよ」
「わかっております」
宣伝と乗客への娯楽も兼ねて、トセ中央駅とバトの駅の待合室に小さなレイアウトを設置予定。
このレイアウトは、基本的に職人に設計から設置まで任せることになっている。俺が口だししても良いけど、それでは後が育たないし。
この世界の人が、一からどんなものを作り上げるのか、楽しみでしかたがない。
御意見・御感想お待ちしています。




