鉄道模型を広げよう 中
職人の世界は厳しい。教育機関の整備が不十分なこの世界では、基本的にどこかの職人の工房に弟子入りし、そこで技術を身につけ独立するという流れが一般的だ。
しかし、弟子入りする人間のレベルがバラバラだ。事前に実家が工房だったり、あるいはある程度私塾で学んだ者と、全く学も経験も無いがやる気だけで飛び込む人間もいる。
ついでに、工房を率いる職人のレベルは、ある程度一定だが、その教え方がバラバラだ。一切教えず見て盗め、或いはまずは下働きからさせて少しずつ教えていく、少し規模の大きい工房だと、兄弟子から学んでその兄弟子は職人からみたいなピラミッド型の習得方法を採用しているところもある。
こんな状況だから、職人のトップに辿り着く前にドロップアウトや、育ちきれず下働きから抜け出せない人間も当然出てくる。
狙い目はそこだ。
良い物を作るには、確かに腕が優れた人間は必要だ。しかし、それが何十年も経験を積んだマスターかと言えば、否だ。鉄道模型の製造、しかもある程度の数を揃える量産の必要を考えれば、要るのはそこそこの腕でも良いから、数をこなせる、新しい物の製作に抵抗がない人材となる。
こうなると、むしろ若い人材や燻っている人材の方が適しているだろう。
そう言うわけで、各地の工房に人を派遣してリクルート開始。本当は直に出向いて直接スカウトしたいけど、さすがに本職の社長業が忙しくなってきて、自分自身が出張るのは難しくなってきた。俺が関わるのは最終面接だけだ。
それから、うちの会社からも希望者採用を開始。主として工作が得意な者や、手先が器用な者を集める。
それから動力部分は電気関係だから、これについては既存の産業がほとんどなく、集まる見込みがないため、鉄道部門の電気関係者から出向させて、一時的に教育係となってもらう予定だ。
とにかく、こうした方法をとり、3ヶ月ほど掛けて50人ほどの候補者が集まった。この50人を交通費と宿泊費込みでトセの街の本社まで呼び出し、俺直々のテストをした。
まず数人ずつ、俺の屋敷にある鉄道模型のレイアウトを見せる。続いて、俺を含んだ面接官による面接試験だ。
50人は、いずれも模型製作会社で働く人間として、その能力は備えている。でも、やる気や興味が全くないでは困る。何せ、この国初の鉄道模型メーカー。ちゃんと成績は残したい。
そう言うわけで、最終的に合格としたのは30名だ。これに事務方として別に6名を加えた、総勢36名で新会社「トセ鉄道模型製造」を立ち上げた。
俺は会長に名を連ねるが、これはあくまで便宜的な役職だ。なにせ領主や他の会社の仕事もあるからね。細かいことまでには口出し出来ない。
なので実務は社長以下に任せて、俺は会社の方針を決めて指示し、あとは彼らからの報告待ちを受けるという流れになった。
とりあえる、まずは車両とレール、車両を動かすための運転機器一式を注文したけど、はてさてどんな製品が出来上がるか。
楽しみと同時に、ちょっとした不安も感じた。
そして2ヶ月後、ようやく試作品完成の報告が来た。
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