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48.結果

少し期間が空いてしまいすみませんでした。

読んでくれている皆様には感謝しかありません!

今回はリアンの話から始まります。



大陸の中でも一、ニを争うほどの大国であり、東に位置するセレスト王国では年に一度文官になるための国吏試験と王宮医師となるための王宮医師登用試験が行われている。


他にも武官試験や王宮図書館司書試験といった王宮で働く者たちを選出するための試験は同じ日に行われるが、最も難しく合格するのがごくわずかだと言われる試験はこの国吏試験と王宮医師登用試験であった。



そして今日は、そのねんに一度の試験結果が発表される日である。





「お、リアンじゃん元気してたかぁー?」

「ああ、エリックも今見に来てたんだな」

「ま〜な〜、空いてる方が見やすいし」



貴族であるにも関わらず、貴族試験ではなく国吏試験を受けたリアンは、結果を見に行く途中の道で試験会場で友人となったエリックとバッタリ会い、合格発表が書かれている王宮の正門へ向かいながら話をしていた。



「当たり前〜俺受かってる自信しかないから」

「結構だな」

「とか言いつつお前もあるんだろリアン?」

「勿論だよ」



試験の結果は王宮の正門前で紙に書かれたものが早朝、日の出と共に現役文官の手によって張り出される。



結果は殆どの者が早く知りたいため、朝早くに家を出て門の前で待つのが恒例となっているのだが、自信がある者は大抵合格板をゆっくり見るために混雑をさけ、昼過ぎに見にくるのである。



リアンとエリックもそのうちの一人であった。



「それはそうと、後ろにいるお嬢さんはお前のコレか?」



そう言って話しをしていたエリックは、先ほどから気になっていた、リアンの横を静かに歩いている小柄な少女を見つめ、リアンへ小指を立てて見せた。しかし、意味を理解したリアンはすぐに首を横に振り、自分の後ろに隠れていた小柄で華奢な赤い目をした真っ白な少女の手をそっと握り、エリックへと紹介した。



「妹のソフィアだ。前に話したよね?」

「あー!はいはい、体が弱いお嬢様ね」



軽い口調で「へぇ、あんたがぁ」と言いながらじろじろと覗こうとするエリックをリアンは睨み、ソフィアを自分の後ろに庇いながらも仕方なくソフィアにも自分の友人を紹介した。



「ソフィア、こちらはエリック。前から知ってはいたんだけど試験会場で仲良くなったんだ」

「こ、こんにちは。ソフィア・フォン・ローエンと申します」

「俺はエリック・オルコットです。よろしくお願いしますお嬢様」



そう言って握手をしたエリックはちらっとソフィアの顔を覗いてみたが、誰もが立ち止まり、腰を抜かすほどの美貌にも全く反応せず、いつもと変わらない表情で社交辞令用の笑顔を向けながらすんなりと手を離した。



そしてまた隣にいたリアンと話をし始めた。



ソフィアは今までに自分に向けられる視線の意味を多少理解はしていたが、ここまで無関心な瞳をもつ人物に出会ったのは初めてのことであり、そのことを密かに嬉しく思っていた。





「今年の状元は誰かねぇ」

「さぁ、まあ何位になろうと与えられた仕事をするだけだ」



 状元とは一番の成績で試験を突破した者のことを示し、二番が榜眼、三番に探花という名前がつけられている。この一番から三番までで及第した者は特別に金貨や銀貨、そして小さな畑が与えられ、さらに見習いを終えたあとは好きな部署を希望することができるのである。

 また、国吏試験で上位三名に入った者は将来が期待されているため、誰が三名になったかは下っ端として働くものたちにとっては媚や恩をを売っておくためにも大変重要な情報なのである。そのため試験を受けた者以外にも多くの者が結果を知りたいと正門前に集まるのである。



案の定、リアンたちは遅く来たにも関わらず、正門前には酒屋の店主や行商人など多くの人でごった返していた。



「あーあー、これは近寄れなさそうだな」

「ああ、もっと遅く来るべきだったかな」



エリックの呆れたような声にリアンもまた頷いて答えた。


そんな二人の様子を見ながらソフィアはどこか見える場所がないかとキョロキョロしていた。


するとそんなソフィアの落ち着かない様子に気づいたリアンが優しく声をかけた。



「ソフィア大丈夫だよ。きっともう少しで人が引くと思うから」



落ち着いた声でそう言うリアンの言葉の意味が未だに分からないソフィアだったが、しばらくすると騒がしかった周りの声が急に鎮まり、王宮の門が開いたことでその言葉の意味を知ることになる。




正門から大量の近衛騎士団員が出てきたのである。




初めは何事かと思ったソフィアではあったが、リアンによると毎年のようにこの騒ぎが起こるため、それを収めるために一部の団員が正門に派遣されるらしい。



この派遣がある前の、国吏試験を初めたばかりの当初は人がごった返すだけではなく、上位三名をとった者をすぐに殴りつけたり、ズルをしたと言いふらしたり、文官が金で買われたなどと言われたり散々だったと高齢文官たちはよく話していた。現在ではそうしたデマを流す者もかなり減ったが、殴りつけたりなど暴力や言い争いは未だに耐えない。そのため呆れたローエン侯爵が、この騒がしい一日だけ少数の近衛騎士団を派遣することに決め、今では騎士団が門から出てくるだけで良い牽制になっており、揉め事もかなり少なくなった。



そしてソフィアたちが近衛騎士団が出てきたことを認識瞬間、先ほどまで掲示板の前で溢れ返っていた大勢の人々はいつの間にか姿を消していて、周りにはリアンたちを含め10人ほどの人しかいなかった。




「おーすげー、一気に居なくなったな」

「みんな騎士団が怖いんだろう」

「リアンお兄様、何故皆様は騎士団を怖がるのでしょう?」

「あぁ、それはねーーー」


なんでも理由は出てきた騎士団が第一近衛騎士団ということにあるらしく、本来は王宮内を警備する第一近衛騎士団が王宮の外に出て警備を行うことは殆どない。そのため、国民にもいまいち得体の知れない騎士団だと噂されており、恐れられていることもあって、第一近衛騎士団が来ると皆一目散に逃げていってしまう。もちろん騎士団団長であるローエン侯爵はそれを分かっていて実行している。



「そうだったのですね」



リアンから詳しく説明されたソフィアは「なるほど」と小さく頷いた。



そして三人はすっかり周りが開けた掲示板に近寄り、リアンとエリックは自分の名前を探した。



合格掲示板には13名の名前が書かれてあったが、ソフィアは最難関と呼ばれる試験の合格者にしてはとても多いと感じていた。



そして掲示板には勿論余裕たっぷりの二人の名前もあり、一番上に大きく「状元 リアン・フォン・ローエン、榜眼 エリック・オルコット、探花 オリバー・ハルマン」と書いてあった。



それを見た本人二人は特に驚きはしてなかったが、エリックが悔しそうな声をあげた。



「くっそー!結局負けたかぁ」

「俺の勝ちだなエリオット。そうだな.....帰りの屋台で俺とソフィアに食べ物を奢って欲しい」

「そんなんで良いのかよ?まぁ、分かったじゃあ行こうぜ」



何か賭けをしていたのか、楽しそうな二人の様子を伺いながらソフィアも二人が合格したことを嬉しく思い、しかも最難関と呼ばれる試験で一番を取ったリアンを改めて尊敬の眼差しで見つめた。



「ソフィアは何が食べたい?エリックの奢りだ、なんでも良いよ」

「ああ、なんでも好きなの頼んでくれお嬢様〜」



前を歩くエリックが投げやりにそう言い、半泣きになりながら財布の中身を確認しているところをリアンとソフィアは面白そうに眺めていたが、大きな声が聞こえたため後ろを振り向くと、そこには三人の受験者と思わしき男性が三人立ち、掲示板を見ながら話していた。




「ほらな言った通りじゃねーか!」

「あーあ、やっぱりお貴族様は金の使い方がお上手だなぁ」

「金のない俺たち平民がいくらやったって受からないわけさ」




こちらにわざと聞かせるかのように話をする三人の男たちは、まるでリアンが試験合格を金で買ったかのように吹聴していた。



「最後の試験問題なんて知ってるか?答えはローエン侯爵の土地に関する問題だったんだぜ」

「うわ、本当かよ。試験問題をすり変えたってことだろ?そんなことが許されるのかよ」

「そりゃ俺たちがいくら頑張ったって金がなきゃ合格できねーや!」




自分たちの勉強不足を棚に上げ、金を積まなければ合格できないのかと大声で恥ずかしげも無く言い募る受験者の男たちを見て、自分の尊敬する兄が馬鹿にされたということに初めて腹を立てたソフィアは近づいていった。そのソフィアの急な行動に気がつき、驚いたリアンはすぐに止めようとしたが一足遅かった。




「あの」

「「「あ?」」」

「お言葉ですが、合格できなかったのはあなた方にお金やこねが無かったからではなく、単に勉強不足で実力が足りなかっただけだからではないのですか?」

「は?なんだお前?一丁前に俺たちに説教か?」



リアンはそれまで、ソフィアに対し物静かで感情が殆ど顔に出ない妹と思っていたのだが、この日初めて人に対して怒っているのを見てとても驚いていた。


それは決して大きな声では無く小さな声ではあったが、宥めるように言う彼女はその容姿も相まってか、まるで聖女のような雰囲気を醸し出していた。


ただ、小柄で帽子をかぶっている男たちはソフィアのその美貌に気付いておらず、ただの女の子が楯突いてきたとしか考えていなかった。だが、それも次の言葉で怒りへと変わる。



「説教など、私如き人間ができることではありません。ですが自分たちの誤りを認めもせず、失敗を他人のせいにしている姿はそれを聞いている周りの人にとっても非常に不愉快です」

「なんだと?」

「てめぇ、俺たちが間違ってるとでも言いたいのか?!!!」

「権力や金で買ったのは事実だろ!」

「リアンお兄様はそんな事は絶対にいたしません!」



男たちは自分たちの過ちを公の場で冷静に指摘されたことに激昂し、その内の一人がソフィアの胸ぐらを思い切り掴んで引き寄せたその瞬間、男の体がぐらりと揺らぎ、ソフィアのすぐ横に倒れた。   



「おいおい、俺の妹に何してくれてんのお前?」




急に胸ぐらを掴まれたことで硬く目を瞑ってしまったソフィアは、襲ってきた男が隣で倒れている今の状況に頭が追いつかないまま、目の前にいるもう一人の兄を驚きの表情をして見つめていた。












これからもよろしくお願いします!

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