25.小さな策略
「お疲れ様です、殿下」
「ああ、ありがとう。レオンも疲れただろう、今日はもう残りの仕事を終わらせたら帰っていいぞ」
議会を終え、貴族への簡単な挨拶や事後処理をしたウィルは執務室へ先に帰っていたレオンに話しかけた。
「ありがとうございます。そういえば、先ほど父が来てソフィア様について色々と聞かれていきましたが何かあったんでしょうか」
「....何を聞かれた?」
嫌な予感がしたウィルはレオンを見ながら尋ねる。
「ええと、ソフィア様が王宮にいるときどれくらい殿下と会われていたのかや、どんな会話をしていたか、そのときのお互いの様子などを聞かれましたね」
「まずいな....はぁ....」
力なく執務室の机へ片手をつき下を向いたウィルの様子を見て、ようやく状況を察したレオンは慌ててウィルを慰めた。
「で、殿下、大丈夫ですよ心配しなくても!いくら何でも前回失敗したばかりで、そんな急に行動しませんよ」
「殿下、失礼致します。陛下から急ぎ伝えたいことがあるため執務室へ来いとの連絡が来ております」
レオンが言った矢先、ギールが部屋へと入って「陛下」という単語が聞こえた瞬間、ウィルは自らの嫌な予感が的中したことを悟った。
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「陛下、ウィリアムです」
「入れ」
言われるまま部屋へと入ったウィルは、すぐに国王であるダニエルと宰相であるバーミラン公爵しかいないことを確認して言葉を待った。
(どうやって断るかだな.....)
ダニエルがこれから言うことに対する断り方を考えていたウィルだったが、話は想像と違い、今日の議会に対することだった。
「ウィル、お前の今日の議会の進め方や考え方をバーミラン公爵から聞いた」
「はい」
その言葉に一瞬だけウィルは緊張した。
「お前の考えは私も思いつかない良い案であった。しかし次の議会ではもっとよい意見や案が出るかもしれん、自らの案だけに酔って周りの声を疎かにすることがないよう気をつけろ」
「はい、心得ております」
そうして今日の議会に対する評価を言ってきたダニエルを見て、ウィルは自分の思い過ごしかと考えた。
しかし国王が何を考えているか分からないため、注意しながら話を聞いていたウィルだったが、さすがに議会の疲れもあり、今日のお茶は苦いだの王妃が可愛いだのとどうでもいいダニエルの話を聞かされ続け、二時間が経つ頃には「はい」「そうですね」「ええ」という返事しかしなくなっていた。
そんなウィルの様子を見たダニエルとバーミラン公爵はにやりと顔を見合わせ、話をしていたときと全く変わらない声色とテンポで言葉を発した。
「二週間後にお前の誕生パーティーを開こうと思うんだがいいな?」
「はい...いえ!」
自分の失言に気づいたウィルだったがもう遅かった。
ダニエルはウィルが返事をしたことをバーミラン公爵に確認し、作戦が成功したことを二人は手をつないでくるくると回りながら喜んでいた。ウィルは返事をしてしまったことを後悔しながら、目の前でまわり続ける二人を見て大きなため息をついた。
「ウィル、お前も今年で二十歳だ、いい加減婚約しろ。後を継ぐ者を作ることは王族の義務だぞ」
「分かっております。ですから養子を迎えれば良いでしょう?」
「私やヴァイオレットに孫の顔を見せてくれないのか?」
「サミュエルもルークもいます」
どこまでも渋り続けるウィルにダニエルは大きくため息をついた後言い聞かせることをやめて本題へと話を移した。
「二週間後、パーティーは行う。これは決定だ」
「しかし!」
「婚約者は選ばなくてもいい、とりあえず気になる令嬢を見つけるんだ。もうシリウスのところの娘が気になっているのではないか?」
「彼女は、そういうのでは.......」
ソフィアのことがようやく話題に出されたが、最初のように心の準備をしていなかったウィルは珍しく口ごもってしまった。それを見たダニエルは国王ではなく父親の顔をして微笑み、パーティーの詳細は明日貴族たちへ発表することを告げウィルに下がるよう命じた。
「無理矢理すぎましたかね?」
「いや、あいつはあれくらいが丁度良いだろう」
部屋から出て行ったウィルを見てダニエルはこれからウィルが行く道を温かく見守って行こうと考えていた。
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「あっ殿下、遅いから心配致しました。何があったんですか?」
「おおウィルー、どうしたそんな顔して?」
レオンといつの間にか執務室へと来ていたジョンは、国王に呼び出され帰ってきたウィルの真っ青な顔を見て心配し声をかけた。
しかし事情を聞いたジョンとレオンは必死に笑いをこらえ、国王と宰相の策略に嵌められたウィルを笑った。
「っははっはっははは!国王がははっ二時間もくくくっ」
「へっ陛下と父上の罠にふっははは」
「...笑い事じゃない」
ウィルは笑っている二人を不服そうな顔で見ながらも話を続けた。
「それで、明日には俺の誕生パーティーの開催の連絡が行くだろう」
「了解!」
「分かりました」
「ジョン、ソフィアはもう歩けるようになったのか?」
「あーなんかマーガン先生はもう少しで杖をとって歩けるようになるだろうって言ってたぞ」
「そうか、よかった」
パーティーを嫌がるウィルではあったが、開催が決まった以上最低一人とは踊らなければならないため、どうせ踊るのならソフィアと踊りたいと思っていた。
しかし残り二週間という短い期間でソフィアはダンスを踊れるようになるのか心配になったウィルは、もしソフィアが参加できなければパーティーを上手く抜け出そうと、疲れて働かなくなった頭で考えていた。




