↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/51

17.変化

ソフィアとウィルが話した夜からさらに二週間が経ち、ソフィアが王宮に来てから一ヶ月が経つ頃、ソフィアは少しずつ日の光を克服し、杖をつきながらゆっくりと自分の足で立って歩けるようになっていた。



「おはようございます、ソフィア様」

「おはようございます」



ソフィアはウィルの言葉を交わした日から徐々に周りにも心を開き始め、まだ少し恐怖は残るものの、急に触られたりしなければ一人で人と接することができる様になっていた。



今ソフィアはウィルの執務室に向かうため、廊下を杖をつきながらゆっくりと歩いていた。理由はジョンとレオンに呼ばれたからだ。



ジョンは最近真面目に仕事をするようになったこともあり、以前よりもさらに仕事が増えたため、ソフィアに毎日会いに来ることが出来なくなっていた。


ジョンは仕事が来るならと不真面目に戻ろうとしたが、「お兄様の働きに多くの方が感動していると聞いて嬉しくなりました」というソフィアの言葉を聞いて再びやる気を取り戻した。



しかしこれは、ジョンの気持ちを早くに察したレオンがソフィアに言うように仕向けたことであるのだが、ジョンはそれを知らず、まんまとレオンの策にはまっていた。




そして廊下を歩くソフィアを見て、見回りをしていた兵士がその美しさと白さに一瞬固まり、挨拶をして通り過ぎて行ったソフィアを眺めながら隣の兵士に話し始めた。

 

「おい、あんな綺麗な子王宮にいたか?」

「ああ、お前知らないの?ローエン侯爵家の娘のソフィア様だよ」

「団長の?!全然知らなかった。ずっと外回りだったしなー」

「あーそれなら仕方ないかもな。ソフィア様が部屋の外に顔を見せて出るようになったのってつい最近だし」

「へー、でもあんなに綺麗な子だったら見たらすぐ分かるはずなんだけどな」

「晴れの日は基本的に外套着て歩いてるからな」

「外套?なんで?」

「体が日の光に弱いんだと。まああんなに白ければ分からなくは無いけどな」

「確かに、俺もあんな綺麗な子とお近づきになりたいな〜」


ソフィアについて話していた二人は、それから自分たちの恋愛話に花を咲かせ女子トークのような会話をしながら見回りを再開した。



_____________________________________________



コンコンッ!


「入れ」


執務室への入室を許可する声が聞こえたため、ソフィアは中へと入って行った。


「失礼致します」

「ソフィア、よく来たな元気だったか?」

「はい、殿下もお元気そうで何よりです」


ウィルは入ってきたソフィアを見て、すぐに執務用の椅子から立ち上がりソフィアのいる方に行こうとしたが、立っていたジョンが先に駆け寄って行ったことにより、駆け寄るタイミングを逃してしまった。


「ソフィ〜!会いたかったぞ俺の妹!!」

「苦しいです」


ジョンが急に抱きついて頬ずりしてきたことに一瞬驚いたソフィアだったが、ジョンと会えばほとんど毎回のようにされることなのでソフィアもかなり慣れてきていた。



今のところソフィアの体に触れても平気なのはウィル、ジョン、レオン、エミリア、マーガンの四人だけである。



「それであの、私が呼ばれたのは何故でしょう?」

「あぁ、そのことで話がある。そこに座って話そう」



ウィルはやっとソフィアのいる方へと近づき、そのままソフィアをソファへとエスコートした。



ウィルの女嫌いはいまだに治らないが、ソフィアに対してだけは別で、触られても嫌悪感を抱いたり拒絶したくならないのである。むしろ積極的に関わりたいと思っている自分にウィルは気づき始めていた。



「ソフィアが歩けるようになって、日差しも強い日でなければ、服装にだけ注意すれば外に出ても問題ないとマーガンが言っていたんが、本当に大丈夫なのか?」

「はい、これから少しずつ外に出られるそうになったらいいと思っております」

「ほ〜んと!まさかこんなに早くソフィーが歩けるようになるとはなー」

「ええ本当に。ソフィア様、よく頑張りましたね」

「ありがとうございます、レオナルド様」



まだ杖をつきながらではあるが歩けるようになったソフィアをレオンが喜んでくれて、ソフィアも顔には出ないが嬉しかったため、お礼を言い、本題へ入った。



「あの、私の体調と関係があることなのですか?」

「あぁ、実は前から言っていた通り、そろそろ家庭教師をつけてもいい頃かと思っていたんだが」

「!はい、よろしくお願いします」

「よし。それでなんだが、家庭教師は前からローエン侯爵家で受けさせるようにすると侯爵が言っていてな。ソフィアさえ良ければ、早いうちに侯爵家へ行ってもらうことになるんだがいいか?」

「はい、大丈夫です。」

「......分かった。それでは細かいことはローエン侯爵に任せてあるから、後は侯爵家へ行く日なんだが.....」

「俺、明日なら非番だから今日か明日の、夜で日がない時に連れて行けるけど、ソフィーどうだ?」

「はい、私はいつでも大丈夫です」

「まぁ、歩くのは馬車までだし!何かあったら俺が側にいるからな〜」



出発の日は話し合いの結果明日の夜、日が落ちてすぐに行くことに決まった。



今までは侯爵家へ行くことを躊躇っていたソフィアも、最近人と関わることが多くなったことから、少しずつだあはるが色んなことに積極的に取り組むようになっていた。



そんなソフィアを見てウィルは嬉しく思うと同時に、ローエン侯爵家に行けばまたしばらく会えないなと思い、何かを押し出すようにふーっと息を吐いた。



「ソフィアがいなくなると寂しくなるな」

「な〜、俺も仕事へのやる気がなくなる」

「ジョン、あなたは今までがしなさすぎたんですからちゃんとしてくださいよ」

「分かってるって〜」

「ソフィア様、あなたならローエン侯爵家でもうまくやっていけるでしょう、頑張って下さいね」

「はい、ありがとうございます」




ソフィアが王宮からいなくなり、これからローエン侯爵家で過ごすことを三人は少し寂しく感じていた。


しかしソフィアが頑張っているのを知っているため、レオンはこれからのことを応援する言葉を送った。



「ソフィア、これから部屋へ戻るのか?」

「いいえ、王国図書館へ行こうと思っています」



必要な話が終わったウィルは、ソフィアと雑談しようと話しかける。



「あぁ、本を借りに行くのか」

「えぇ、新しい本が入荷してきたとハンナさんがおっしゃっていたので」



自分で歩けるようになったソフィアは、国で一番大きな図書館である王国図書館に通っていたため、そこの司書であるハンナ・パーマスとよく話をするようになり、仲を深めていた。



「そうか、行く時は送って行く」

「い、いえ!一人で行けますので!」

「俺も近くに用事がある、ついでだ。問題ないなレオン?」

「はい、どうぞ」



もちろん近くに用事などないのだが、レオンにさりげなく確認を取り、行ってもいいというお許しが出たため、ウィルは遠慮しているソフィアを送る事に決めた。



雑談が終わり、杖をつきながら執務室を出て行ったソフィアとそれを送っていくウィルを見て、ジョンとレオンは話し始めた。



「ウィルのやつ、なんか前よりソフィアのこと気にかけるようになったよな〜」

「ええ、まぁソフィア様は体が弱いので分からなくはないですが」

「いや、そういうことじゃなくてなんかこう、距離が縮まった?みたいな。やっぱりあの夜なんかあったんだなぁ」

「ソフィア様が熱を出した日のですか?」

「そうそう。次の日の朝行ったらソフィーは自分の部屋にいたし、全然酔わないウィルが二日酔いだったからな〜」

「まあ、確かに。殿下もやっとですかね」

「かもなぁ〜」



ウィルが女性への苦手意識を持っていることをずっと気にしていたジョンとレオンはソフィアとの出会いで変わりつつあるウィルの変化を嬉しく思っていた。




________________________________________________________



「ソフィア、大丈夫か?」

「はい?何がでしょうか?」



ウィルとソフィアは王国図書館へと向かう途中の廊下を二人で並んで歩いていた。



「急な話だったから、無理をしてるのではないかと思ってな」

「いいえ殿下、私もこうして歩けるようになってきたので公爵家には行かなければならないと考えておりました。きっかけができて良かったです」

「そうか、それならいいんだ」



たまにすれ違うメイドや兵士に挨拶をしながら、しばらく二人は黙って廊下を歩いた。



「あの、殿下」「ソフィア」



沈黙していた二人は同時に互いの名前を呼ぶ。



「あ、あの殿下からどうぞ」

「あ、あぁ、大したことではないんだが、俺もその.....ソフィアを『ソフィー』と呼んでもいいか?」

「......はい、構いません」



ソフィアは固まった。しかしソフィアはそれが嬉しかったため、すぐに許可を出した。



「それと、これを」

「あの、これは?」

「侯爵家へ行ってからでも開けてくれ。まあ餞別みたいなものだ」

「?はい、ありがとうございます」



小さな袋を手渡されたソフィアは、何が入っているのか気になり、疑問に思いながらも大切に持ち、侯爵家へ着いたらすぐに開けようと考えた。



「それで、ソフィーの話は何だ?」



早速ウィルに愛称を呼ばれたソフィアは少し顔を赤らめながら答えた。



「あの、これから文字を学び、書けるようになったら殿下に手紙を書いてもよろしいでしょうか?」



ソフィアの言葉を理解したウィルは、みるみると顔を紅潮させ、顔に手を当てて「ああ、楽しみにしてる」と嬉しそうな声で答えた。



王国図書館は王宮の中にあるため、歩いて行くのにそれほど時間はかからない。





しかし、この時二人は互いに顔を赤らめながら、一緒に歩いている時をとても長く感じていた。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。