13.部屋の外
「ソフィー、入っていいか?」
「はい、どうぞ」
扉の外から自分を呼ぶ声が聞こえ、ソフィアは扉のそばに行こうと慌ててベッドから降りてマーガンから貰った車輪付きの椅子に乗ろうとし、失敗した。
今回は、以前のようにエミリアはいないため、支えてくれる人もなく、「あっ」と小さな声を出してその場に倒れてしまった。幸い頭からではなく足からだったため、大きな怪我もなかった。
しかし、扉を開けて入ってきたジョンは、そんなソフィアを見てすぐに駆け寄ってきた。
「ソフィー!大丈夫か?どこか打ってないか?痛いところは?」
「だ、大丈夫です」
ソフィアが「セシル」から「ソフィア」という新しく名前をもらった日から、今日で二週間が経とうとしていた。
ジョンはあの日から毎日一回は必ず、ソフィアのいる部屋へとやってきて、ずっと話をする日もあれば、ソフィアの好きな本を借りてきて見せたり、ウィルやレオンと一緒に来て過ごしている時もある。
ソフィアはジョンやウィルやレオン、そしてエミリアやマーガンなど、身近な人たちにだけは、徐々に心を開いていっていた。
特に、毎日来るジョンに対しては性格や人柄をほとんど理解したため、ソフィアは少しなら触れられても平気になっていた。
そのため、ジョンはよく倒れたり転んだりするソフィアを助けられるようになったことを大いに喜び、父であるシリウスに自慢していた。
そしてそれに対抗してか、シリウスも毎日ではないものの、頻繁にソフィアの部屋へ訪れるようになった。
今日はジョン一人で来るということを聞いていたため、せっかくなので出迎えようと考えていたソフィアだったが、結局ジョンに助けてもらうこととなった。
「よっと!」
軽くソフィアを抱きかかえ、車輪付きの椅子へと座らせたジョンは、不思議そうな目でこちらを眺めてくるソフィアを見つめかえした。
「ん?なんだ?」
「いえ、ベッドかと思ったので.....」
「あ、ベッドの方だった?椅子に乗りたいかと思ったんだけどな」
「あ.....あたりです。」
「だろ。ソフィーのことなら俺なんでも分かっちゃうからなー」
鼻歌を歌いながらソフィアの椅子を押し始めたジョンはソフィアに尋ねる。
「じゃあ、いつもと同じで部屋の中ぐるぐるするかー」
「あ、あの、今日は部屋の外に出たい、です。」
「!!」
「マーガン先生も少しなら大丈夫だと仰ってくださったので・・・」
マーガンに言われた通り、訓練を毎日頑張っているソフィアはまだ光を浴びることはできないものの、少しずつ体力も回復し、2時間程度ならベッドから出ていることもできるようになっていた。
そう言ったソフィアの言葉にジョンは「やったな!」と自分のことのように喜び、どこに行きたいかソフィアに聞いてきた。
「では、できる範囲でいいので王宮の道案内をお願いしたいのですが・・・」
「ん!了解了解!あ、ソフィーこれ被ってけよー」
光を直接浴びることのできないソフィアはフードのついた外套を被り、ジョンに椅子を押されながら部屋の外へと出て行こうとする。
しかし、廊下で働いているメイドや王宮の人たちが思っていたよりいたことに、予想以上にいたことに驚き、開けた扉を思わず閉めて震え出してしまった。
「あ、あ、あ、ごめんなさいごめんなさい」
震える体を止めようと必死に両手で体を抱きしめたソフィアは、自分の頭にジョンの手が置かれたところでビクッと体を震わせたが、ジョンの言葉を聞いて徐々に落ち着きを取り戻していった。
「大丈夫だ、俺がついてる!ソフィーに悪さするような奴がいたら俺がぶっ飛ばしてやるから!」
「ぶ、ぶっとばす、のはダメです。」
「ははっ!そうか?」
ジョンとの会話で、体の震えが治るのを見たジョンはソフィアの体を心配した。
「なぁ、ソフィー?別に今日無理して外に出なくたっていいんだぞ?俺だったらいつでも付き合うんだから」
「いいえ、これは私がこれから一人で生きていくためには必要なことですから」
「........そっか、じゃあ頑張らなくちゃだな!」
「はい」
もう一度、今度は外套のフードを深く被ったソフィアは扉を開き、体に震えがくるのをなんとか抑えて部屋から出ることに成功した
「今ソフィーがいるとこが王宮の客室なー、んでーここを少し登って真っ直ぐ行くとウィルの執務室がある。そうだ!そこまで行ってみるか!」
「ですが、お仕事のお邪魔になるのでは......」
「大丈夫大丈夫!俺なんて気にせず行ってるぞ?それにウィルもソフィーがくれば喜ぶだろうしな」
「それはお邪魔をしているのでは」というかすかに聞こえたソフィアの声をあっさりと無視したジョンは「行こう行こう!」と言ってウィルのいる執務室へとソフィアの車椅子を押していった。
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「殿下、ソフィア様の出生証が出来上がったそうです。」
「ああ、そうか。ソフィアに知らせてやらないとな」
「そうですね。それと最近、貴族院のボブロフ子爵に怪しい動きが見られます。」
「詳しく調査し報告しろ。それと…」
レオンとウィルが執務室で仕事をしながら話をしていると、急に部屋の外が騒がしくなった。
「何かあったのか?」
「確認して参ります」
ギールが確認しに廊下へ出ると、ちょうどそこには扉をノックをしようとしていたソフィアとジョンがいた。




