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8-1

「じゃあ、私は宿を探しに行くわ。リオン、案内宜しくね」

「ああ、分かった」

「じゃあ、私はシリウスさん達とだね。また後でね、ユフィア」

「ええ、気を付けてね」


手を振って立ち去っていくメルフィ達を手を振り返して見送った後、リオンへと視線を向ける。


「それじゃあ、行きましょうか」

「そうだな」

「何処かいい宿屋のあてはあるの?」

「ああ。それは大丈夫なんだが…ふむ」

「リオン?」


なにか考え込んでいるらしいリオンに首を傾げて問いかけると、リオンは私の方へと視線を向けて行ってきた。


「宿屋はそんなに遠くはないんだ。いつでも取れるだろうし、もし良ければ少し街を案内しようか?」

「え?いいの?」

「ああ。慣れておいた方がいいだろうからな」

「それは助かるわ。本当に何がどうなってるのか未知数だもの」

「わかった。それなら何ヵ所か通りをめぐって広場へ向かおうか」

「それは任せるわ。私にはどこがどこだかわからないし」


返事を返すと、リオンはもう一度分かったと頷いて歩き出す。

私のその隣をはぐれないようには気を付けながら歩いて行った。

言葉通り、リオンは通りを二、三ヵ所、案内してくれて、この場所がどこだとかあれが何かなど丁寧に説明してくれた。

こういうところは本当に紳士だなと感心する。


「有り難う、リオン。とても分かりやすかったわ」

「そうか?なら良かった。…正直、ちゃんと説明できていたか自信がなかったんだ。こういうのはジェイルの方が得意だからな」

「そんなことないわ。ちゃんと要点を掴んでて分かりやすかったもの」

「そ、そうか。それならいい。なら、次は広場に向かおう」

「ええ、楽しみだわ」


リオンの言葉に頷いて、広場へと向かう。

広場には大きな噴水があり、ところどころに露店が出ていて人々で賑わっていた。

その様子に私は思わず、感嘆の声を上げる。


「凄い、賑やか!こんなに賑やかな場所は見たことないわ。王都だともっと賑やかなのかしら?」

「そうだな。王都はもっと大きくて広い。慣れていないものなら迷子になる可能性もある」

「私は確実に迷子になりそうね。この街だけでも迷いそうなのに」

「だが、慣れれば住みやすいところだと思うぞ」

「慣れるまでにとても時間がかかりそうだけれどね」


なんて言いながら私は広場の雰囲気を満喫して、リオンの方へと視線を向ける。


「有り難う、リオン。もう十分、満喫したわ」

「もういいのか?」

「ええ。そろそろ宿屋に向かいましょう。メルフィ達も買い物を終えている頃だろうし」

「わかった。じゃあ、宿屋へ向かおう」


リオンは頷いて宿屋まで歩き出し、私もその隣を歩いて宿屋へと向かう。

辿り着いた宿屋は、私の村にあったものとは比べ物にならないほど大きく立派なもので、また少し圧倒されてしまったのだけれど。

リオンはカウンターで受け付けの人と話をして、二人部屋を一つと三人部屋を一つ確保してから待っていた私のところに戻ってくる。


「君とメルフィの二人部屋でよかっただろうか?」

「ええ、それで十分よ」

「それじゃあ、いったん三人と別れた場所まで戻ろうか。もうそろそろ買い物も終えているだろうからな」

「そうね」


言われた言葉に頷いて宿を出た時だった。


「騎士様!」

「え?」


若い女性の声が聞こえたかと思うと一人の女性が私達の方へと駆け寄ってきて、リオンに悲痛な面持ちで告げて来た。


「騎士様ですよね!?お願いがあります。あそこで私の友人が悪い男の人達に絡まれてしまって…!お願いします!友人を助けてください!」

「それは大変だ。だが…」


リオンは困ったように私の方へと視線を向ける。

もしかして、私を置いて行くことをためらっているのだろうか。

そう理解した私は笑みを浮かべて行った。


「行ってあげて。困っている人を助けるのも騎士の務めでしょう?」

「だが、君を一人にしておくのは…」

「私なら大丈夫よ。ここで待っているから。大変なことにならないうちに早く行ってあげないと」

「…わかった。すぐに戻ってくるので待っていてくれ」

「わかったわ」


頷く私を見て、リオンは漸く決心したのか女性に道案内を頼んでその場を立ち去って行った。

残された私は、一人大人しく宿屋の前で立っていたのだけれど、私の前に三人の黒いローブを纏いフードで顔を隠した男達がどこからともなく姿を現した。


(何かしら…この人達。凄く嫌な気配を感じるわね)


フードで顔を隠している時点で十分怪しいのだが、三人の男は私の前で立ち止まり、真ん中の一人がすっと一歩前へと出る。


「お前が、光の巫女か」

(光の巫女の存在を知ってる!?この人達って一体…!?)

「なんの事かしら?私は人待ちしているだけだけれど」


警戒しながら答えると、男は言葉を続ける。


「騎士と共にいる娘を狙えと言われている。お前か、それとももう一人の娘が光の巫女だな」

「メルフィは関係ないわよ!」


思わず声を上げてはっとする。

これでは私が光の巫女だと言っているようなものだ。

慌てて口を噤むも、男はくくっと喉元を鳴らして言葉を放ってきた。


「では、やはりお前が光の巫女か」

「だったら、なんだって言うの?」

「勿論、ここで死んでもらう!」

「っ!?」


言葉と同時に男は手に短剣をもって私に飛び掛かってくる。

私はそれを間一髪のところで避けると、腰に装備していたモーニングスターを思いっきり振り回す。


「でええいっ!」

「っ!?」


私に襲い掛かってきた男はモーニングスターの玉を避けるように身を翻して地面に着地する。


「甘く見ないでよね!こう見えても魔物退治はお手の物なんだから!」


言いながら私は辺りを回す。

ここで戦闘になってしまっては、宿に迷惑をかける事になるし他の一般市民を巻き込むことになりかねない。

私はもう一度モーニングスターを振り交わして左端のフード男に攻撃すると、避けられて空いた道を駆け出す。


(とにかく、人を巻き込まないところに移動しないと…!)


後を追いかけてくるフード男達の足音を聞きながら、私は道もわからないまま走りに走って気が付けば路地裏へと入り、行き止まりに辿り着いてしまっていた。


「っ!?しまった…!」

「追いかけっこはもうおしまいか?」

「っ!!」

「ほう、まだ睨む気力はあるのか。その気がいは悪くないが、ここで観念するんだな」


そう言って、フード男達はそれぞれの武器を構える。

私は唇を噛みしめてモーニングスターを握りしめた。


(ただでやられるわけにはいかない…!せめて一人ぐらい…!)


「覚悟して死ね!」


男達が私に飛び掛かってこようとした時だった。


「それはこちらの台詞だ」


聞き覚えのある落ち着いた声と共に、剣を振る音が聞こえたかと思うと。


「ぐああっ!?」


男の一人が、苦痛の声を上げて地面に倒れ伏す。

その先に見えた姿は剣をかまえたリオンの姿があった。


「リオン!」

「遅くなって済まない、ユフィア。今助ける」


そういうとリオンは、私の前へと移動しもう一人襲い掛かってきた男をあっという間に切り倒していた。


(す、すごい。これが王国騎士の実力なのね…!)


私も腕には少し自身はあったけれど、それでもレベルの違いを見せつけられた気がして少し悔しい。

リオンが来たことで、形勢逆転という形になったことで、一人残った男は軽く舌打ちする。


「これ以上の戦いは無益だろう。大人しく投降するなら命までは取らないが?」

「…仕方がないか」


男はそういうとローブから何かを取り出して地面にぶつける。

途端にあたりが煙でいっぱいになり、私達は思わずせき込んでいた。


「げほっ…煙玉か…!?」


煙が完全に消えた時には男の姿も倒れた男達の姿も跡形もなく消えていた。


「……逃がしたか。ユフィア、大丈夫だったか?」

「え、ええ。有り難う、リオン。助かったわ」

「すまなかった。まさか、俺を君から引き離すための罠だとは知らずに一人にしてしまって」

「え?ということはあの女性は?」

「ああ、奴らの仲間だったみたいだ。待ち伏せされたのはすべて倒したものの彼女の姿は消えていた」

「そうだったの」

「俺がもっとしっかりしていれば、君を危険な目に合わせたりはしなかったのだが」


悔いるように告げるリオンに私は笑みを浮かべて首を横に振った。


「気にしなくても大丈夫よ。助けに来てもらえたんだし」

「だが…」

「いいって言ったらいいの!終わりよければ全てよしっていうでしょう?」


まだ気にしているらしいリオンに強くそう言い切ると、漸く少し納得してくれた様子を見せる。


「そうか。…そうだな」

(本当に、真面目なんだから。まぁ、それだけ責任感が強いって事よね)

「とにかく、シリウス達と合流しよう。あちらでももしかしたら何かあったかもしれない」

「そうね。メルフィ達無事でいてくれればいいけれど」


リオンの言葉に頷いて、私達は合流場所へと向かったのだった。


10へ

長くなりましたが、リオンルートUP。

9はシリウス、ジェイルルートになりますので10UPまでしばらくお待ちください。

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