表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
50/60

第50話 ブラック企業の監査役

だが、この巨大な「地殻変動」を黙って見過ごす組織ではなかった。 


ドォォォォン!!


再び爆音が響き、料亭の天井が崩落した。


「――警告はしたはずだ」


黒い影が、数人の部下を率いて降下してきた。 黒のスーツ、サングラス、耳にはインカム。 そして手には、銀色のアタッシュケース。


新撰組・副長、土方歳三。


「RYOMA。及び薩長の両代表。……貴様らの行為は、幕府法第十三条『国家転覆陰謀罪』および『独占禁止法』に抵触する。……よって、全員の資産を凍結し、身柄を拘束する」


土方は、アタッシュケースのボタンを押した。 


ジャキッ! 


ケースが変形し、青白いプラズマを纏った高周波ブレードへと変わる。


【対企業制圧用兵装・和泉守兼定イズミノカミ・カネサダVer.Executor】。


監査パージの時間だ」


部下の隊士たちも、一斉にスタン・ロッドやネットランチャーを構える。


彼らは「誠」という社訓コードにプログラムされた、生体アンドロイドのような精密さで包囲網を縮めてくる。


「ちっ、幕府の犬どもが! 嗅ぎつけるのが早いのう!」


 RYOMAが舌打ちする。


「西郷! 桂! おんしらは逃げて新会社の登記準備じゃ! ここはわしらが食い止める!」


「承知! 死ぬなよ、CEO!」


 西郷がボイラーを全開にし、桂を抱えて壁をぶち破り、脱出する。


「逃がさん!」 


土方が跳躍する。 その刃が、西郷の背中を捉えようとした瞬間。


「させませんッ!!」


私が前に出た。 RYOMAから渡されたガジェット―― 【万年筆型スタンバトン】 を展開し、土方の刃を受け止める。


バチチチッ!! 


高電圧とプラズマが衝突し、火花が散る。


「くっ……重い……!」 


「狼」のような野生の重さではない。 巨大な組織、権力、法律という「システム」の重圧が、剣圧となってのしかかってくる。


「どけ、一般人シビリアン。……公務執行妨害で処理するぞ」


土方のサングラスの奥の目が、冷たく光る。


「僕は一般人じゃない! ……株式会社日本の『法務担当』だ!」 


私は叫んだ。


「総理! お願いします!」


「任せたまえ!」 


夜裏なおすが、優雅に指を鳴らした。


ブォン! ブォン! ブォン! 


私たちの周囲に、無数のホログラム・ウィンドウが展開された。 そこに表示されているのは、未来の法律、判例、国際条約の条文だ。


【未来法廷闘争支援システム・六法バリア】


「土方君。君たちの拘束令状には不備がある」


夜裏が、冷静に告げる。


「幕府法などというローカル・ルールは、国際基準グローバル・スタンダードでは無効だ。……君たちの行動こそが、自由貿易を阻害する違法行為だよ」


キンッ! キンッ! 


隊士たちが放ったネットランチャーや弾丸が、ホログラムの条文バリアに当たって弾かれる。 「違法」と判定された攻撃を無効化する、概念防御だ。


「屁理屈を……!」 


土方が苛立ち、さらに踏み込む。


「法とは、力のある者が決めるものだ! 幕府こそがこの国の法だ!」


土方の連撃。 速い。鋭い。 私のスタンバトン技術(ただの剣道経験者)では、防戦一方だ。


「くそっ……! 正論だけじゃ勝てない……!」


私は後ずさる。 土方のアタッシュケース・ブレードが、私のネクタイを切り裂く。


「終わりだ、違法コンサルタント」


土方がトドメの一撃を振りかぶる。


その時。 RYOMAが、私の肩に手を置いた。


「かたる、よう耐えた! ……あとは交渉ディールの時間じゃ!」


 RYOMAは、懐から大量の「紙切れ」を取り出し、扇のように広げた。 それは、ただの紙ではない。  【株券】 だ。


「新撰組の諸君! 聞くがいい!」


RYOMAの大音声が響く。


「おんしら、いつまでそんなブラック企業で働きゆう!? 残業代は未払い! 福利厚生はゼロ! 退職金も出ん使い捨て!」


隊士たちの動きがピタリと止まる。 痛いところを突かれたのだ。彼らは「誠」のために搾取され続けてきた社畜たちだ。


「わしらの新会社に来い! 給料は三倍! ストックオプション(自社株)付き! 週休二日制も保証しちゃる!」


RYOMAが、光る株券をばら撒く。 ヒラヒラと舞い落ちる「好条件」の前に、隊士たちの心が揺らぐ。 システム(命令)で動く彼らにとって、「より良い条件」は抗いがたい魅力なのだ。


「ば、馬鹿な……。惑わされるな! 任務を遂行しろ!」


土方が叫ぶが、隊士たちの武器を下ろす手が止まらない。暴力ではなく、「待遇改善」で敵を無力化する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ