第45話 国民(読者)への問いかけ
夜裏の慟哭が吸い込まれた後、執務室に、重苦しい沈黙が流れた。 gennaiも黙っている。彼もまた、計算の限界を感じているのだろう。 「無」の世界。 これ以上の修正は不可能に見えた。
だが。 私の胸ポケットの中で、何かが熱を持った気がした。 胃薬はない。 あるのは、これまでの旅で得た「記憶」だ。
PRINCEの理想、USHIWAKAの涙、HIMIKOの笑顔、MURASAKIの情熱、NOBUNAGAの夢。 それらは、無駄だったのか? いや、違う。
「……まだ、ありますよ」
私は呟いた。
「道は、あるはずです」
「……慰めはいらん」
夜裏は顔を覆ったまま言った。
「力も、理も、情も、全て試した。もう手札はない。……この国は、どんなOSを入れてもバグを起こす。修復不可能なジャンク品だ」
「違います!」
私は、痛む体で立ち上がった。
「バラバラだから、駄目なんです。『和』も『武』も『信仰』も『文』も『破壊』も……それぞれが極端すぎる。一つ一つの要素は間違ってないのに、それが混ざり合わず、対立しているから暴走するんだ」
私は、銀色の荒野を見据えた。
「必要なのは、これら全てを繋ぎ合わせる力です。対立する思想も、敵も味方も、過去も未来も……全部まとめてごちゃ混ぜにして、新しい『形』にまとめ上げる力です!」
私は、六番目のカプセルへと歩み寄った。 そこには、潮の匂いと、新しい時代の風を感じさせる青い光が満ちていた。
夜裏が顔を上げた。 その瞳に、わずかな希望と、大きな迷いが浮かぶ。
「……まさか、彼を呼ぶ気か? 【RYOMA】 を」
「ええ。このメチャクチャになった世界を、一度きれいに『洗濯』してもらいましょう」
私はカプセルの起動スイッチに手をかけた。 だが、夜裏が私の腕を掴んだ。 その手は冷たく、震えていた。
「待て、かたる君。……ただ起動するだけではダメだ」
「え?」
「RYOMAの能力は『統合』と『流動』だ。彼は劇薬だ。彼をどう使うかによって、この国の未来は全く違う形に固まってしまう」
夜裏は、切実な目で私を見つめた。
「かたる君。君はこの世界を修復するために……『龍馬』にどんな役割を期待する?」
「どんな、役割……?」
「そうだ。バラバラになった人々の 『心』を繋ぎ直してほしいのか。……それとも、崩壊した国の『システム』 を再構築してほしいのか。RYOMAの演算リソースは限られている。どちらか一つしか選べない」
私は息を呑んだ。 究極の二択だ。 心を救えば、また非効率な感情の世界に戻るかもしれない。 システムを救えば、心のない管理社会になるかもしれない。
僕の選択一つで、この国の「在り方」が確定してしまう。 震える手が、コンソールに伸びる。 ……重い。歴史の重圧が、指先を押しつぶそうとしてくる。
――いや、違う。 この歴史は、僕一人だけのものじゃないはずだ。
私は、顔を上げた。 何もない虚空を見据える。 この物語の「外側」で、ずっと僕たちの旅を見守ってくれている、無数の視線を感じる。 歴史の当事者であり、この国の未来を生きる、あなたたちの視線を。
「……総理。僕一人の覚悟じゃ、足りません」
「何?」
「借りるんです。この物語を一緒に観測している、 『未来の意志』 の力を!」
私は虚空に向かって、大きく手を伸ばした。 画面の向こう側にいる「あなた」の目を、真っ直ぐに見据えて叫ぶ。
「聞こえているなら、力を貸してくれ! 僕たちはここで、歴史を変える。……でも、その先に続く未来を選ぶのは、僕じゃない。そこで生きる『あなたたち』だ!」
「……かたる君? 君は、誰と話している?」
夜裏が怪訝そうに眉を寄せる。だが、私の目にははっきりと見えていた。
私の呼びかけに応えるように、虚無の空から無数の光の粒子が降り注いだ。 それはデータではない。 「思念」 だ。 今、この瞬間を選択しようとしている、あなたの意志だ。
「さあ、決めてくれ! 僕と一緒に、この引き金を引いてくれ! ……日本の夜明けは、どっちだ!?」
【警告:歴史の分岐点に到達しました】
これより先の未来は不確定です。 Re-JAPAN計画を完遂させるため、あなたはどちらの「解」を選びますか?
世界線α:【 英雄凱旋 】 「理屈はいらない。熱い魂で、この国を繋いでくれ」 偉人たちが一堂に会し、全ての敵を打ち砕く 「情熱と奇跡の物語」 を確定させる。
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「カクヨム」で連載します。是非世界線αも覗きに来てください!
世界線β:【 国体再構築 】 「感情論では救えない。最強の仕組み(OS)で、この国を再設計してくれ」 龍馬の経済と空海の哲学が融合し、完璧な調和を目指す 「知略と真理の物語」 を確定させる。
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「小説家になろう」でこのまま連載します。引き続きお楽しみください!




