第30話 命中
「痛い。よくもやってくれたわね」
目の前には平気そうな魔族。攻撃を受け続け、傷ついた体は治せるが、精神ばかりは治すことができない。それだけじゃない。魔力も尽きかけている。そんな中、目に入ったのはポーチの中。入っていたのは
「【G魔力回復薬】!」
私は迷わずに飲んだ。一瞬ドクっと動悸がした後、身体には朝起きた時と変わらない魔力が漲った。
「すごい」
これだけすごい薬なら、副作用も相当大きいだろう。でも今はそんな事は考えていられない。
「【中級強化魔法】」
一気に魔族との距離を詰める。
「ビィイム・マジック」
魔族はフッと微笑んだと思うと。
「バリア。効かないって」
「ビィイム・マジック」
「はいバリア」
ビィイム・マジックを連続で発動した。その時この魔族はバリアを再発動させた。つまりこの技の効果時間は短い。それに反撃をしてこないのは、バリアを使ってから暫くはきっと攻撃ができないんじゃないのか? だったら、ここから何度もあいつにバリアを発動させ続け、魔力を切れさせる。幸い私にはG魔力回復薬がある。
「ビィイム・マジック」
「だからバリア」
「ビィイム」
「効かないってバリア」
「ビ」
「バ」
攻撃し、防がれる。こんなキャッチボールが何十回も続けば相手も痺れを切らすはずだ。
「はぁ。だから何回言ったらわかるの? 効かないって」
「私はあなたの魔力が切れるまで何度だってやるわ」
そう話す私を魔族は嘲笑し、言う。
「ははっ! バカじゃないの?」
「魔族の魔力がどれだけあるか知らないの? そこら辺のやつでも人間の5倍はあるわ?」
「それに私は天才と呼ばれる側の魔族。あなた程度がどれだけ粘ったって、私の魔力は切らせないわ」
私は何度も理論と努力を積み重ねていった人間だ。だからこそ言える。あきらめなければ、勝つことは可能。
「どんな天才だって、何も食べずに、眠らなかったら死ぬ。だから我慢比べよ」
「あなたか私、どっちが先に死ぬかのね」
そういいながら、G魔力回復薬を飲む。G魔力回復薬はあと358回分ある。この戦闘中に切れることはきっとない。
「人間のくせに張り合うなんて、生意気じゃないの」
ビィイム・マジック→バリア→ビィイム・マジック このサイクルの繰り返しが何時間も続く。そのなかでG魔力回復薬は一つ、また一つと減っていった。
「グチョ」
私の口の中から血が吹き出す。きっと副作用だ。
「大丈夫かしらぁー? そろそろ限界なんじゃなーい?」
「まだまだ。全然余裕よ」
そんなことはない、頭痛がする、それに目眩だって。身体が辛い。でもここで辞めたら、死ぬ。副作用でボロボロになった身体を無理矢理なんとか回復魔法で治す。
100回、また100回とビームとバリアの攻防は続いていく。このサイクルが続いていく内に、私の体はどんどんボロボロになっていった。体は治っても、痛覚や傷ついた精神は治らない。
「ビィイム・マジック」
私の放った魔法の光が魔族の頬を掠めた。身体はボロボロ。体力は限界。でもようやく勝てる見込みが見えてきた。何度も吐血、回復、攻撃。その繰り返し。でも、確実に勝利は近づいている。まだまだ魔力回復薬は残っている。
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体感三日ほどが経った。私に時間を教えてくれる時計は空腹だけだった。幸い、栄養補給の魔術も心得てある。
「はぁはぁ……。あんたしつこいわね」
「言ったでしょ? あなたの魔力が切れるまでやるって」
「でも大丈夫? 中級の回復魔術の限界はとうに見えてるでしょ? 無理やり回数で治しているようだけど、そんなんじゃ、脳みそも心もダメになっちゃうわよ?」
「うるさい!!」
「ビィイム・マジック!!!」
私の攻撃が遂に、敵に届いた。
しかし、束の間、ほんの数秒。敵に攻撃が命中してからすぐ。
「ぐぼッ!」
私は胸を貫かれた。
「一発当たったところでね? 死ぬわけじゃあないのよん?」
「私の魔力もだいぶ限界だったけどね? 別に魔力=生命力じゃあないんだから」
魔族は私の髪の毛を引っ張り自分の目の前に顔を持ってくる。
「勝てると思った? おバカさん♡」
「――私のま・ほ・う。命中しちゃったわ♡」




