第28話 ヴェオスの最期に見たもの
俺の血が流れ、広がり、そしてヴェオスの血と混ざる。二つの別の魔力を含む血が混ざった場合、血の動きは、より強い魔力の言うことを聞く。ヴェオスが先程剣の形にしたのは、ヴェオスが床から集めた血。奴は自分の血だけを集めたつもりだろうが、俺の魔力操作で奴の血に俺の血を纏わりつかせておいた。
「またですか。何度首を切ろうと、私には再生能力がある。悪足掻きも良い所ですよ?」
悪足掻き? 違う。必要だったのは数刻の時間。本来、俺のような剣士職に就いている者は、魔法を使うことができない。だが【魔法剣】の特技を使えば、話は変わる。【魔法剣】は剣限定で魔法を発動させることができるスキル。俺が血で剣を形作ったり、奴の左腕の刃を剣と見立てて操ったのもこのスキルのおかげだ。【下級解呪魔法】……。これを使えば、今俺に降り掛かっている呪いを解除できるかもしれない。だがこの魔法の発動時間、20秒は長すぎる。20秒も成すがままの姿勢でなければならない。あとヴェオスが首を治し終えるまでにかかる時間は大体4秒ほど。既に魔法を発動してから5秒が経っている。奴の首が治ってからの残りの11秒、何とかして稼がなければならない。
「もう首、治ってしまいましたよ? 貴方の寿命、たった10秒しか延びませんでしたね」
「10秒を笑うものは、10秒に泣く。この10秒を『たった』と見るか、それとも『運命が変わる可能性』と見るか、それで生死が別れることもある」
「はぁ……。話長いんですよ。貴方」
「魔族相手に、人間の考えを聞かせるのは無意味だったな。だが、貴様が律儀に俺の話を聞いてくれたお陰で、俺はこの呪いを解呪することができる」
「は? 何を言って――」
「【下級解呪魔法】」
俺の剣は光を放ち、俺の身体は燃えるように光に包まれる。身体から光が去った頃には、俺の身体の痺れと剣は消え失せていた。
「魔法剣だと!? その技術は300年前に失われているはず!」
「はぁ」
「【連撃斬・クロス】」
即座に血で二振りの剣を誂え、技を繰り出す。双剣術になったことで、連撃斬の単純効率は2倍。
「バサバサバサッ! ザクッ!」
血で形作られた剣は血の火花を散らせ、ヴェオスの身体中をズタズタに斬り裂いて行く。さすが吸血鬼と言ったところか。ヴェオスの身体は切られたところから再生する。しかしヴェオスは再生に気を遣う余り、反撃を要してこない。
「グ、がぁは!!」
異次元の再生能力持ちは切るだけでは倒すことができない。必要なのは炎。切ったそばから再生する前に焼いていけば簡単に倒すことができる。きっとヴェオスもそれをわかっていたから、魔法使いのフィオナと俺を隔離したのだ。
「ヴェオス。お前にとどめを刺そう」
「ブレイブ・スラッシュ!」
ヴェオスの首を切る。今までのようにただ切るだけではない。必要な工程は済ませる。
「『スクロール・火炎魔法』」
「【魔法剣】」
「【炎帝斬】!!」
ヴェオスの首から下を炎の刃が焼き尽くす。再生を防ぐため、ヴェオスの首の断面も焼く。炎が収まった時、ヴェオスの残った部位は生首だけだった。
床に落ちているヴェオスの生首を、俺の足の長さ程の高さの台座に乱暴に置く。 ヴェオスの生首は、段々と塵になっていく。体のほとんどを完全に失えば、吸血鬼でさえ死ぬ。
「ハハハ。最期に見るものがこんなものとは、事実は小説より奇なり。ですね」
「ヴェオス」
「何です?」
「お前は情緒不安定で、気色の悪い魔族だった」
「ハハハ。今際の際に聞くのが自分への悪口とは、これもまた面白い。お礼に、良い事を一つ教えて差し上げますよ。結界から現実に戻るタイミングは三つの結界とも同じ。貴方のお仲間の生死をあなたが決めることは出来ない」
「問題ない」
「そうですか。魔王様を殺す存在が、あなたではなく寿命であることを願いますよ」
そう言い残すと、ヴェオスは塵になって消え去った。それと同時に、結界にヒビがはいる。ヒビから漏れた光はとても明るく、少し眩しい。この光の様にまぶしい結果が結界の壊れた先で待っていることを切に願う。
次回フィオナ視点のお話です!! 不治の魔族編はもうちょっと続きます




