27話 立派な勇者
会話と説明が多めな本文!! よろしくお願いします!
「なに……?」
――ブレイブスラッシュ
ヴェオスの生首はストンと落ち、首から下はその場に立ち尽くしていた。釣られた魚が暴れ回るように、ヴェオスの目は、ギョロギョロと暴れ回っている。
「何故だ。なぜ人間が? それは吸血鬼の技のはずだ!」
ヴェオスの眼の動きが止まる。その視線は、今しがた折れたはずの剣を指していた。俺の右腕に握られているその剣は、折れたところを境に紅に染まっていた。
「『人間がこの技を使えない』。などというのは間違いだ。実際には、『人間と魔族では、血液の価値が違う』というのが正しい」
「人間は血液や内臓など、重要な器官や体液を失えば死ぬが、魔族は魔力さえあれば器官や体液などいくらでも生成できる。」
「技量の問題もあるだろうが、大量の血液を失うこの技を、血液を失うと死ぬ人間はわざわざ使わない」
少し説明が長引いてしまったが、相手は魔族。このくらい詳しい説明でないと理解できないであろう。
「人間が、まさかこんな単純な術式すらも研究できないとでも思っていたか?」
ヴェオスの生首に煽るように語り掛けると、
「私は少々見くびっていたようですね。人間を」
ヴェオスは切られた首の断面から滴る血を合わせ、首と身体をくっつける。くっついた身体を馴染ませるように辺りを見回してから、もう一度俺に向かい直す。
「うーん。首の凝りが治ったようですね。感謝しますよ」
「そうか、それはよかっ多重斬撃!」
剣は残像のように数を増やし、ヴェオスに襲いかかる。ヴェオスの不意を突き、確実にきり伏せるための斬撃。ヴェオスは、左の袖についた血を固まらせ、斬撃を防ごうとする。然し、剣とその残像は、連続的な攻撃でガードを突破し、左の手首から先を切り飛ばす。
「不意打ちですか、卑怯な真似をしますね。それでも勇者なのですか?」
「そう有りたいと思ったことはない」
「ああ。そうです、か!」
ヴェオスは左腕から吹き出した血を飛ばす。飛ばされた血は空中で固まり斬撃となり此方を襲う。
「勇者奥義・其の三:断魔の剣」
俺は血の斬撃を斬撃で打破する。撃ち落とされた血の斬撃は、変形せずにそのまま地面に零れ落ちた。
「魔力は縁を巡る。本来身体から離れた部位の魔力を操ることは不可能だが、血は血縁を通して操ることができる。ならば、そもそも血に宿る魔力を絶ってしまえば、血を操られることはない」
「ほう。つまり、血のなかの魔力を断つ事で、血の操作を不可能にしていると」
「ああ。そういうことだ」
「これは面白い! 相性最悪じゃないですか!!」
そう。ヴェオスの言う通り、この技とヴェオスの技は相性最悪。それもそのはず、勇者奥義は勇者が魔族と戦うため、魔族に対する特効として作られた技だ。魔族の使用する技への大体の対策は取られている。
「はぁ……。最悪な気分です」
「そうか」
「まさか……」
「――こんな真似をしないといけないなんて!」
「パチンッ!」とヴェオスが指を鳴らすと同時に、雷に打たれたかのように、痺れが走る。俺は、「ハァハァ」と息が荒くなり、その場に蹲る。今も尚出血し続けている脇腹が痛み、床に血溜まりが広がる。
「すみませんね。こんな卑怯な真似をしてしまって。ですが、私は魔族。卑怯な真似も視野に入れておくべきでしたね」
「俺に何をした?」
「あなたが悪いんですよ?」
「なん……だと?」
「あなたが、あの男の傷を直してしまったから。あの男には、私の意思で発動できる呪いをかけておきました。それをあなたが、自分の身体に移してしまったのですよ!! なんと愚か! 素晴らしい!」
「そう……か」
「わざわざ助けずに、見捨てていれば、あなたはこんなことにならずに済んでいた!! あなたは後悔するでしょう!! あの時、あの男を見捨てていればよかったと!」
「そうか……。やはり……お前は魔族だ。何もわかっちゃいない」
「なに?」
「俺は、死にかけで助けられる人間を見捨て、人を助けたことを後悔するほど、立派な勇者をやれているつもりはない」
「はぁ」
ヴェオスは、蹲る俺を尻目に、血液で俺の足の長さほどの台座を形作る。そして、台座を作り終えたヴェオスは、今度は床に広がる血液を集め、左手に剣を形作る。
「がっかりですよ。貴方程冷静な方が、冷静なまま死んでいくなんて」
「貴方の首を、この台座に飾ってあげますよ。お仲間も一緒に。これで寂しくないですね」
ヴェオスは、俺の首に刃を振り下ろす。しかし、その刃は俺に届くことはなかった。ヴェオスが俺の首に振り下ろしたはずの刃は、いつのまにかヴェオス自身の首を切っていた。
「――混血形」
次回で! 本当にヴェオス戦終わらせます!!




