第7話・入院
王都の治療院の一室、ティグリオとの闘いでボロボロになったリュートはベッドで横になっており、その周りには話を聞いたリュートの家族が集まっていた。キャスリーはリュートの横にいる。
「まったく、勝手に飛び出していったと思えばこの馬鹿息子達は……」
アメリアはリュートを睨みながら言った。
「アハハ……すいません。」
リュートはバツが悪そうな顔で謝る。
「まあまあ母さん、その女の子も助かったんなら……」
「そういう問題じゃありません!」
ランディはなだめようとするが、アメリアに怒鳴られ黙る。すると突然部屋の扉が開いた。全員が目を向けると、部屋に入ってきたのは治療を受けた様子のアリカとキャロルだった。後ろに身なりの良い中年の男性が着いている。
「誰?」
アメリアがカイトに尋ねる。
「さっきボコボコにやられてた姉ちゃんだよ。」
アリカの胸に何かが突き刺さったような気がしたので、リュートはカイトの脳天にチョップを叩き込む。
「言葉を選べ。」
「イテテテ……」
カイトは頭を抑える。
「気にしないで、本当の事だし……さっきは助けてくれてありがとう。」
そう言うアリカだが、明らかに落ち込んでる様子だった、気を取り直してリュートにお礼を言う。
「君がアリカを助けてくれた男の子か、本当にありがとう。」
身なりの良い男性はベッドに近付き、リュートに向かって頭を下げる。
「えっと……」
身なりの良い男性が頭を下げてきた事で、リュートは戸惑っている様子だった。
「失礼、私はオーウェル・エリステラーダ、この子の父親だ。」
「アリカ・エリステラーダです、よろしくお願いします。」
「キャロル・ミニアレスタです。」
ルドルフに続いて二人も名乗る。
「俺はリュート、リュート・テニオレヒトです。」
「カイトです。」
「ランディ・テニオレヒトです。」
「アメリア・テニオレヒトです。」
「私はキャスリー、よろしく。」
「なっ!? 猫が喋った!?」
「やっぱり、気のせいじゃなかった!?」
オーウェルとアリカが驚きの声を上げる、それに対し、リュート達はキャスリーが猫妖精である事を伝えると、三人はさらに驚いた様子だった。
「まさか猫妖精を目にするとは……」
オーウェルはキャスリーをジーっと見つめていた。
「ていうかよく街中にいて騒ぎにならなかったわね。」
「認識阻害の魔法を使っているのよ。」
アリカに対し、キャスリーが答える
「認識阻害って、かなり高等な魔法だよね……」
キャロルも驚愕の表情を浮かべていた。
「戦闘以外の魔法は大抵使えるわ。」
「そう言えば、アリカはなんであいつと闘ってたんだ?」
リュートがアリカにティグリオと戦ってた経緯を問う。
「えっと、それは……」
「私が、ティグリオに悪口を言われたの。それで、アリカが怒って闘いを挑んで……」
アリカが言い辛そうにしていると、キャロルが説明する。
「まあこの子は色々と訳ありでな、その辺は詮索しないでもらえると助かる。」
オーウェルはキャロルの肩に手を置いて言う。
「それにしても嫌な奴だったねー、その上兄ちゃんと互角にやりあうなんて……」
カイトはティグリオの事を思い出していた。
「あいつはティグリオ・ヴァルアルドと言って、この町じゃ有名なならず者だよ。」
「ヴァルアルド?」
オーウェルが言ったティグリオのフルネームにランディが反応した。
「あなた、何か知ってるの?」
「ああ、ヴァルアルドといえば確か公爵家だった筈だ。」
「マジで!? 貴族じゃん。」
ランディの言葉にカイトが驚く。
「ああ、しかし、そんな悪い噂を持つ家ではなかった筈だが、むしろ民からも慕われてる名家の筈……」
「ヴァルアルド家からもならず者呼ばわりされていてな、ほぼ絶縁状態らしいんだ。」
「なるほどな……しかし、あれ程の家からそんな男が生まれるとはな……」
「さてと、そろそろお暇させてもらおう、この子の治療もまだ終わってないのでね。」
オーウェルがアリカの肩に手を置いて話す。
「それじゃあ、また」
アリカが手を振りながら言う、キャロルも頭を下げる、三人はそのまま病室を出て行った。
「私からも一つ言っておくことがあるわ。」
一家全員がキャスリーに目を向ける。
「あのティグリオとか言う奴、リュートと同じ力を持っているわよ。」
一家全員が驚きの表情を浮かべる。
「俺と同じって、ドラゴンの力をか?」
「ええそうよ、だからあの鎧の魔法を使っても平然としてたのよ。」
「なんか変ね、ドラゴンの力を持った人間が二人も……」
アメリアは顎に手を添えながら言った。
「ふむ、何か原因があるのだろうか……」
「そう言えば兄ちゃん、最後に使ったあの魔法は何だったの?」
カイトはティグリオを鎧ごと吹き飛ばしたあの魔法について尋ねる。
「ああ、あれか、魔力をそのまま収束してぶつけただけだよ、まだ未完成だけどな。」
「え、あれで?」
カイトはあれ程の威力を持っていながら未完成であった事に驚く。
「前方に爆発しただけだからな、本当なら遠距離に届かせたい所で……」
「なんの話?」
アメリアが二人に尋ねたので、リュートは最後に使った魔法、「魔衝砲」について答える。
「隠れてそんな物を練習してたのかお前……」
「まあ、せっかくの力だしね……」
前世で読んでいたバトル漫画に憧れて、とは言えないので誤魔化すリュートであった。
「でも黙ってそんな危険な技を使うのはどうなのかしら~?」
「イテテテ……ごめんなさい……」
アメリアに頬を引っ張られるリュートであった。




