第3話・異質
今回は主人公視点で進行します。
夜、父さんの言うとおりに俺と母さんと三人でリビングに集まり、椅子に腰掛ける、カイトは治癒の術式をかけた状態で着替えさせて寝かされている、それにしてもやけに体の節々が痛い……
「あなた、リュートの魔力についてって、確かリュートって魔力が無い筈じゃあ……」
そう、俺は確かにカイトが産まれた頃にはっきり聞いているのだ。確か産まれてすぐに魔力を調べてその時に無かったから無いことが確定したらしい。
「ああ、確かにリュートが産まれた時にすぐ魔力を調べたんだ、その時は確かに魔力が無かったんだが……その前にリュート、あの盗賊達を倒したのはお前だな?」
「え? う…うん。」
「ちょっと、どういうこと?」
盗賊達とのいざこざについて何も知らない母さんが訪ねて来たので、父さんが事細かに説明する。
「けどリュート、あんた魔力も無いのにどうやって倒したの?」
母さんが訝しげな様子で聞いてくる、しかし俺は答えられない、何故なら……
「正直、頭に血が上ってて、どうやったかは……うーん……」
そう、俺はあの時カイトを傷つけられた怒りで頭に血が上っていたせいで半ば我を忘れてて記憶が曖昧なのだ、父さん譲りの体術を使った事だけはかろうじて覚えてる。俺が思い出せずに唸っていると、父さんが口を開いた。
「数年間黙っていた事なんだが……実はカイトが産まれて少したった後、リュートの魔力を何度か調べてな……あることが解ったんだ。」
父さんは一呼吸おいてから改めて口を開く。
「リュート、お前には魔力が確かにある、しかも成長と共に増えてるんだ。」
「マジ!? ……え? 増えてるって、魔力が?」
父さんから告げられた事実に驚くが、その後の言葉に疑問が沸いた。
「ちょっと待って、魔力って、自然に増えるもんだっけ?」
「増えないわよ、普通。」
以前聞いた話では、魔力は本来生まれつきで決まる物であるらしい、人為的に魔力を上げる方法はあるものの、成長と共に魔力が上がるなど本来はあり得ないらしい、にもかかわらず、俺の魔力は成長と共に増えているらしい。
「それだけじゃない、例え魔力を持っていたとしても、それだけであれだけの人数を相手に勝てるわけがないんだ。」
「……へ? どういうこと?」
「忘れたのか? 前に話しただろう、魔力を扱うには魔具がいると」
「……あ。」
そうだ、思い出した、例え魔力を持っていたとしてもその魔力を扱うにはカイトの杖や父さんの剣のような魔具がいるのだ、一応魔具無しでも身体を少し強化したりは出来るが、基本的に魔具無しで魔法を使えるのは相当熟練の魔法使いだけである。
「あれ程の人数を相手に圧倒するなんて、魔法を使ったとしか思えない、しかし、魔具も持たないお前が魔法を使える筈が無いんだ。」
父さんの説明に益々混乱してきた、言われてみれば魔法が使えるとして頭に血が上っててろくに考えられない状態だった俺に魔法が使えるとは思えない、本当どうやったんだ俺……単なる火事場の馬鹿力かな……?
「成る程ね、だいたい見当ついたわ。」
「!? 誰だ!」
明らかに母さんの物ではない女の声が突然聞こえ、父さんが声を上げた。俺達三人は立ち上がり、周りを見回すが、姿が見えない。
「それじゃ見えるわけないでしょ、下よ下。」
三人とも俺の足元にを向ける。するとそこには一匹の黒猫がいた。
「こんばんは。」
「猫が喋った!?」
俺が驚きの声を上げると、母さんと父さんが口を開いた。
「まさか……」
「猫妖精か!?」
「ご名答、アタシは猫妖精のキャスリーよ、よろしくね」
猫妖精、妖精族の中でもかなり高名な種族である、妖精の中でも大きな魔力と聡明な知恵を持つが、その数は数える程しかいないという。
「猫妖精……」
「まさか、この眼で見る日が来るとは……」
そんな世にも珍しい猫妖精に出会い、俺の両親は驚愕に満ちた顔をしていた。
「えっとそれで、キャスリー…だっけ? 俺の力について何か知ってるの?」
「ええ、実は盗賊達との戦いもこっそり見ていたの。」
キャスリーがテーブルの上に飛び乗る。
「まずはあんたの魔力が増えている事についてだけど、多分地脈から魔力を得ているわね。」
「地脈から魔力を……?」
「どういうこと?」
キャスリーの説明によると、普通人間やエルフなどの魔力を持った者は自らの体内で魔力を生み出す、しかし俺は大地を流れる地脈のエネルギーを魔力に変換して身体に貯めている、その為生まれた時は魔力を持っていないらしい。
そして次に、俺がどうやって盗賊を叩きのめしたかについてだが、知識を生かした術式で魔力を変換する人間やエルフと違い、俺は感覚で魔力を直接操っているという。だから魔具無しで肉体を著しく強化できたり、魔力で遠くの物を動かす事も出来るという。
「魔力を直接操る力……」
「確かにそれならあの人数に勝てたのも納得できる……しかし……」
「それにしても、何故そこまで知っているんだ?」
俺はキャスリーに問う。
「以前聞いた事があるのよ、本来はどっちもとある種族だけが持つ特性よ。」
「とある種族って……?」
「ドラゴンよ。」
「なに!?」
「ドラゴン!?」
母さんがキャスリーに問い、その答えに両親が驚きの声を上げる。
ファンタジー世界の王道中の超王道種族、ドラゴン、それはこの世界にも当然のごとく存在している、父さんから聞いた話では世界最強の種族、災害と繁栄の象徴等と呼ばれており、かつて世界一の国土を誇っていた大国がたった一匹のドラゴンの怒りに触れた事で滅亡したという昔話もある程だという。
「どう言うことだ、何故ドラゴンの特性がリュートに。」
「そこまでは知らないわ、私はあんた達の話を聞いて見当がついただけ。」
キャスリーはそう言うと俺の方に寄って来る。
「で、あんたこれからどうすんの?」
「どうって?」
「私としては魔力の使い方を勉強した方が良いと思うわよ、身体痛むでしょ?」
「そうなの? リュート。」
「そうなんだよ、やけに節々が痛むんだ。」
母さんの問いに俺が答えると、キャスリーが話し始めた。
「多分盗賊とやり合った時、怒りで魔力が暴走気味だったから身体に強い負荷がかかったのよ、普通術式とかで緩和される物だけどあんたは直接魔力を扱うから負荷が激しいの。」
「本来ドラゴンの特性はドラゴンの強靭な身体あっての物なのよ、人間のひ弱な身体でドラゴン並の魔力なんて使ってみなさい、身体が負荷に耐えられず壊れて、最悪お陀仏よ。」
俺はキャスリーの言葉に軽い恐怖を覚えた、俺の身体はそんな爆弾を抱えてるのか……
「リュート、お前確か今16歳だよな。」
「そうだけど?」
「良かったら、王都の魔法学園に編入しないか?」
「王都の学園に?」
「そうだ、俺達が若い頃に通っていた学園だよ。」
「私もそうした方が良いと思うわ、また今回みたいなケースで暴走したら危ないし」
父さんからの提案に母さんが賛同する、魔法学校か……正直、俺はまったく力の使い方を知らないし、せっかく魔力を持ってるなら……
「そうだね、俺も魔法を学びたいし。」
「決まりだな、では早速……」
父さんが早速準備に取りかかろうとする、しかし……
「今日はもう寝ましょう、だいぶ遅い時間よ。」
母さんによってストップがかかるのだった、そう言えば夜だったよ。
「これから面白くなりそうね、しばらくあんたに付きまとわせてもらうわ。」
キャスリーが俺の頭に飛び乗る。猫妖精を学園に連れていったら騒ぎになるのでは……
新キャラ登場、猫妖精のキャスリーです、主にその知識で主人公に色々助言していく立場になります。




