第1話・発端
俺が転生してから早くも16年の月日が流れた、この世界で俺は田舎の小さい農家にて「リュート・テニオレヒト」という新しい名前を貰った。今は夕方、父さんの野菜畑で収穫を手伝っている。
「よしリュート、今日はここまでにしよう。」
「オーケー。」
手拭いで汗を拭い、収穫した野菜をリアカーに乗せて父さんと家に戻る。俺は15年でこの世界の事を学んだ、まず驚いたのはこの世界は魔法が当たり前にあるファンタジーな世界だということだな、ただし科学技術は発展しておらず、ちょうど中世ヨーロッパくらいの文明だということだ。
「お疲れ様、二人とも、ご飯出来てるわよ。」
「父ちゃん、兄ちゃん、お帰りー。」
母さんと弟のカイトが俺達を出迎える。ちなみにカイトは5歳下で母さん似の黒髪褐色だが目は父さん似の青目だ。
「お、今日はシチューか、相変わらず旨そうだなー。」
「ええ、カイトが狩りを頑張ってくれたから。」
「へへーん、兎5匹に猪2頭、すごいでしょー!」
「それはすごいな! 父さんも鼻が高いぞ!」
俺の両親は既に引退しているがこう見えてかなりの魔法剣士だった、カイトはその両親に似て生まれた時から魔力が人一倍でかいらしく、既に風の刃を飛ばしたりなど様々な魔法が使えるのだ。
え、俺?……お察し下さい、ちょうどカイトが生まれた頃に父さんからはっきり言われたのだ、せっかくの魔法の世界だってのに、トホホ……いいもん、俺には父さんから教わった体術があるもん。
「良いよなカイトは、俺も魔法が使いたいよ。」
「ふふーん!」
「止めなさいカイト、リュートもそんな卑屈なこと言わないの、あなただって身体能力は十分すごいんだから。」
自慢気などや顔のカイトを嗜める母さん、そうは言っても、やっぱ魔法は使える方が良いわけで……とか思っていたら父さんが何やら物思いに耽っていた。
「どうしたの、父さん。」
「……ああいや、何でもない。食事にしよう。」
「……? うん。」
何でもないって、割と深刻そうな顔だったような……まあいいか。
=====
リュートが家族で団欒と夕食を楽しんでいた時、事件は起こった。
ドンドン ドンドン
「……なんだ?」
突然家のドアを叩く音が響いた。リュートの父、ランディがドアを開けると、ガタイの良い髭の生えた男性がいた、近くの農家、イングラム家の亭主だが、何やら切羽詰まった表情だった。
「おや、イングラムさん、どうかしましたか。」
「ランディさん、シャリーが帰って来ないんだ! 頼む、探すのを手伝ってくれ!」
「なに!?」
「シャリーが!?」
ランディとリュートが驚く、シャリーというのはイングラムの一人娘である。
「ああ、さっき女房と喧嘩して、飛び出したっきり戻って来ねえんだ。」
「まずいんじゃないかしら、確か最近森で盗賊を見かけたって……」
「……アメリア、二人を頼む。」
ランディは暖炉の上に飾ってた剣を腰に差す。
「気を付けて、あなた。」
「わかっている、二人とも、アメリアについて、大人しくしていろよ。」
ランディはイングラムと一緒に森へと向かう。
「二人とも……リュート、カイトは?」
「え? ……おい、カイト!?」
さっきまで一緒だった筈のカイトがどこにもいなかった。カイトの部屋に駆け込むと、窓が開いており、カイトの愛用の杖が見当たらなかった。
「杖が無い……まさかあいつ……!」
「シャリーちゃんを探しに……?」
カイトは歳が近い事もあり、シャリーと一際仲が良かった、恐らく話を聞いて居ても立っても居られなくなり、飛び出したのだろう
「くっそ、あの馬鹿!」
開いている窓からリュートも飛び出した。
「ちょっとリュート!」
「母さんは待っててくれ、引きずり戻してくる!」
カイトを追って森に入るリュート。
=====
俺はカイトを探して夜の森の中を走り回っていた。
「どこだ……カイト……」
時間的にそんな遠くには行けない筈なのに、姿が見えない、風の魔法を使って加速したのか……
いくらカイトが魔法を使えると言っても簡易的なものばかりだ、ましてや戦闘に使える魔法となるとその数はかなり限られる、盗賊が大勢だとすると尚更敵うわけがない。
「カイトーー!!」
大声で名前を呼ぶが返事が無い、既に盗賊と遭遇しているとしたら、下手するとカイトの命は……
「くそっ……!?」
カイトを探して焦っていると、遠くから何かを感じた。何だ……何か熱か光のような……まさか……まあ良い、行ってみるしかない。俺は何かを感じた方向へ急いで向かう、火事場の馬鹿力という奴なのか、自分でも妙なくらいに体が軽い、みるみる内に距離が詰まり、あっという間に感じた場所に着く。するとそこにいたのは、十数人の盗賊らしき男達と、オレンジでツインテールの少女、シャリー、そして……ボロボロになったカイトだった。
それを見た俺の心の中で、炎が燃え上がった。その炎は瞬く間に俺の心の中で燃え広がり、俺の心を埋め尽くした。
「何だテメエ? まさかテメエも俺らの邪魔しようってんじゃねえだろうなぁ。」
盗賊の中の1人が俺に気付き、話しかけてくる。しかし、もはや俺の頭にその声は入らない。
「お前ら……俺の弟に何をした?」
「弟? ひょっとしてあのガキの事か、ちょっと魔法が使えるからって調子に乗ってやがったからよ、大人の邪魔するとどういう事になるか教えてやったんだよ!」
そうか……なら話は早い。
「何ならテメエにも教えてやグベェ!!」
男の顔面に拳を叩き込む、殴られた男は数メートル吹っ飛んだ。
「な……何だ!?」
他の盗賊も俺に気付く。
「テ……テメエ、俺達が誰だかわかってンのかコラァ!!」
俺は前世では一人っ子だった、兄弟というのは俺にとって初めての経験で、兄としての心構えは俺にかなりの変化を与えた、カイトは俺にとってかけ替えの無い弟だ、そいつをボロボロにした奴らの声なんて何も聞こえない。最早俺の心にあるのは……
許さない……ただ、その一言だけだ!!
次回、キレた主人公による無双タイムです。




