第9話『敵か味方か!?白騎士の襲来!! うなれ超必殺のライトニングハイパーダークネスデンタルスラッシュブリンガー!!!!』
「ごめんシノン姉ちゃん! オレ追いかけて連れもどしてくるよ!!」
オレはカンチョー公園から飛び出したスラッシュハンドレットハウンドを追いかけた!
追いつけないで見失っちまうかも、って思ったけれども、片手の爪だけ長いのがはしりづらいのか、いつもより走るスピードが遅くてなんとかついていけた!
それでもあきらめずに逃げ続けるスラッシュハンドレットハウンド。
「そんなに爪切りがイヤなのかよ!!」
「ウニ゛ャーーーーッ!!」
それから何分も走って、オレの体力が尽きかけたころ、前を走るスラッシュハンドレットハウンドがピタリと止まった。
やっと観念したのか?
でも何か様子がおかしいぞ? 追いついたオレの荒い息が聞こえないワケじゃないだろうに。
「ハァッ、ハァ、つかまえたぞ!」
後ろから抱き上げたスラッシュハンドレットハウンドはオレに抵抗しなかったが、
「ヴゥーーッ」
前を見たまま低い声でうなった。
「なんだ?」
オレがその視線を追うと、ソコには見たこともないヤツがいた。
金ピカのヨロイだ。
頭から足の先まで全部がヨロイでおおわれている。
全身が金ピカでギラギラしていて、その上にジャラジャラとアクセサリーをいっぱい付けている。
少し横を見るとドアが壊された質屋さん、まさかアイツ、強盗したのか!?
そこでオレの腕の中でスラッシュハンドレットハウンドが光を放つ!?
「うわあっ!?」
そして光が収まると、抱きしめたままでスラッシュハンドレットハウンドが魔法少女になっていた!?
「きゅ、急に変身するなよお!?」
「ケット、あの金ピカ、アクトゥーだにゃん」
アクトゥー!? コナが言っていた、魔法少女の敵か!?
「ちょうど良いにゃ、アレで爪研ぎすれば今夜の爪切りは無しにゃん」
左手の爪をかかげ、腰をしずめるスラッシュハンドレットハウンド。
「た、戦うのか!?」
「ケットは下がっているにゃ、今日はおニャンの狩りを見て覚えろにゃん」
「お、オレも一緒に戦うぜ!」
「にゃ⋯⋯それじゃあここからおニャンに指示してみろにゃ」
「わかったぜスラッシュハンドレットハウンド!! よし、まずはその爪で攻撃だ!! いけ、ライトニングハイパーダークネスデンタルスラッシュブリンガーだ!!!!」
「え? 今にゃんて?」
「3回転して爪に力を溜めてから地面を削りながら近付いて、振り上げて切ってそこから100連突きして、飛び上がって切り下ろして、背中を向けたら相手が大爆発する必殺技だぜ!!!!」
「⋯⋯適当に切ってくるにゃん」
走り出したスラッシュハンドレットハウンド
「あっ!? だから3回転してから!?」
「フシャーーーーッ!!」
正面からアクトゥーに飛びかかり、長い左爪を上から振り下ろすと、ギャン! とスゴい音をたてて頭に命中した!!
よろけて頭を押さえてる! 切れてはいないけれども効いているのか?
「いいぞスラッシュハンドレットハウンド! こんどはウルトラインフェルノボルケーノフリーランスブレイカーだ!!!!」
「いちおう聞いてやるけどなんにゃ!」
「背後に回り込んで相手がおどろいて振り向いたらもう1回背後に回り込んで、そこから10連切りして少し遅れてから切った所がズバババンってなって、爪に力を集中して地面とか空間がズゴゴゴって揺れて、そこからトドメの突きを撃って相手を突き抜けて、一瞬の後で相手が大爆発する必殺技だぜ!!」
「聞いたおニャンがバカだったにゃん」
作戦を練っている間に、アクトゥーは体に付けていたアクセサリーのひとつをむしり取ってチェーンを振り回した。
すると回転するごとにそのアクセサリーが大きくなり、アクトゥーが回転を止めた時にそのアクセサリーは巨大なハンマーみたいな大きさになっていた。
「⋯⋯後ろに回り込むとこだけは採用してみるにゃん」
近付き回り込もうとするスラッシュハンドレットハウンドに合わせて、巨大アクセサリーを振り回すアクトゥー。
しかしスラッシュハンドレットハウンドはその攻撃をスルリとかわす。空振ったアクセサリーは地面にヒビを入れ、その振動は離れているオレの足にまでとどき、その力を伝える。
「ニ゛ィ゙ャッ!!」
空振りで大きな隙をさらしたアクトゥーの背中にスラッシュハンドレットハウンドはさっきよりも力を込めて爪を振り下ろす。
ギャリイイイイン!!!!
さっきの攻撃よりもスゴい音がしたが、スラッシュハンドレットハウンドに向き直り、オレに見えたそのヨロイの背中には薄い傷しか付いていなかった。
「⋯⋯これならホント、今夜の爪切りは無しかもにゃ」
見詰めるデスねこハンドの左爪は少々削れ、そのうちの一本はほんのわずかだけど欠けていた。
その後しばらくは一進一退の戦いがくり広げられていた。
アクトゥーの大振りをかわして左手で切りつける、そしてお互いの爪とヨロイが少しずつ削れていく。
だけどスラッシュハンドレットハウンドはこのこう着状態にイラつきはじめて、動きが雑になってきている。
このままじゃアクトゥーの攻撃に当たってしまうかもしれない、どうすれば良いんだ?
⋯⋯そうだ! 斬撃が効かないのなら、
「スラッシュハンドレットハウンド! さっき公園で強いパンチも打てるって言ってただろう! 打撃でヨロイの中身に衝撃を与えるんだ!!」
「にゃ〜るほど、ケットにしては良いアイデアにゃん」
スラッシュハンドレットハウンドは爪の伸びていない右手を握り込み、アクトゥーの攻撃を避けてできた隙に頭を殴った!
ゴオン!! と、爪の斬撃とは違う音が鳴り響くと、アクトゥーが片膝をついた! 効いたんだ!!
「に゛ゃ゛お゛お゛お゛お゛お゛ん゛ッ!!」
ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!ダンッ!!
体勢を崩したそのすきを逃さず、スラッシュハンドレットハウンドは何度も拳を振り上げてアクトゥーの頭を叩く! 家でキレた時にやっている、あの猫パンチだぜ!!
それにしても、斬撃だけじゃなくて打撃もイケるんだな⋯⋯スラッシュ呼びだと合わないのかもしれない。
「よし! スマッシュハンドレットハウンド! とどめの必殺技だ! ストレートマグナムドライブターンエンドレスシェイクスピアだ!!!!」
「一文字だけ変えてもにゃ⋯」
アクトゥーは巨大アクセサリーを強引に振り回すとスラッシュ改めスマッシュハンドレットハウンドを遠ざけた。
巨大アクセサリーは魔法で強化されていただろうけれども、何度も地面を打ちボロボロだったそれは最後に一度地面を打ち、ガシャンと音をたてて砕けた。
「あぁっ、うちの、商品がぁ〜」
質屋さんの中からはい出て来てたオジさんが砕けたアクセサリーに向けて手を伸ばしている。
そうか、アクトゥーが振り回していたのはあの質屋さんの物だったんだ。
アクトゥーは砕けたアクセサリーを捨てて、新しく二つのアクセサリーを左右の手で握り込み巨大化させた。
「やめてぇ、それ、どっちも2ケタ万円〜」
オジさんの悲痛な声、
「にゃ〜、こんどはその下品なアクセサリーを、おニャンのデスねこハンドで殴り壊してやるにゃん」
「スマッシュハンドレットハウンド! ま、まつんだ!!」
オレは思わず止めてしまった。
⋯⋯あのアクセサリーをアクトゥーじゃなくてスマッシュハンドレットハウンドが壊してしまったら、もしかして、オレが弁償しなきゃいけなくなるのか?
2ケタ万円って、10万円以上って事だよな?
オレのおこづかいやお年玉を集めても払えないお金だぞ!? ⋯⋯もうマンガやゲーム、カードも買えなくなっちまう!?
「アクセサリーを攻撃しちゃダメだ! 無い所を狙うんだ!」
「にゃ〜? めんどくさいにゃ〜」
しぶしぶ言う事を聞いてくれるスマッシュハンドレットハウンド。
ふぅ、助かった、と思ったら、アクトゥーが巨大化したアクセサリーを体に巻きつけた?
そして次々と他のアクセサリーも巨大化、全身をおおわれてしまった。
「アレじゃあ、どこも攻撃できないじゃないか⋯」
「ケット、アレはどうするにゃ?」
「総額3ケタ万円〜」
オジさんが微笑みの表情で涙を流しながら、か細い声でつぶやく。
くッ、オレたちはどうすれば良いんだ? 弁償が怖くて攻撃できないし、そもそもあのアクトゥーは宝石を巻いて、頑丈で強くなっちまってるよな?
ヤツの重量は増してスマッシュハンドレットハウンドとのスピード差は大きくなっただろうから、ヤられる心配も無くなったけれども、コレじゃどうしようもなくないか?
どうすれば、ド、どうすればドド良いドドんだドドドド!!
な、なんだ?
ドドドドドドドドドド!!!!
大きな音が近付いて、来る!?
バイクか? クルマか?
いや、
ダ チ ョ ウ だ あ!!!!??
ダチョウ!? 背中に白い服の誰かが乗っている!?
あ! アイツ知っている! 魔法少女集会にいたヘビの魔法少女、トグロだ!!
「横槍御免」
「グエエエエエエッ!!!!」
クルマ並の速さで走ってきたダチョウが、勢いそのままアクトゥーにキックをかました!!
ドッガッ!!!!
蹴られた部分の赤い宝石は一撃で砕け、アクトゥーは吹き飛ばされる。
「丁寧なカットは流行に左右されない良品でしたッ!?」
絹を裂いたようなオジさんの叫びに心が痛む。
「おいトグロ! そのアクトゥーの体に巻いてるアクセサリーはこのオジさんのものなんだ! 壊さないでくれ!!」
「貴い犠牲」
「ちょっとはためらえよ!?」
「このトグロちゃんに人質は効かぬ」
うう、コイツ、心が強いのか? それとも人の心が無いのか?
⋯⋯そうだ、コイツヘビだった! 哺乳類の心が無かった!!
砕けて転がる宝石をダチョウがつついて、あ!?飲み込んだ!?
「おい!? ソイツ宝石を食べたぞ!?」
「消化に良い」
「小さくなった宝石だって少しは価値があるはずだぞ! 取っちゃダメだぞ!」
「後でウンコを渡そう」
「ヤダよ!?」
「おいケット、トグロ、あいつ起き上がるにゃ」
金ピカヨロイはヨロヨロとぎこちない動きながらも立ち上がる。 蹴りを受けたその胸は明らかに凹んでいて、ダチョウのキックはこれまで最高のダメージになったようだ。
「あの衝撃から立ち上がるなんて、とんだタフネスにゃ」
「ならばケマリの全力をお見せしよう」
「さっきので本気じゃ無かったのか!?」
「ケマリはただの鳥では無い、『フルマジカル』」
トグロが魔法の言葉をつぶやくと、ダチョウが光りだした!? なんだ!?
そして光が収まった時、ダチョウの姿が変わっていた!?
そこにあった姿は、魔法少女たちが肩ぐるまする姿だった。
「そ、そいつ、魔法少女だったのか!?」
⋯⋯
⋯⋯⋯⋯
「え? トグロ、お前⋯⋯降りないの?」
「このフォーメーションこそ最強」
答えながらトグロはサイズの合わなくなった手綱をまきとり回収。
そしてトグロは肩ぐるまの下に居る魔法少女の、顔を掴んだ!?
口に指を突っ込み、耳たぶを握り込んでいる!?
「お、おい!? 何してるんだよ!?!?」
「うぃ〜ハハハ〜」
しかし顔を掴まれている魔法少女は全く動じていない!?
お前口の中に左右の指4本入ってるんだぞ!?
トグロは掴んだ顔を前に引っ張ると、当然魔法少女の顔がその方向に引っ張られる。
「んお? おーう!!」
魔法少女は前へと走り出すが、その速度はまるで弾丸が発射されるような速さで、気付いたらもうアクトゥーの腹を蹴り抜いていた!!
ドッギャン!!!!!!
先に蹴った胸の凹みから外れて当たったが、無傷だった腹はヨロイに穴が空いていた!!
「フガーハハハハハハッ!!」
高笑いをあげてそのまま走り抜けるダチョウの魔法少女は止まらず、折り返さず、交差点で曲がって見えなくなった。
「フガーフガハハハ!!」
高笑いはとぎれずだんだんと近付いて来た。区画をグルっと回って戻って来たらしい。
「ケマリは急に止まれない」
「クルマかよッ!?」
「そしてどこを蹴るかは無限の可能性」
「深い海の様な美しいサファイアはきっとお客様の新しい魅力を引き出してくれます」
アクトゥーの腹に巻かれた青い宝石を蹴り砕かれた事により、オジさんの正気が失われつつあるようだ。
オジさんの心を守るには、正確なコントロールであのアクトゥーを倒すしかない!
「スマッシュハンドレットハウンド! ヤツの腹を狙って倒せるか?」
「やるにゃ。 それに、コレだけいたぶったエモノを横取りされて終わるのは、ちょっと癪だにゃん」
両手をだらりとぶら下げた姿勢でアクトゥーに迫ると、ヤツはむちゃくちゃに巨大アクセサリーを振り回す!
「もう飽きる程に慣れたにゃ」
軽々とかわして懐に潜り込んだスマッシュハンドレットハウンドは、そのすぼめた左手をヨロイの空いた腹に突き込んだ!
「『ネルカット』にゃ」
ギャギャギャギャギャン!!
ヨロイの中で金属がぶつかり合う音が鳴り響く。
「う゛に゛ゃぁぁ〜〜やっぱキモいのにゃ〜」
長い爪を切り離した左手をぶらぶら振りながらアクトゥーから離れるスマッシュ⋯やはりスラッシュハンドレットハウンドか? いや⋯
「よくやったぞ! スラッシュスマッシュハンドレットハウンド!!」
「足しゃぁ良いってもんじゃ無いにゃぁ⋯」
アクトゥーは膝から崩れ落ち、そして光になって消えた。
その場には元の大きさに戻ったアクセサリーが残り、ソレにオジさんが飛びついていた。
そこに肩ぐるまのダチョウ、ケマリって名前だったよな? ソイツが近付き、オジさんの目の前でヤンキー座り。
「ンガハハハハ?」
「被害者よ、救済である」
トグロがオジさんに何かの紙を渡した。
「損害請求はコチラ、魔法少女組合までされたし」
え? 損害請求? 魔法少女組合?
「お、おい、そんなのあるのかよ!?」
「? 集会で説明済み」
「あ、あれ? えっと⋯? そう、だっけ?」
「そういえば言ってたにゃ〜」
「そ、そうか。 それじゃあ弁償しなきゃ、ってビビって損しちまったぜ!」
「損害請求できるんだね? 素晴らしい宝石が失われた事は残念だけれども、補填してくれるならありがたい⋯⋯なになに? 撃破した魔法少女の報酬からも補填される?」
「⋯⋯ん?」
「トドメを差した報酬は損害補填に没収」
「え? それってつまり⋯」
「撃破報酬の数万円は消える」
「それってタダ働きってことにゃ?」
「魔法少女界の闇」
「そ、そんな!? 宝石2個も壊したのはお前ら2人だろう!?」
「あ、ぶっちぎりで一番高いアクセサリーは一番最初に振り回されたヤツだよ」
「そ、そうですか」
避け回っているうちに壊れたヤツだ!?
「ンガハ! 腹減った! ガーハハハァ!!」
「トグロちゃんとケマリはこれより帰還する」
「オレたちも公園に戻るかぁ」
「疲れたにゃ、ケット、おんぶ〜」
「うわぁ!? 急にくっつくなって! せめてネコモードになれよ!!」
「なるほどね、そんな事があったのね」
「も〜ッ! もご〜ッ!」
公園に戻ったオレたちをむかえたシノン姉ちゃんは、抵抗するキミコの頬袋からヒマワリのタネを袋に戻していた。
「疲れている所を悪いんだけれども、ちょっと模擬戦をするわよ、実戦を経験した力を見せてみなさい!」
そして再びカンチョー噴水の前で向かい合うシノン姉ちゃんとスマッシュスラッシュハンドレットハウンドの2人。
こうして改めて向かい合うと、さっきまで公園にいたオレと今のオレがハッキリ違うと分かる。
オレがバトルでできる事は、下がって観察する事で広い視野を持って、敵と向かい合うスマッシュスラッシュハンドレットハウンドが気づきにくい事を見て、教える事だったんだ。
後ろに回れ、硬い敵には切らないで殴ってみろ、宝石を殴ったら大変だ。
宝石に関してはオレの確認不足だったけれども、シノン姉ちゃんがオレに教えようとしていた戦い方は、きっとそういう事だろう!
さっきの冒険で学んだ事を、シノン姉ちゃんにぶつけてみるぜ!!
「ようし! スマッシュスラッシュハンドレットハウンド!! アルティメットインテリアメタルラックブレイクスルーフリーダムスペースエタニティだーーーーッ!!!!」
「なにそれッ!?」
「おニャンも知らんにゃ」




