第8話『はじめてのバトル!? いけ!ストライクハウンド!! 必殺のサンダーボルトだ!!!!』
ダチョウちゃんの捕獲から1週間が経った。
魔法少女に変身されては⋯などの理由で動物園に受け入れ拒否されたので、鳥居家の人々と話し合った結果、ダチョウちゃんはひとまず、鳥居家と俺が共同で管理をする事で話がまとまった。
基本的には鳥居家の敷地で飼育するが、将来的に面倒を見切れなくなったら俺が引き取る。
その為に普段からダチョウちゃんのお世話ができる様に鳥居家敷地への自由な出入り、そして魔法少女活動の連れ出しが許可された。
それと、ダチョウちゃんをペット飼育に移行するにあたって、名前を付ける事になった。
鳥居家のお母さんの命名で『蹴鞠』ケマリちゃんと名付けられた。
そんなケマリちゃんとトグロちゃんをを連れて、俺は今パトロールをしている。
ケマリちゃんはヘビのトグロちゃんを捕食対象にしなかったので、二匹の仲は悪くない。
ここ数日のパトロールでアクトゥーに遭遇する事は無かったが、その分二匹のコンビネーションを培う時間は豊富にとれた。
俺がダチョウモードケマリちゃんの引き手を持ち歩き、魔法少女モードのトグロちゃんがケマリちゃんに騎乗している。
彼女らが数日をかけて完成させたこの究極のフォーメーションを駝鳥騎士と呼ぼう。
そうして俺たちは、ケマリちゃんに公園の植え込みから伸びる新芽をついばませながらのんびりとパトロールをしていたんだが、二匹は何かに気付いた様に同時に顔を上げる。
「アクトゥー感知、距離200」
トグロちゃんは静かに告げると手綱を引き、ケマリちゃんの向きを調整する。
あの方向で200メートル先だと、住宅地に遮られてここからじゃ何も見えない。
「行けるかい?」
「今日のケマリは血に飢えている」
最近新芽ばっかり食べていたから、そろそろ動物性タンパク質が欲しくなってきたかな?
「危なくなったら撤退するんだよ」
「おうちに帰るまでが戦争」
日ごろの教えはしっかりと覚えている様だ。
「よし、ゴーだ!!」
ケマリちゃんの引き手を離し、二匹を送り出す。
道路に出たトグロちゃんは左車線を制限速度いっぱいで疾走、交差点では減速、そして手旗を振って進行方向を示し、右折。
うん、道路交通法を遵守し、ケマリちゃんを完璧に乗りこなしている。コレならお巡りさんのお世話になる事も無いだろう。
〜その少し前〜
オレ、熱海傑斗はシノン姉ちゃんに連れられて、ストライクハウンドとの戦闘特訓をしにカンチョー公園へと来ていた!!
「おニャンはネコだにゃん、ハウンドとかいう犬じゃ無いにゃん」
ストライクハウンドが不満そうに言ったけれども⋯なんだって!? ハウンドって犬の事なのか!?
⋯それなら、
「じゃあ、ストライクハンターだ!! コレで決まりだぜ!!」
「そんな事よりもシノン、今日は何するにゃん?」
ストライクハンターの反応が薄い、他にもっと良い名前があるのかな?
「そうね、まずは今の2人の力を見たいから、私と戦ってもらうわよ」
!? シノン姉ちゃんとバトルするのか!!
「もっ、もっ、もっ、ワタシがやらなくても良いの?お姉ちゃん?」
「手加減して戦うなら私の方が安全よ、それにキミコには後で働いてもらうわ」
シノン姉ちゃんの後にはハムスターの魔法少女キミコもいたが、戦うのはシノン姉ちゃんだけみたいだ。
さっきからずっとヒマワリのタネを食べている。
「さあ! かかって来なさい!!」
カンチョー噴水を横に、シノン姉ちゃんとストライクハンターが⋯⋯ネコだけどあえてハウンドって名前だったら逆にカッコよくないかな? やっぱりハウンドってアリかもな⋯⋯
そうなると、ハウンドハンター? いやハンターハウンド? それともハンド⋯
「おいケット、ボーッとしてないでケンカに集中するにゃん」
「ケンカじゃ無いけれど、そうよ傑斗くん、おニャンちゃんに集中して!」
いっけね!? 2人に怒られちまったぜ!
そうだな、ちゃんとバトルに集中しないとな!
「わかったぜ、ハンドレットハウンド! よっしゃあ! バトル開始だぁッ!!」
「⋯⋯100匹ワンちゃん?」
「⋯⋯もう今日は犬の群れで良いにゃん」
「おニャンちゃん⋯⋯」
ようし、バトル開始だぜ!
開始したバトルで、シノン姉ちゃんとハンドレットハウンドが向かい合っている!
うおおおッバトルだぜえ!!
⋯⋯ッ!!
⋯⋯
⋯⋯⋯⋯バトルって、何をどうすれば良いんだ?
「えっと⋯⋯ヨシッ!! うおおおおおおッ!!!!」
こうなったらオトコは度胸!!
オレの必殺パンチをぶつけるだけだ!!!!
シノン姉ちゃんめがけて走り出す!
「グエっ!?」
ハンドレットハウンドを追い越したところで、後ろからシャツの首をつかまれた!?
「ゲホゲホ、な、なにをするんだよ!?」
「ケット、役割を忘れたかにゃん? ケットがやる事はおニャンに指示を出す事にゃ」
「そ、そうだった! いっけねえ、忘れちまっていたぜ!」
「そうよ、普通の人間がアクトゥーや魔法少女と戦うなんて危ないわよ、みんな虎やグリズリーみたいなモンなんだからね」
トラにグリズリーか⋯⋯どっちもカッコいいな!
「仕切り直すわよ、傑斗くんはおニャンちゃんの後ろから戦闘の指示をするのよ!」
「わかったぜ!」
ハンドレットハウンド⋯タイガー⋯グリズリー⋯⋯
イヤイヤ、カッコいい名前よりも、今はバトルに集中しないとな!
後ろに回り込んでからオレはハンドレットハウンドの戦いを考える。
コナは◯ケモンみたいに戦わせるって言っていたな⋯⋯よし、それなら!
「いけ! ハンドレットハウンド! サンダーボルトだ!!!!」
「雷魔法? いいわよ、受け止めてあげる⋯!」
「いっけーーーーッ!!!!」
「⋯⋯⋯にゃ? そんなの出んにゃ」
「技ポイント切れか!? それなら、フレイムレーザーだ!!!!」
「そんな技知らんにゃ」
「くそおッ!? コレもダメなのか!!」
「おニャンちゃん、傑斗くんにアナタの使える魔法は説明したの?」
「⋯⋯そういえば聞かれていなかったにゃあ」
「はぁ、それなら中止! いったん休憩で授業よ、2人ともソコの噴水の所に座りなさい」
「ええッ!? バトルは? オレのハンドレットハウンドは何のダメージも受けていないぜ!」
「あんたダメージの与え方も分かんないんでしょうが! おとなしく言う事聞きけガキンチョが!!」
ぐぬぬ、仕方ない、勝負は一時おあずけだ!
オレはシノン姉ちゃんの言うとおりにカンチョー噴水に座る。
するとハンドレットハウンドがオレの膝は上に座ってきた!?
「お、おい!? ハンドレットハウンド! なんでココに座るんだよ!?」
「ケットの上の方があったかくてやわらかいにゃ。 ソコの石は硬いし日陰だから冷たいのにゃ、そんぐらい分かれにゃん」
ハンドレットハウンドは、そう言いながらオレに寄りかかって来た。
「バ、バカ!? だからってオンナがオトコと、こんなにくっついたりすんなって!?」
「にゃ?オンナ?」
「ムホホ〜、微笑ましいですな」
シノン姉ちゃんがオレたちを見てニヤニヤしてやがる!?
「シノン姉ちゃん! コレ良くないよな? 姉ちゃんからも言ってやってくれよ!」
「え〜? 別に何もモンダイ無いんじゃあないかな〜♪ お姉さんは応援しちゃうぞ〜♡」
「く、クッソ〜。 もう分かったよ! ハンドレットハウンドの好きにしろよ!!」
「もうしてるにゃん」
「さ、授業もしっかりするわよ。 おニャンちゃん、魔法少女はみんな覚醒した時に自分の魔法が分かるはずだわ。 あなた自分の使える魔法はわかる?」
「にゃ〜、体が強くなるのと〜」
そう言ってハンドレットハウンドが両手を前に出すと、パアっと光って、光が消えた時に、そこには手首から先が大きなネコモードの手になっていた。
「この、『デスねこハンド』がおニャンの魔法にゃ」
なんて、デカい肉球だ⋯⋯グーパーしている姿を見ると、思わず触りたくなってきたぜ。
「つよつよなパンチと、」
ジャキン! と音をたてて、今の大きな手からしてもさらにデカいツメが生えてきた!?
「ツメを、操れるのにゃ」
そしてツメがさらに変形して後ろにも伸びた!? スゲえ!! ギザギザでカッコいい!!!!
「強化魔法と武装魔法か、おニャンちゃんの戦い方は格闘戦をベースにして、ココぞ! ってタイミングで必殺技を叩き込むのがセオリーになるわね。 それと、ネコだからきっとスピードタイプでもあるはずだわ」
「ハンドレットハウンド、いや、スラッシュハンドレットハウンドは格闘タイプの◯ケモンだったんだな!!」
「またおニャンちゃんの名前が⋯」
「伸びるのはツメだけで良いにゃん⋯」
「まあ、いいわ。 他にも魔法少女やアクトゥーが使う魔法には、放射魔法って言う、さっきケットくんが指示した様な魔法を飛ばすワザがあるけれども、おニャンちゃんは使えそう?」
「そういうのは、ツメでにゃら⋯⋯『ネルカット!』にゃ!」
スラッシュハンドレットハウンドが上に向かって右手をふると、5本の爪が手から離れ光の刃となって飛んで行った!!
途中にあった木の枝はスッパリと切れていて、スゴい切れ味だった事がわかる!! スゲえカッコいいぜ!!!!
「す、スゲーぞ! スラッシュハ「ギィニャアアアアアアアア!?!?!?」
うわぁッ!? オレの膝の上でスラッシュハンドレットハウンドが右手を押さえて叫び暴れてる!?
「おニャンちゃん!? 大丈夫!?」
「ど、どうしたんだよ!? スラッ「いま!! 今爪切りされた感触の!! アレのもっと強くてヤな感じのが! 一気に来たにゃんッ!?」
⋯⋯うん? 爪切り?
「い、痛かったのか!?」
「⋯⋯⋯⋯んにゃあ⋯⋯まぁ、別に、痛くはないにゃん。 ⋯⋯でも最高に嫌な感覚にゃん」
たしかに、コイツはいつも爪切りがキライだったけれども、今のワザでそんな感覚になるのか?
「でも、痛くないなら良かったわ」
「なんも良くないにゃん。 ⋯⋯おニャンはもう、二度とこのワザを使わんにゃ」
「ええッ!? なんでだよ!スゲえカッコいいじゃんか!?」
「冗談じゃ無いにゃ、あのワザを使うくらいなら魔法少女なんて辞めてやるにゃん」
「そ、ソコまでイヤなのね」
「じゃあさ、残った左手の爪はどうするんだ?」
「んにゃあ? ⋯⋯短くする魔法は無いにゃん。 ⋯⋯コレはこのままにするにゃ」
「ネコにもどったら短くなるのか?」
「キミコ? どう? 分かるかしら?」
振り向くと、そこには顔が何倍にもデカくなったキミコがいて、その足下にはたくさんのヒマワリのタネ袋が落ちていた。
「もっ、もっ、もごぁあいおおおうぉ」
「よし、キミコストップ、あんたの頬袋はもう限界よ。 ごめんね、キミコしばらくは答えられなさそうだから、実際にネコモードに変身して確かめましょう」
「そうだな、スラッシュハンドレットハウンド、変身するんだ!」
「名前も変身もめんどくさいにゃあ⋯」
そしてオレの膝の上でしぶしぶネコモードへと変身する。
光が収まった時、左手だけ爪の伸びたネコが気まずそうにオレを見上げていた。
「にゃあ〜ん」
普段あまり聞かない、甘える様な声。
それにはオレも思わず笑顔で答える。
「今夜は爪切りだなッ!!」
「ふみ゛ゃーーーんッ!?!?」
なんと、スラッシュハンドレットハウンドが飛び上がって逃げ出してしまった!?
「あ、コラ! どこへ行くんだよ!?」
カンチョー公園から飛び出して行くスラッシュハンドレットハウンド!
「ごめんシノン姉ちゃん! オレ追いかけて連れもどしてくるよ!!」
連れもどして特訓だ!!




