第5話『サラバ魔法少女! 受け継がれる意志と新たなる仲間!!』
「ズズズーッ」
今日のお昼ごはんは、昨日ベランダで会ったばかりの新しく引っ越してきたお隣さんが、その夜にくれた引っ越し蕎麦。
乾麺を湯がいて、冷水でシメて、ざる蕎麦で頂いております。
更に今日は、少し手間をかけて天ぷらも揚げました。
普段家で食べる事が無かったけれども、こうやって食べてみると蕎麦って美味しいものだなぁ。
わさび多めの麺つゆに蕎麦をチョイとつけて、
「ズズズーッ」
蕎麦、麺つゆ、そしてわさびの香りと、つるやかな喉越しを味わう。
そして足元に目を向けると、俺にひれ伏し崇め奉る無表情のトグロちゃん。
「ニョロニョロ、ズールズル」 パタン。
膝立ちで両手を高く掲げてから、五体投地。
更に蕎麦をひとすすり。
「ズズズーッ」
「ニョロニョロ、ズールズル」 パタン。
膝立ちになってから五体投地。
トグロちゃんが俺の昼食一口目から始めたこの奇行。実は今日が初めてでは無い。
麺類を食べるときはいつもこうだ。
以前その真意を尋ねたところ、返ってきた答えは神事だからだそう。
詳しく聞くと、麺を無数のヘビに見立て、神である俺がソレを食べる事で生贄の儀式になるらしい。
粛々と儀式を執り行うトグロちゃんの無表情な目の中に、僅かに何かが見て取れたのは、はたして俺の気の所為だろうか?
それとも俺とトグロちゃんとの間に、何か、神と信徒としての絆でも芽生えつつあるのだろうか?
「シャクシャク」
「⋯⋯」
かき揚げには特に反応しない。
「シャクシャク」
「ニョ⋯」
海老には少し反応した。
ちなみに、これまでで一番反応が良かったのは太い讃岐うどん。
とてもシンパシーを感じたらしい。
讃岐うどんもトグロちゃんも、どちらも白くてモッチリしているからね。
「ズズズーっ」
「⋯⋯」
食べる演技には引っかからない。
落語家さんに認めてもらえた程度には所作に自身があるんだけれども、魔法少女トグロちゃんの目はごまかせない様だ。
「ズッ、ズッ、ズッ、ズッ、ズッ、ズーッ」
小刻みに長くすすってみる。
「ニョ〜ロ〜ニョ〜ロ〜、ズ〜ル〜ズ〜ル〜」
俺の長いひとすすりに合わせて、ゆっくりとバンザイ五体投地。
「ズボッ!!」
「ニョロズルッ」ビタンッ!
いっきに食べると、それに合わせた高速五体投地。
「お前ら仲いいのな」
机の端に寝転がり、俺とトグロちゃんの儀式を見ていたコナが言う。
俺に用があったらしいが、お昼ごはんが終わるまで待つと言うので、お茶だけ出していた。
「ね〜神〜、アタシにも一本ちょうだいよ」
「一本? 良いよ」
蕎麦を一本取り、麺つゆに浸けて端をコナに渡す。
「お〜い! トグロちゃん、こっち向いて〜!」
蕎麦を掴んだコナがトグロちゃんにアピールをする。
これは、蕎麦を食べたいというよりも、トグロちゃんの反応をみてみたいのかな?
コナにも五体投地するのか? ってね。
「ちゅごーーーーーーッ!! げぷっ⋯⋯ アルデンテェッ!!!!」
アルデンテとはパスタの茹で加減の事で、中心にほんの僅かだけ芯が残る状態、イタリア語で『歯に当たる』という意味。ソースとの相性も含めて最も美味しいとされる食感だ。
でもこの蕎麦は芯までしっかり加熱してあり、特に硬さを残していない。おそらく適当に叫んだだけだろう。
「さあトグロちゃん、アタシにも五体投地を⋯」
豪快に蕎麦一本を丸呑みしたコナ、体の大きさを考えたら一息に食べるには相当の量だっただろうに。ちょっとお腹が出てる。
はたしてトグロちゃんの反応は⋯
ガシッ!
「んおッぷ!?」
コナを片手で鷲掴み⋯⋯
「まぐ」
頭から丸呑みにかかった!!
「〜〜ッ!?!? 〜〜〜〜〜!?!?!」
トグロちゃんの口の端に両手足を掛けたり掴んだりして抵抗するコナ。
いつもと違い魔法で抵抗しないのは、一気食いとお腹を掴まれた苦しさのせいだろうか?
「トグロちゃん、めっ! だよ」
トグロちゃんに軽くチョップをして制し、その隙にコナを摘み上げて救出。
「ハァ、ハァ⋯⋯クソッ、オレへの信仰に目覚めればと思ったのによぉ⋯⋯麺が足りなかったか?」
「改宗は無理だったね。もう一本食べる?」
「⋯⋯疲れたからもう一本ちょうだい。あとその海老の尻尾も」
この後コナにもう一本蕎麦をあげて、お腹の空いてきたトグロちゃんにもマウスをあげて、塚井家のお昼ごはんが終わる。
「それでコナ? 何の用事で来たんだい?」
食後、蕎麦湯で一服しながらコナが尋ねて来た用件を聞いてみる。
「ズズー、ちょっと神に手伝って欲しい事が出来てさ〜、ズズー」
ペットボトルの蓋を湯飲み代わりに、蕎麦湯をすすりながらコナが答える。
「新しい魔法少女候補のペットを見つけてさ〜」
「へえ?それは目出度い」
「んで〜、飼い主を説得しようとしたんどけどね〜、その爺さんちょっとボケ入っててさぁ。しかもその自覚があるからか、アタシの事を幻覚だと思っちゃっててハナシが進まんのよ⋯ズズー」
「なるほど、つまり、その飼い主さんの説得に俺を使いたいワケだ」
「そゆこと。 魔守沢、ひいては県の安全と平和の為にも頼むぜ神よ〜」
「良いよ、すぐに行くのかい?」
「ズズー。コレ飲んだらね〜」
確かに、蕎麦湯を飲むまでが蕎麦だよね。ズズー。
そして、食後の一服を終えてから俺達はその魔法少女候補の飼い主さんの元へと向かっていた。
食後で動きたがらないトグロちゃんは、ヘビモードになってもらって俺の上半身に巻きつけている。
「それで、新しい魔法少女候補はどんなペットなの?」
「魚だよ」
「魚かぁ⋯⋯陸戦、ていうか、陸上生活ってできるの?」
「アタシも魚類の例は初めてだから分かんないや。ダメなら水中戦専門でもいいかな、って思ってるのよ」
「その魚って、淡水魚?海水魚?」
「メダカだから淡水魚だよ。だから海無し県のここでも戦える場所がきっとあるハズ!そろそろその子のお家だよ、玄関の横の鉢で飼われてるの」
そうしてコナが指差した先の家は、どこにでも有りそうな、と言えば少し失礼かもしれないが、この辺りでは一般的な一軒家。
道路に面する狭い敷地で、低いブロック塀と簡易な格子でできた門から、2〜3歩で辿り着く程度の短い玄関ドアまでの距離に、大きな鉢が置かれていた。
鉢の口半分を覆う木の蓋の上にはエアーを送る機械やメダカを世話する道具が置かれていた。
そして、その上に座る一匹の黒ネコ。
ピシャン!
黒ネコは前足を振り鉢の中を叩き、メダカを一匹張り飛ばした!!
宙を舞うメダカは門に叩き付けられ、そして更に地面へと落下。
「あ、あ、あぁあぁあぁあああッ!?!?!?」
叫んだコナがメダカへと飛び、抱き抱える。
「め、メダカ⋯⋯し、死んで、いる」
「まさか、そのメダカって⋯⋯」
コナが引きつった顔で俺に振り返る。
「こ、この子が、魔法少女候補⋯⋯体の左右で色と模様が違うから、間違い無いのよ」
なんてこった⋯⋯これは左右モザイクの個体、値段をつけたなら相当な高値がつく事もある希少な存在でもあるのに。
しかしこのほぼ路面した飼育環境、セキュリティ意識の希薄さ。いつこうなってもおかしくない状態で放置していたのは飼い主さんの失態とも言える。
同じペットを飼う身として、この状況は反面教師としてしっかりと心に刻んでおこう。
「う、ううっ⋯⋯せっかくの魔法少女候補が⋯⋯戦力の増強がぁ⋯⋯」
「その子は残念だけれど、せめて飼い主さんに見つけてもらいやすいように、鉢の近くに置いてあげようか」
そうして鉢を見ると、さっきの黒ネコがまだ居て、コナを見ている。新しいオモチャ候補に興味しんしんになったのかな?
先端がほんの少しだけ分かれた尻尾の動きを見る限り、コナへ飛びかかる用意をしているが、俺に巻きつけているトグロちゃんの事を警戒もしている様だ。
「コナ、コナ。 ネコが君を狙っているよ」
「あん? ネコ畜生がオレを? いい度胸じゃねえか⋯⋯このウサはらさでおくべきかぁ⋯⋯って、あれ?」
「あんまりイジメちゃだめだよ⋯⋯どうしたの?」
コナがネコを見て固まっている。
「こ、こ、こ、コイツは⋯⋯!?」
「この子がどうかしたの?」
「コイツ、魔法少女の才能が、あるぞ!!」
「ええッ!? なんてこった!」
魔法少女を殺したヤツが魔法少女だったなんて!
なんてドラマティックな!
「ヨッシャあ! メダカの代わりに、コイツを魔法少女にしてくれるわ!!」
一瞬で元気を取り戻したコナ、なんとも薄情で現金な妖精だなぁ。
改めて黒ネコを観察する。
全身ツヤツヤの真っ黒毛。首輪もしているから飼い猫なのは確定だろう。しかし今どき外にネコを放つ家庭は珍しい。もしや、家から脱走した子かもしれない。首輪に何か書いてあればいいけれども。
さてしかし、どうやって捕まえようか?
ネコの小さな体で、背後の家どうしのスキマにでも入られたら俺が追跡するのは困難だ。
コナの魔法のスピードだと、警戒している動物には躱される可能性がある。トグロちゃんが覚醒魔法をくらったのもマウスに夢中だったからだ。
⋯⋯コナをエサにしてその隙に捕まえるか?
ペロペロ
ん?
頬に舌の感触。
「トグロちゃん、やってくれるのかい?」
頬を◯の字に舐められる感触。オッケーらしい。
「コナ、俺とトグロちゃんで捕まえるよ」
「うん? 自信ありげじゃない。それじゃあ、お願いしちゃおうかな」
「よし、それじゃあ⋯⋯いけッ!トグロキャノン!!」
ネコの背後に向けて俺の腕を振りかぶる。そしてトグロちゃんがタイミングを合わせて俺から飛び、ネコがギョッとして背後を振り返ると発光。魔法少女モードに変身したトグロちゃんが全身を軟体化、両手足を伸ばして家どうしのすき間に張り巡らし、ネコの背後への退路を塞ぐ。
「とおせんぼ」
ネコが混乱から回復する前に俺は接近し、ネコを抱き上げる。
「ふにゃ!?」
仕上げはここから。
「よ〜しよしよしよしよしよしよしよしよしゴロニャンゴロニャンゴロニャンゴロニャンニャン」
ナデナデナデモミスリスリトントントントントントントンモミモミナデナデナデナデトントンモミモミ
ネコが抵抗するよりも先に、撫でくり回して快楽を体に叩き込む。
ふふふ、気持ち良かろう?抗えまい?
爬虫類には効かぬが、哺乳類などほら、この通り。我がテクニックに溺れて沈め。
「ほにゃ〜〜ん」
くくっ、完全に脱力して、液体の様に蕩けたじゃないか。
しかし⋯⋯さっき撫で回したときに、違和感というか、全く想定してないモノに気付いた。
ネコを持ち替え、正面にして向かい合う。
「なおぉ〜〜ん」
⋯⋯うん。
⋯⋯⋯⋯あるね。
「やるじゃない神! 爬虫類だけじゃなくてネコの神を名乗っても良いわよ!」
「ははっ、それは光栄だね。ところでコナ、このネコなんだけれども」
「ああああッ!! 見つけた〜〜ッ!!!!」
道路の方から叫び声が聞こえた。少年の声だ。
振り向くと、トグロちゃんやキミコちゃんぐらいの年頃の男の子がコチラへと走ってくる。
「ハァ、ハァ、すみません!それ、ウチのネコなんです。渡してくれませんか?」
「おや?そうなのかい?⋯⋯うん、よし、君を疑うワケじゃあないけれども、何か、写真とか、証拠になる物はあるかい?」
「は、はい! 俺は熱海 傑斗! そのネコの首輪に名前と住所と電話番号が書いてます!」
そして住所、電話番号を伝えてくれた。
ほほう、どれどれ⋯⋯首輪を見ると、確かに熱海さん、このネコは彼の家族の様だ。俺は少年、傑斗くんにネコを渡す。
「はい、どうぞ、確かにこのネコは君の家族の様だね」
「ありがとうございます! 探したぞ! 『ダークライトニング』!!」
⋯⋯あれ? 首輪に書いてある名前と違うぞ?
「ねぇ、傑斗くん? 首輪には、その子の名前、『おニャン』って書いてあったんだけれども⋯」
「あ、はい! コイツが逃げ出したのはきっと、親の付けた名前がカッコ悪くて気に入らなかったからだと思うんです! だから、俺、カッコいい名前を考えたんです!!」
「⋯⋯へえ、そうなんだ〜」
「あ、でも⋯⋯やっぱり、『ザ・ブラックライトニング』の方が良いかな!」
「ハハハ、そうか〜」
ネコが⋯⋯彼の胸に抱かれたネコ、おニャンがなぜか、嫌そうな顔をしている。
「ケット⋯⋯傑斗くん」
⋯⋯⋯⋯なんか、コナが雰囲気を出しながら頭上から現れた。魔法を使ってキラキラのエフェクト付きだ。
わざわざ傑斗くんに見えない様に回り込んだな。
胸の前で両手を祈る様に組み合わせている。別人みたいにおしとやかな態度だ。
「傑斗くん、アタシが見えますか?」
「ええッ!? ま、まさか、妖精!?」
「アタシ、妖精のコナ。アタシが見えるってことは、アナタは選ばれた者なのね!」
「お、俺が選ばれた者だって!?」
コナは魔法で隠れなければ誰にでも見える。特別な選別は必要なく、健康的な視力があればいい。
「傑斗くん、お願いします! アナタたちの力を貸して欲しいの。一緒に、正義の為に戦って欲しいの!」
どうやらコナは傑斗くんとの出会いを運命的なものとして演出し、おニャンを魔法少女にするという作戦をとる様だ。
セコいなぁ。まあ止めないけれどもね。
おっ?ヘビモードになったトグロちゃんが戻ってきて俺の上半身に巻き付いてくる。
爬虫類って不思議だよね。触られるのは嫌いだけれども、慣れると自分から人間に乗っては来るんだもんね。
「う、うおおっ!?ヘビ!?ヘビを巻きつけてる!?悪の幹部っぽい!!カッケーッ!!!!」
ふふふ、カッケーでしょ? 君、見る目あるよ。
⋯⋯ここはコナの演技にのってあげようかな?
「へえ?コナ、この子たちも『こっち側』に連れて来るのかい?」
俺を見てニヤリと笑うコナ、お主も悪よのう⋯
「宝馬、今は少しでも戦える力が要るの」
「でもさ、足手まといは要らないんじゃあない?」
「あ、足手まといだとぉ!?」
「コナを見えるだけじゃあねぇ⋯⋯少なくても、本人のやる気は欲しい所だね」
「な、なんだとう」
「傑斗くん、宝馬はアタシと契約して一緒に戦ってくれている、アナタたちの先輩よ。その白ヘビトグロちゃんはアナタのおニャンちゃんと同じく魔法の力を持つ子なの」
「おニャ⋯インペリアルダークと同じ、魔法の力だって!?」
ま〜た改名しているねぇ?
「アタシと契約しておニャンちゃんの力を解放すれば、魔法の力で世間の平和を守れるわよ!」
「俺たちが、世界の平和を、守るのか⋯!」
世間だよ、少年。 まぁ、世界なんて世間の延長線の上のモノだし、そう考えればあながち間違いでもないから訂正はしないけどね。
「ヨッシャ! わかったぜ! 俺たちも契約して正義の為に戦うぜ!!」
何と戦うかぐらいは確認した方がいいとは思うけどね。
「ようし!契約成立だぜ!それじゃあ、行くぜ!! オネ! イサンドウーッ! イッパァーッ! イカッセゲルヨーッ!!!!」
契約が成立し、さっきまでのおしとやかな演技を捨てたコナの覚醒魔法が傑斗くんに抱かれたおニャンちゃんに向けて放たれる。
魔法を受けたおニャンちゃんが光を放つ。
光が収まった時、傑斗くんの腕の中には、トグロちゃんの様なフリフリの服を着た黒髪ネコ耳の魔法少女が立っていた。
「シャア!! 4匹目確保おぉ!!!! メダカ!お前の無念は忘れないぜ!」
「う、うわあッ!? お前?まさか、インペリアルダークネスなのか?」
今度はダークにネスだけ足してる。
抱えていたネコが、いつの間にか同じ背丈の少女に変身した事に驚いて離れる傑斗くん。
解放されたおニャンが彼を振り向いて眺める。
「んん〜? ケット、なんか小さくなったニャ? やっぱり狩りができなくてお腹空いたかニャ?」
小首を傾げるおニャンちゃん。問題なく変身できたらしい。
傑斗くんはコナに向かって両手を広げる。
「コナ、今度は俺の番だよな! さあ! やってくれよ!!」
「え? コレで終わりだよ?」
「⋯⋯へ?」
「アタシが変身させられるのは女の子だけだよ。傑斗くんは、魔法少女になったおニャンちゃんを◯ケモンみたいに戦わせる役割だから、よろしくね〜」
「そ、そんな、バカなあ〜〜〜〜!?!?」
「ケット、おニャンが狩りを教えてあげるから、いっぱい食べて大きくなるニャ。 とりあえずこのサカナを食うニャ」
さっきのメダカのご遺体を食べさせようとするおニャンちゃんと、もみくちゃになって抵抗する傑斗くん。新たなペット魔法少女のペアが誕生した、のだが⋯⋯
「ねえねえ、コナさんや。 実は、変身前のおニャンちゃんを見た時に気付いたんだけどさ⋯⋯」
「なぁに、神?」
「おニャンちゃん⋯⋯タ◯◯マが付いてたんだけれど」
「⋯⋯⋯⋯え゛?」
固まるコナ。
「魔法少女って⋯男の子は成れないんだよね?」
「アレは、魔法の国の女王様とシンクロさせて力を与える魔法だから、男の子だとできないハズなんだけれども⋯⋯」
「⋯⋯さっき見た◯マタ◯、ちょっとションボリしていたから、去勢されてると思うんだけれども、それで男の子認定から外れたのかな?」
「お、男の娘って、こと⋯!?!?」
ワイワイとはしゃぎ、絡み合う傑斗くんとおニャンちゃん。そのうち、おニャンちゃんに背後から抱きしめられる格好になり、肩越しに頬どうしが触れ合い、顔を赤く染める傑斗くん。
彼は、おニャンちゃんの正体(?)を知っているのだろうか?
あれぐらいの少年だ、ご家族はペットの去勢の話をしていないか、手術当時に話を聞いていても理解していなかった可能性がある。
そうなれば彼は今、おニャンちゃんの事を生粋の女の子と誤解しているのかも知れない。
モジモジしている傑斗くん。
「彼の中のナニカが歪んだり、育ったりする前に教えた方が良いのだろうか?」
「何か⋯⋯あの二人が尊いモノに見えてきたわ」
ジュルリ。
ヨダレを飲み込むコナ。そんな目で未成年を見るんじゃありません。
だがしかし、今は多様性の時代。男は女と結ばれるべき、なんて俺の古い価値観をただ押し付けるのも悪い気がする。
「⋯⋯⋯⋯よし、ここは一つ、様子をみようか!」
頑張れ若者よ! 君たちの未来は君たち自身で作り上げるのだ!! 俺に責任は取れません!!
お幸せに!!!!




